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飴村くんと遊園地に来たのは初めてだった。遊園地というより大型テーマパークに相応しい広い園内で彼とはぐれるのだけは避けたいと思いどこかへ行ってしまわぬように出来るだけ見守っていようとしていたのだけど彼の方から腕に腕を絡ませてきたり手を握ってきたりしてくれたからそういうハプニングは起きる事なく穏やかな時間を過ごせていた。パークの中央に位置するシンボル的な城の前のフォトスポットでパークの創造主の像だよと教えてくれながらその前で私とツーショットを撮りたいと言い出す。さっきキャストさんが道行く人に声掛けられ写真を撮ってあげたりしていたから、私達もそのように撮ってもらおうかと提案しようとすると、飴村くんがさっきワゴンで買った購入品を袋から取り出す。
「カチューシャつけよ?」
「君が?」
「寂雷が」
真新しいカチューシャ手にしゃがんでと言ってくる飴村くんに従って少し屈むと頭に黒い丸耳のキャラクターのカチューシャをつけてもらう。それをつけて身体を起こすと私を見上げて飴村くんは「あは!」と何だか嬉しそうな声を出す。
「つけてみたかったんだよねー」
「このキャラクターは?」
「え。知らないの?ここにいるじゃん」
ウォルト・ディズニーと飴村くんが説明してくれた像の隣に手を繋いでるキャラクターがいる。確かに自分がつけてもらったキャラクターと同じ丸耳をしている。ジッと像を眺めてカチューシャの片耳に触れていれば、横で飴村くんは「メインキャラだよ」とこのキャラクターについて語ってくれようとする。すると突然髪を下から引っ張られる感覚。下を見るとまだ幼い風船を手につけた子供が私をキョトンとした目で見上げている。誰か捜している人物が周りにいないか辺りを見渡す。飴村くんが「あれ?キミどうしたの?」と子供に尋ねている。
「ぱぱとままどこー」
「あれ迷子かな。迷子センターどこだろ」
飴村くんはスマホを取り出すとそれで公式ホームページを開いて迷子センターについて地図の検索をかけている。私は子供の目線までしゃがむと子供は自分の目線の高さになった私を真正面に見つめる。
「いくつかな?」
「五つ」
「そうか…。カッコいいバッジつけてるね」
私の頭につけてる黒耳が気になるのか引っ張ってる男の子。一旦取って男の子につけてあげようとするが大きさが合わない事に今更気付く。それを見下ろしていた飴村くんは笑って「これ大人用だからつけらんないよ」と言っている。そんな事を小さい子供に言っても分からないだろうと分かりやすく説明してあげようとすれば飴村くんも子供の目線までしゃがむ。そしてふんわりと笑い掛ける。
「おじちゃん似合ってるよねー」
「にあってるー!」
「お…じ」
飴村くんを横に睨み付ける。飴村くんはニコニコと「ね?」とはにかんで子供と一緒に笑う。天使に匹敵する二人の可愛さだ。
やがてキャストさんと共にこの子の親がやって来る。私達に礼を言うと去って行く。束間の間の出来事だった。子供が振り返り手を振ってくる。
「ばいばいおじちゃん!おねーちゃん!」
思いもよらない子供の飴村くんの呼び方に思わず笑ってしまう。飴村くんは私を隣で小突いてくる。
「おじちゃんに笑われたくないー」
「中々カワイイ対応でしたよ。乱数おねーちゃん」
笑みには笑みを返してやると飴村くんは私が手に持ってるカチューシャを奪ってまたしゃがむよう言ってきて黒耳が頭に戻る。飴村くんの手が私の手と重なるとちょっとさっきよりかは強引に恋人繋ぎの形になる。この場から離れるようで「写真は」と慌てて聞く。
「後で。それよりめっちゃ似合ってるから、それつけてパーク一周だよー」
レッツゴー!と寄り添って楽しそうに言う飴村くんにこの際私もこの時を楽しもうと思ったのだった。
(24.07.06)
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