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サッカー部の練習試合も後半戦に入って相手方チームと同点の緊迫感高まる皆の気が引き締まる中でどうこの試合をやり抜くか自分の良いとは言えない頭で知略を巡らせているとボールを奪った味方から東雲へボールパスがまわってくる。東雲はゴールまで行かせまいとする相手方のチーム達から上手く避けながらボールと共に独走してついにゴール目前までやって来る。でも良い所で相手方の邪魔が入ってきて、俺はゴール側に寄って「東雲こっちだ!」とボールパスを促す。けれど東雲は無謀にも相手方にマークされているというのにパスという手を使わずにシュートを決めてしまう。
味方ベンチと観戦に来ていた人達の歓声が上がる。俺は涼しい顔してベンチに行く東雲に後ろから肩を掴んで振り向かせる。
「お前なぁ!サッカーはチーム戦なんだよ!一人で突走ってんじゃねぇよ!」
東雲の肩に触れて声を上げれば東雲は手を置いた俺の手を払い落として何時も目付きがあまり良いとは言えないがやっぱり俺の発言に気にかけてる様子も無くまるでお前は眼中に入ってないみたいな言い方と視線を向けてくる。
「悔しかったら女と遊んでないでスキル上げたらどうだ」
「な」
一瞬、何を言われているのか分からなくなった。俺が女と遊んでる考えてみればそれはもう一つの部活のデート部の事か。確かに女と絡む部活はやってる。けどそれとこれとは今は話が別だ。俺はそういう事を言いたいんじゃないのに。分からず屋だ。
言い返そうとする。けどそれを見越した先輩が間に入ってきて「まあまあ」と仲裁に入ってくる。
「東雲、お前がサッカー上手いのはよく分かってる。けどな、二朗の言う通り時にはチームとしての団結も必須だぞ」
「やだ」
「てめぇ!」
「どうどうどう」
会話に先輩がわざわざ入ってきてくれたのにやだなんて子供みたいな我儘で片付けられる状況でも無い。この期に及んでこいつは自分の意見を貫き通してきやがる。自分の意見と言うか俺もよく分からなくなってくる。東雲はこのチームの中で一番サッカーが出来る。あの場面であいつ一人がカッコつけてシュート決めるのはチームの勝利として正しかったかもしれない。でもパスをする事で「練習試合」にも繋がる。難しいのは答えは一つに定まっていないという事だ。
憤慨する俺を制する先輩に従ってスポーツドリンクを飲みに行った東雲から離れる。先輩は俺にタオルを手渡してくれる。
「東雲に説教しても無駄だって。分かるだろ?」
「分かんないですよ、俺は唯チームで」
「二朗ちゃんのサッカー愛はちゃんと分かってるから。…まあ何とか解決していこう。東雲と上手くチームワークが取れたらあいつのスキルは高いからチームの戦力も上がる」
「なんか納得いかねぇ」
水分補給を終えてボールを脚で蹴って自由自在に操ってる姿を横に見て溜息。コーチから試合後の挨拶をするとかで声が掛りチーム皆で呼ばれた方へ一斉に向かう。
「(サッカー愛か。東雲には東雲の、俺には俺の)」
自分に言い聞かせて両頬をパシパシと気合いを入れて軽く叩く。自分だけその意思を分かっていて頭に入れていればいい。俺は俺なりのサッカーをしていけばいいと。
(24.07.03)
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