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左馬刻の放ったダーツの矢が敵の急所を貫く如く的の中心へと吸い込まれ刺さる。ほぼ狂いなく中央の丸に収まってる矢の成績を見て溜息をついてまた懲りもせず投げようとしてる此奴に「ストップ」と言う。聞く耳を持たずに投げる指先。その姿を同じくして見守ってた理鶯も止めに入るのか読んでいたレジャー雑誌から顔を上げると雑誌を閉じて未だに投げられず山のように積み上がってるダーツの矢の一つを手に取りクルクルと回している。このダーツの矢はどこから手に入れたんだ。元のダーツのセットにはこんなに付属でついてなかっただろ。
理鶯から矢を奪い取る左馬刻は狙いを定める時間を然程作らずにまた中心へと素早く投擲する。このギラギラした赤瞳と殺意の見える態度がこいつがどれだけレッドゾーンに入っているのかが分かった。
「俺の目を盗んで何か企てるなよ。これでも風紀委員長なんだぞ」
「あんな女捨ててやらぁ」
「そう熱くなるな左馬刻」
矢が中心に収まる。左馬刻に恋愛系の問題は御八度というやつだ。こいつはとにかく相手の女が殺され兼ねない。だが左馬刻の相手とこいつが二人でいる所を見た事はあったがそこまで執心してる風にも見えなかった。なら何故こんなにこいつはキレている?それは俺が知る由もない。
「こうなると手に負えないな」
的に刺さる矢の先。それが誰の急所を射止めているのかそれとも違う意味での「射止める」なのか。やはりこれ以上は俺が首を突っ込んでいい域では無いのだろう。
***
校舎を繋ぐ渡り廊下を通り過ぎようとして聞き慣れた二人の笑い声が聞こえてくる。その方へと躊躇わずに行けば校舎裏で人目につかない場所で密会してる俺の女とこの場にいてはいけない許し難い相手がいた。俺はその相手男に間を詰める様に近付くと胸倉を掴んで女をそいつから退かして壁に強く押し付ける。左右に色の違う瞳が細められ俺を真正面に映す。すると女は青ざめた顔で「何で!」と取り乱し始める。
「碧棺くん?!さっきまでB棟にいたのに!」
「おいクソダボ。テメェ何したか分かってんのか、ア゙?!」
女をスルーしてクソダボこと後輩の山田一郎を壁に押し付けたまま顔を近付け射殺す瞳を向ける。一郎も負けじと睨み据えてきて鋭い瞳を向けているがそこじゃない。今許せねぇとこは。中々答えない一郎に俺は更に強く壁に押し付けると一郎は顔を歪ませて微笑する。
「見たまんまだろ」
「やめて!」
「るせぇ!」
一応だが俺の女が掴みかかってくる。行為が一々ウザすぎてその手を掴まれる前に振り払うと女は尻餅をついて不様に地面に転がる。それを真剣に視界に入れる事無く目の前の裏切り野郎の胸倉を掴んで引き寄せる。更に近くなるオッドアイ。そして。
「え」
噛み付く様に一郎の唇を奪う。それを目の前で目撃してしまった女は俺達を見て硬直して絶句していた。そんなのははっきり言ってもうどうでもよくて目の前の俺様にキスされて少し驚いてる一郎を見て俺は笑む。
「俺様と堕ちる覚悟はあるか?」
これは誓いでもねぇ約束なんて可愛気のあるものじゃねぇ。唯呪いの様な運命だった。俺と此奴は堕ちるべくして堕ちる。対の片割れ同士。ここで此奴が拒めば全て終わるが俺には拒まないという確信があった。それを決定付ける様な此奴のつり上がった口元が何よりも堕転してる事を示していた。
「上等だ」
(24.08.02)
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