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中央区のパーティーは盛大に行われた。二日間かけて歌いに歌いまくるとは分かっていたけどいざ会場に来てみると自分達のクラブがちっぽけに感じる程大型施設内と人の多さに圧倒されていた。いるのはほぼ女で皆歌い慣れて踊り慣れてる人ばかりが招待されたらしく同志が集まった空間で歌うというのも悪くなかった。
トップバッターだった俺達の出番が落ち着き今は休憩時間でカウンター席の隣の空いてるスペースの壁に寄り掛かって上階のDJフロアを見上げる。東雲。俺達BBの曲を作ってくれた人。今流れてる曲も俺らの曲の他に合間を使って作ったのか丁度それを披露していてこの短期間でこんなに作れるのも流石だなと思った。
東雲の曲メドレーの中で東雲らしい曲に差し掛かるとフロアで踊ってた人達も踊り方をそれに合わせて変える。新人DJだが上手くやってる姿を見守り手に持ってたコーラを啜っていると隣に此方も俺の知人の一人である朱浪義路さんがやって来る。


「義路さん久し振りッスね」
「……」
「何スか。何かあったとか?」
「いやそういうわけじゃねぇんだけどよ。隣いいか」
「?どうぞ」


酒の入ってるグラス手に義路さんは俺の隣に来て同じく壁に寄り掛かる。何だか何時と違う雰囲気の彼に俺は何でそうなのか気にかかるが聞くことはせずにDJフロアを見上げたまま会話が中々始まらない無言で過ぎていくこの場をどう取り繕うか考える。すると曲がまた変わりそうになった時義路さんから口を開いて「その衣装」と聞いてきてくれる。どうやら衣装について気になってたみたいで俺は小さく笑って自分の着ている服を見下ろす。


「お世話になってる知人のデザイナーに作ってもらったんスよ」
「……」
「何スか。変ですか」
「そんなんじゃねぇよ。そのいつもとテイストが違うからよ。ちょっとな」


残りのコーラを一気に飲み干して空になったグラスを片しに行くタイミングを考えながらも彼の発言に笑む。


「ちょっと、何スか?」
「お前、俺の反応見て楽しんでるだろ」
「そんなことないですよ。朱浪さん可愛いですね」


二人で言葉を交わしながらも東雲の一番DJセンスが光るような曲に差し掛かる。ディープな重低音にフロア内のライトアップも変わって曲に合わせてフロア内の雰囲気も一気に変わる。朱浪さんも酒を一気に飲み干して俺の手の中のグラスと自分のを近くの通りかかったウェイターの盆の上に置く。そして口元を上げて壁に寄り掛かったままの俺を見下ろす。


「踊るか」
「え。でも」


俺の腕を掴んで引き寄せられる。東雲のDJ姿を見るだけだったが踊る事になるとは思わなかったのでいきなりダンスフロアに出てきてしまって戸惑う。でも何もしないで突っ立ってるのも勿体ないので身体を小さく揺らしていると誘った本人が全く踊らず俺と向かい合わせになったままでいる。それにどうしたのかと言葉を掛けようとすれば朱浪さんの手が俺の腰に触れようとしているのに気付く。途端に横からいきなり現れた人物がその手をがっしりと掴み上げる。


「あ?左馬刻?」
「おい変態巨人」
「俺のことか?」
「テメェしかいねぇだろ」


相変わらず鋭く威嚇するように睨み上げる左馬刻に、朱浪さんは愉快そうに大口開けて笑う。


「色々と際どかったから直してやろうと思っただけだ」
「どうだかな」


左馬刻の手が乱雑に離れると鋭さに尖さを加えて睨み据える。


「またこいつに手ぇ出してみろ。今度は俺様が」


不意に朱浪さんとほぼ一方的に睨み合っていた左馬刻が俺の方を向く。目が合ってしまい二人が話してるのに唖然と聞いている俺の肩を強めに突いてくる。


「何すんだよ!」
「馬鹿面してんじゃねェよ。萎えんだろ」
「は?」
「ふはは!お前も大変だなぁ」


豪快に笑い出す朱浪さん。曲がかかってても聞こえる舌打ちが左馬刻からこぼれるとそのまま手放す様に去って行った。
朱浪さんを見上げる。朱浪さんは笑みを浮かべたまま「そういう事だ」と言ってくるが俺はそれに二人のやり取りの真意に未だに気付かずにいたのだった。





(24.07.31)


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