hpmi (Ⅱ)
Fragranceの休みの日には一二三と二人で夕食を食べたりゆっくり話をする事が出来る時間が増えて一日の疲れも一二三がいるだけで吹き飛ぶ。俺にとって一二三の癒しパワーはかなり効くし俺だけじゃなくて女の子達を虜にするくらいとにかく一二三の存在はなくてはならないものだった。俺なんかが一二三を独占していいのかと時々思う。一二三の料理してる姿とかを眺めてる時とかこんなに近くで一二三を眺められる特等席が俺にあるって事が一つの問題のように思えてしまう。
「独歩ー。風呂沸かしたから入って」
「んー。今行くから」
今日の仕事にミーティングの後に貰った同僚の行きつけのほぐし店の広告カードを翳しながらソファーに寝そべって見ている俺の視界に一二三が入って来る。一二三は何だか怒ってるようで何に怒ってるのか分かって起き上がる。ソファーには寝そべらないという決まり。一二三の手が俺の手にある広告カードを取り上げると首を傾げられる。
「ほぐし店?」
「うん。同僚がさ、よく行くみたいで。貰った」
「Fragranceから近くね?」
「そうそう。俺もそう思った」
起き上がると一二三から広告カードを返して貰い風呂に行く為の寝間着を用意しに自室へと向かう。扉を閉めると俺はもう一度カードを見下ろす。せっかく貰ったんだから今度機会があったら店の前だけでも行ってみようか等と思ってスーツのポケットにカードをしまった。
***
仕事が終わってすっかり日が暮れた夜。今日は残業があって遅くなると一二三に予め告げていたからきっと家に帰ったら一二三が作っておいてくれた夕食に早めにありつける筈。それでも俺の脚先は繁華街の方へと向かっていて一二三のFragranceの前を少しだけ見に行ってみようかと朝から電車の中で座れなかったり営業で歩き回ってクタクタなのも気にせず夜の街を歩き抜ける。するとFragranceの直ぐ近くに本当に例のほぐし店があったのか見覚えのある店内ロゴの入った看板を見つける。看板の前で店を見上げていると中から女性店員が出てきて「入ります?」と俺を誘うように笑顔を向けて腕を絡ませてこようとする。
「え、と…俺は、大丈夫です」
「でも凄い疲れてそう。今ならサービスしますから」
「でも…」
「独歩くん」
声がして女性と俺は声の主の一二三の方を向く。一二三はホストモードに入っているが俺を見てどこか気難しい顔をしている。女性は一二三が話し掛けてきた事に大物が釣れたような目をして俺に絡ませていた手をパッと離し俺の興味が失せたように今度は一二三の方へと行こうとすると一二三は女性に一言「ごめんね」とだけ謝る。俺の腕を一二三の手が掴むとグイグイと引っ張られてFragranceの裏手の方へと連れて行かれる。一二三はジャケットを脱ぐ。
「で?マッサージして貰いに行った訳?」
「違うよ。Fragranceの前まで行こうとして…」
「はあ、これがキャバクラだったら…許せないかもな」
一二三の真剣な表情に俺は少しでもほぐし店に興味を持ってしまった事とさっきの一瞬の時間を後悔してしまう。でも一二三は俺の反省と落ち込み様に優し気な眼差しに変わるとマッサージなら俺がしてやると言う。
「一二三器用だもんな…って、イデデ」
「じっくり三時間コースは如何ですか」
「三時間も頬抓ってんのかよ!そこはこってない!」
マッサージと言うから家に帰って癒し系のものを期待していたのに頬を抓ってきてまだ許されてないのかどう機嫌を取り戻そうかと考えていれば一二三が手を離してFragranceから一二三を呼ぶ声がしそれに返事をする。戻らなくちゃとジャケットを着ようとしている一二三をその前に呼び止める。
「でも一二三だったらいいけど、マッサージ」
「え」
「三時間抓られるのは勘弁だけど…」
言葉にして自分は結構出しゃばって話しているのかもしれないと考えてしまう。マッサージを無理に強要するつもりは無いけど。その俺の言い訳の間を切り取るように一二三は柔らかく笑むと俺の方に戻ってきて頬を抓ってくる。地味に痛い。
「だからそこじゃないって」
「次の休日」
「?」
「マッサージするけど、独歩もしろよな」
俺もしてって出来るかなと答える前に一二三は笑み掛けてジャケットを羽織ってFragrance店内に戻って行った。次の休日に一二三と過ごせる時間が約束されたようで舞い上がってる自分がいて、俺はクタクタの脚でも機嫌良く帰路へと着いた。
(25.12.10)
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