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FPを推してくれてる友人の一人、泰雅の家は銭湯を営んでいた。銭湯って中まで入った事が無かったからどんな感じ?って聞いてみたら無料券やるから来いよって言ってくれて帝統と幻太郎も連れてくねって伝えたら苦々しい顔されたけど取り敢えずと三枚分の券をくれた。
約束した日に三人で行くと今日は貸し切りなのか何時も店の前でお喋りしてるお爺ちゃんおばあちゃん、中年の人達が全くいなかった。泰雅の母親に挨拶して早速脱衣所で着替えて湯所に入ると思っていたより広くて壁には山や川や木々のタイル絵がでかでかと描かれている。それを見て幻太郎は「これは風情がありますね」とか言っている。
外は真夏なので照り付ける太陽にやられて汗だくだった僕達は身体中の汗を一気に洗い流し清め終えると入る準備が整う。三人で三つ程の湯の前でどれに入るか先ず考える。
「一番右の小さいのは水風呂ですね」
「え?!これ水風呂なのか」
「何で分からないんですか。入った途端にドボンですよ」
「あはは!帝統、入っていーよぉ?」
「でも今日は暑いから丁度良いんじゃねぇかな」
水風呂に手を突っ込んで掻き混ぜてる帝統だがやっぱり冷たい様で手を引っ込めて「無理だな」なんて言っている。これはサウナ用だ。…と言ってもここにはサウナなどない。という事は残りのどちらかが熱湯風呂という事になる。それを僕も分かって微笑して水風呂から離れた帝統の横を抜けて二つの風呂の間にしゃがんで手を同時に湯煎に突っ込む。左の方を直ぐに引っ込める。
「成程。左が地獄風呂ということですね」
「そ…こまで熱くないんだけど肩まで浸かるには慣れてないと駄目みたい」
「じゃあ右は」
「此方は凄くぬるい。子供でも入れるよ」
「何で極端に違ぇんだよ!中間はねぇのか」
文句を言っている帝統を制しようとするとガラガラと扉が開いて中に泰雅が入って来る。手にはデッキブラシがあり僕を見ると「お」とか声をこぼして口角を上げている。
「いいもん見た」
「てめぇ!乱数の裸見たさに呼んだな?!」
「違うって。…多分」
「ニヤニヤしたまま言ってんじゃねー!」
「あの、泰雅?どうしてこんなにお湯の温度差があるの?」
「ここに来るじっちゃん達が高温が好みなんでね。ぬるま湯はお気付きの通りキッズ用。ホントは中間の湯も作るつもりだったんだけど来る客層によってこれがしっくりきてさ」
そうなんだぁと納得して僕はキッズ用の方のぬるま湯に脚を突っ込む。それを見て泰雅のニヤニヤ度増して身体に巻いてるタオルから覗く僕の脚に目線が釘付けだった。そして小さく「細せぇなぁ。カワイイ♡」とか言ってるのを帝統が聞いて泰雅の背中を横から強く小突く。
「お前どっか行ってろよ。俺の女をいやらしい目で見んじゃねぇ」
「あー…そういう事ね」
「帝統!女じゃないって!」
「帝統も来て!」と今にも喧嘩しそうな二人を止める為に帝統の腕を引っ張ってぬるま湯に誘うと帝統はよろめいて何故か地獄風呂の方に滑って入ってしまう。湯飛沫の中でぎにゃあとか潰れた猫の様な声を上げて水風呂に駆け込んで行く帝統。でも直ぐに冷てぇとか叫んで僕の浸かってるぬるま湯の方に収まる。その奇行に呆れた様子で泰雅はデッキブラシを壁に立て掛けて出て行った。
***
初の銭湯の湯を楽しんだ僕達は脱衣所で着替えをしている。幻太郎は着物でちょっと時間が掛かるらしいのでその間にパンツ一丁の帝統と一緒に珈琲牛乳でも買うかと話していると泰雅が戻って来る。泰雅は着替え途中の僕を見てまた口元をつり上げる。帝統がすかさず泰雅の視界に入って遮る。
「何妄想してんだ。タダ見してんじゃねぇぞ」
「んー。じゃあ払うよ。どれくらい払ったらヤらせてくれる?」
「ざけんなよ!!」
「帝統!もー!喧嘩はやめてよ!」
掴みかかりそうになる帝統を止めに入ると、泰雅は笑って「3Pでもいいからさ」と火に油を注ぐような言葉を言ってしまう。帝統が怒髪天になり泰雅のTシャツの襟首を掴んで鋭く睨み付ける。
「3Pなんて許すわけねぇだろが。失せろ」
「た、泰雅…今日はありがとね!また後でメールするから…」
「二度と関わるんじゃねー!」
脱衣所に帝統の怒声が響き渡る。聞き付けた幻太郎もまだ着衣途中のまま止めに入るが泰雅は薄ら笑いして帝統を一睨み返すと脱衣所から出て行った。
泰雅がいなくなると帝統は隣にいる僕の身体を包み込むようにして抱きしめる。
「泰雅にあんな事言っちゃダメだよ。…泰雅は僕等のファンなのに」
「乱数のだろ」
ちょっと余裕の無い掠れた声で呟く嫉妬してる帝統が何だか可愛くて僕はクスリと笑うと「珈琲牛乳買ってあげるね」とヒートアップした彼を冷まし機嫌を取り戻しにかかるのだった。
(24.08.07)
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