hpmi (Ⅱ)


朝早くからボクとの時間を作ってくれた幻太郎と帝統とボクの事務所で集合して会って予め幻太郎が用意していたクリスマスケーキやオードブルのカタログを早速開き見る。毎年FPのケーキは三人で相談して決めてて幻太郎がカタログを持ってきてくれた。けれど今年はここには載ってないケーキを二人に紹介したいのとその作った人の事を知ってもらいたいという考えがあった。

遡ること二日前。ボクはシブヤのケーキ屋に訪れていた。そこで彼、泰雅を捜していると店の人に聞けば今日は丁度非番でとあるカフェにいるだろうという情報をもらって向かってみる。すると予想はドンピシャで泰雅は窓際のテーブル席で一人珈琲を飲んで何かを真剣に書き込んでいた。ボクは泰雅の視界に立つと泰雅はやっとボクに気付いて着けていた眼鏡越しに見上げてくる。


「ここ座ってもいーい?」
「どうぞ?」


向かいの席に腰掛けると泰雅は眼鏡をかけ直して書き込んでいたスケッチブックに再び目を落とす。ボクもそれを見やれば描いてあったのはケーキデザインでどうやらクリスマスケーキのデザイン案を何個か考えているようだった。興味津々にスケブを覗き込んでるボクに泰雅は上目でボクを見ると目が合って「何か頼めば」と言われる。ホットココアとミルフィーユを頼んだ。ケーキが来るまで泰雅の作業を見つめていると泰雅は色々と集中力が切れたのか眼鏡を外してスケブを閉じようとする。そのページの間に手を入れる。


「飴村乱数くんだよな」
「うん、そうだよ。やっぱり知ってるんだね」
「店によく来るだろ。何時も焼き菓子の詰め合わせ買ってってる」
「よく見てるね。あの焼き菓子作ってるの泰雅くんでしょ」


泰雅の目が泳ぐ。そこまで知ってると思わなかったみたいな目だ。それにボクはコンクールで焼き菓子部門で入賞してたからと情報が合ってるかどうか答え合わせしようとすれば彼は何も言わずスケブを開いてデザイン作りを再開し出す。ココアとケーキが運ばれてくる。けど視線は彼のデザインを追っている。


「ココア冷めちまうぞ」
「ケーキも作るんだね」
「…今年は作ってみないかって言われたから」
「もしかして徹夜?」
「まあな。今日もそうだよ…二徹」


少しげっそりした表情でスケブにケーキの層の中身の詳しい情報を書き込んでいる彼にボクは自分もファッションデザインで徹夜したりするよと言おうとしたけど口を噤む。前に作ってた頁と今描いてる頁を比べて捲り見ている彼の動作にボクは我慢出来なくなって「ちょっと見せて」と言葉にする。泰雅は見せるか考えているのか少しの間静止してスケブを見えやすいように向きを変えてくれる。


「あ、これがいい。これ予約」
「まだ先輩に見せても無いやつだぞ。店に並ぶかどうかも分からない」
「じゃあ…ボクの為に作ってよ」


泰雅の珈琲に手をつけようとした手が止まる。そしてボクを見ると本気なボクの目を見て間を置いてフッと笑みを浮かべる。


「シブヤの人気者が過ごす貴重なクリスマスイベントの食卓に俺のケーキを置く訳にはいかない」
「ボクがいいって言ってるんだから」
「乱数くんが良くても残りの二人が認めた訳じゃないだろ。それにこれは試作品だ。もっと相応しいケーキはそこらに沢山ある」


口々に出てくる言葉は自信の無いものでボクはきっとこういう彼の事だからクリスマスも一人なのだろうなと思ってしまう。泰雅くんのペンをいじっていた指先に指でそっと触れる。そして真正面から彼をジッと見つめると目を逸らされるがほんのり頬が染まって動揺してるのがちょっと可愛く見えた。
そして話をつけるのに時間は掛かったけど一目惚れした彼のケーキを作って貰えるのと彼をボクらのクリパに招待する事に成功しそれを帝統と幻太郎にもちゃんと伝える。話を一通り聞いた帝統は意外に人見知りするタイプだから反対されるかなと思ったけど「別にいいんじゃねぇか」と賛同してくれる。幻太郎も帝統が宜しいなら宜しいですよとすんなり許可してくれる。


「けどケーキ食うだけだからな」
「ええ?!帝統ケーキだけ食べるってのは失礼だよ」
「でもよ、そいつとは世界が違ぇんだ。そいつに俺のギャンブル心が分かるか?分からねぇだろ」
「私達も分かりませんが」
「にゃー!いいからケーキだけ食ったら帰ってもらうぜ!」


競馬新聞を読んでいた帝統が声を上げるとそれと同時にボクは帝統の上に乗り上げる。猫が潰れたような声がまた上がってじゃれ合うボクらに幻太郎は呆れたように携帯の写真で撮った泰雅のケーキデザイン画を眺める。美味しそうですねと言う幻太郎にボクは帝統の上から退いて興味を示してくれた事に嬉しくなってそのまま泰雅と仲良くなってくれるかなと期待するけどパティシェミステリーを次の本の題材にするとか言い出してしまう。それに帝統が幻太郎も俺も乱数も泰雅って奴も世界が一人一人違うから簡単に仲良しこよしは出来ねぇんだってと現実的な事言ってきてこの二人と初対面で気を合わせるのは中々難しいと理解するのだった。



(25.12.20)




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