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*あまり適切では無い描写があると思われます。
男子寮から学舎に行く途中のある校門の前で風紀委員が集まって定期的に行われる身嗜みチェックやら何やらをやっている。ああ今日はその日かなんて溜息をつきたくなるのを抑えて列に並んでシャツのボタンとネクタイをちゃんと締め直して自分の順番を待つ。先頭にいた風紀委員長の側にいた生徒会長の華白が見る順番そっちのけで俺の元までやって来る。目の前で俺を下から上まで見つめる華白に俺は微笑する。
「何か問題でも?」
ボタンは閉めたし、ネクタイをしっかり直した。文句のつけようは無い筈だけど華白は中々に俺の前から退こうとしない。何かあんのかよと睨み付けていると華白は鼻で笑ってきて「放課後生徒会室に来て下さいね」と言ってくる。ちゃんとしてたのに理由が分からなくて納得がいかなくて。思わず声を上げてしまうと風紀委員の女の一人が俺に口答えさせないように黙らせてくる。
身嗜みチェックは直ぐに終ったが放課後の呼び出しが入ってしまって悪態をつきながら先頭にいる風紀委員長の男子高生、澤村の傍を通り抜けようとする。すれ違い様に「逃げるなよ」と小さく囁かれる。
一足早く校舎に入り、俺は盛大にまた一つ溜息をついた。
***
放課後になると生徒会室のある校舎へと行く。離れ校舎はさすが金持ち校なだけあってかランク付けされた格差の違いを見せつける様は豪奢な造りでフカフカの高そうな絨毯の上を歩き進み生徒会室の前までやって来る。既に風紀委員の澤村がおり俺を視認すると中へと通してくれる。
部屋の中はシャンデリアや座り心地の良さげな真っ赤なソファー。そしてデスクにはこの学園の生徒達を束ねる生徒会長の華白。俺が入るなり書き物をしていた手を止めてソファーの前に立つ俺に「座って」と命じてくる。それに軽く無視してやろうと顔を背けて近くの花瓶を見ているフリをしていれば華白がすぐ近くまでやって来て俺の顔を覗き込んでくる。顔が、近い。
「な」
至近距離まで近付いた女の顔に反射的に後方に下がるとネクタイを強く掴まれてそのままソファーに見た目とは反して凄い力で放られる。質感が良い高級な赤のソファーの上に身体を沈ませると華白は俺の上に乗り上げて素早くネクタイを緩めてボタンを乱雑に外し始める。直ぐ様胸元が露になっていきなりこの女の行動に困惑して暴れて抵抗しようと細い腕を掴もうとする。隅で控えていた澤村が「大人しくしておいた方がいい!」と切羽詰まった声で忠告してくる。俺は自分に乗り上げてる華白を見る。華白は何だか興奮気味で俺の着崩してる姿を見て舌舐めずりすると上着のポケットに入ってたスマホを取り出して俺を撮り始める。嫌な予感しかしなくてまた抵抗しようとするが「山田!」と横からまた制される。何がしたいんだ男の俺なんて組み敷いて。
少し不安気にスマホのデータを確認している華白を見上げて華白はスマホを口元に添えて妖艶に笑ってみせる。
「高値で売ってあげる」
「は…な、そんなの許すわけ」
「大人しくしないとお前の大切な弟くんが大変な目に合うけど」
「お兄さんも」と追い打ちを更にかけてくる華白。サッと青ざめていくのが分かる。こいつは学園内でもとにかく権力がある。という事は何でも思いのままに出来る。弟、兄貴にもこの性悪が手を出すとなると何が起こるか何をされるか分かったもんじゃない。澤村を見る。澤村は俺を見つめ返していて手を振り上げようとしていた俺の抵抗の拳を下ろすよう訴えかけてくる。
華白は写真を確認して心底愉快そうに笑うと部屋から出て行こうとする。扉を閉める間際に振り返って「また明日来るように」とか残酷な言葉を吐いていなくなる。
華白がいなくなると澤村と二人きりの静かな部屋の沈黙を割って澤村が駆け寄って来る。服を直してる俺の横で悲しそうに俺を同情してる様な目を向けられる。そして自分にはこれ以上どうしてもしてあげられないそんな意味合いを含んだ瞳をしていた。俺はその目を見て小さな怒りも感じたが…感謝もしていた。
「忠告してくれてサンキューな」
俺の地獄はここから始まる。そんな予感さえして夕焼けに染まる部屋で一人決意を固めるのには今この場でざわつく心を静まらせる方が先だと思った。
(24.07.05)
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