hpmi (Ⅱ)


クリスマスシーズンになるとデパートのプレゼント包装の仕事は忙しさを増す。というよりその時期が本番というか重要でこの日の為に一年を締め括るようなものだ。次々に注文される包装をこなしてひたすら手を動かしている俺に少し上の先輩が隣で同じ作業をしながら突然笑い出す。それに思わず手を止めてしまうと先輩は「そんなに慌てなくても大丈夫だよ」と声掛けてくれる。それでもこの時期になると仕事量も多いし仕事の流れやスピードも変えたくないからどうしても意気込んでしまうんですよねと言うと先輩は手を動かしながら笑んだままうんうんと頷く。


「でも頑張り過ぎて私達が身体壊しちゃったらそれこそ大変だし」


先輩の手元を見てみると綺麗にラッピングされたプレゼントがあってここまで良く包装されてるのを貰ったら子供も大人も喜ぶだろうなと思った。長年やってきたスキルと心得を俺は何となく知る。


「クリスマスボーナスとか少しでも考えてた俺が恥ずかしいです」
「あはは、期待しない方がいいよ。要は全体の利益だからさ、こういうのは」
「そうですよね…」


この階にいる他の同じ包装の仕事をしている先輩が出来上がったプレゼント番号をアナウンスで読み上げて取りに戻ってきたカップルを見て俺は溜息をつく。


「イブってやっぱり大切な人といるべきだよな」
「え?」
「あ…いや、何でもないです」


先輩の手が止まってしまって俺はそれこそ慌てて今の発言を無かった事にしようとして誤魔化すと先輩は笑みを浮かべたままそれ以上聞き込んではこないで仕事に集中していた。



***


イブが過ぎ二十五日のクリスマスも何とか山場を過ぎると終わって開放感に包まれたその後にあるのは一人過ごすクリスマスの寂しさだった。取り敢えずこのまま帰って何も食べないで寝るのは明日に響くからとコンビニでレンチン出来る物を買ってケーキ売り場で足を止める。前の年は二個入ってるお得なケーキだったが今のコンビニスイーツは何でも凝っていてこれだけで一人クリスマスには充分なんじゃないかと思うくらいだ。一つを手に取って籠に入れ会計を済ますとコンビニを出た時にはかなり冷え込んでいた。これは雪が降るかもななんて思いながら帰路を急ぐとアパート前の俺の部屋の扉前で蹲ってる男性の姿。誰だと不審に思うのも束の間。顔を上げた人物を見れば帝統だった。


「何してんの!バカかよ」


丸まって冷え込んだ身体を急いで部屋の中に入れると直ぐに暖房つけてやる。帝統は暫く震えていたけど次第に暖かくなっていく室内と彼の身体に顔色も良くなってくる。


「乱数くん達と一緒じゃなかったの?」
「ああ。アイツらには先に言ってたからな。今日は七津ん家泊まるって」


まだ暖まったばかりで寒暖差なのか小さくクシャミをする帝統。俺は手に持ってたコンビニ食をテーブルに置くと帝統は上着の中から何かを取り出す。そしてそれを俺に差し出す。それを見てバカかよともう一度呟いてしまう。


「おい何遍言ったら気が済むんだ」
「乱数くんに出して貰ったの?それか幻太郎さん?」
「半分はな。残り半分は…まあ七津の欲しがってる物とは違うかもしれねぇけど」


帝統の目が泳いでいて普通そうに話しているが俺の反応を待っているみたいで可愛く思える。俺は棚に置いていた事前に買っておいたプレゼントを帝統に押し当てる。帝統もびっくりしてるけど俺だってびっくりしててお互いの突然のプレゼント交換に沈黙の中で開けてもいいかと言う帝統の言葉に頷く。俺も開けると先に開けた俺のプレゼントの中身は洒落た万年筆だった。


「幻太郎に聞いてこれなら書きやすいって言うから」
「…文字書きは趣味だって言ったろ」
「趣味でも続けろよ。書く事はやめるなって」


帝統の気遣いに俺には勿体無い物だって思えるけどこの分大切にしなきゃって思う。文字書きの仕事は諦めた。でも帝統が趣味でも続けろと言うのならそうしてみようって思い改めると小さく有難うと言う。帝統は俺があげたプレゼントを開封し出す。中はサイコロ柄のニットで服を広げて「お!」とリアクションしてくれる。


「凄ぇ、セーター?めっちゃ暖かそ…ってこれ賽のイラストついてんじゃねぇか!」


ちょっと遅れて気付いたサイコロ柄にパァと嬉しさが花開くように目を輝かせる彼に笑ってしまい俺はある意味見つけるの大変だったと言うとだよなぁと帝統は眩しく笑い返す。


「ありがとな。これで冬越し出来るぜ」
「何だよ…俺よりも帝統の方がプレゼント高価じゃん」
「値段はな。まあ今年は俺の勝ちって事で。来年も俺の勝ちだけどなー!」


セーターを着ようとしてるのかシャツを捲っている彼を見ながら俺は笑って、はいはいと言うと貰った万年筆に再び目を落としてそれを大事そうに手で抱き包んだ。



(25.12.26)



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