hpmi (Ⅱ)
テレビのCMで新型ゲーム機「ZERO-BOX」の存在を知ってしまったのがきっかけで二郎はここ最近その話ばかりしていた。学校のダチはもう買ったとか買うならあのソフトが良いとかそれしか言えないのかってくらいで、あまりにうるさく黙らせておくにはもう買うしかないと一兄と僕は仕方なく電化製品屋へと向かった。倉庫のような店内で手描きのマーカー文字で「新作ゲーム!イチオシ!」と描かれている札を見てその下の値段札を見る一兄と二郎。隣から抜けたような声が上がって店内の客が反応する。
「何だよ」
「これ俺の収入の倍近くあるじゃねぇか!」
「何一人前のフリして収入とか言ってるんだよ。お前の収入ゼロだろ」
「こんな高ぇの手が届かない…天使が舞い降りて来ない限り」
「天使じゃないが買えない事は無いんだけど?」
二郎がZERO-BOXのパッケージの裏を見ている僕を凝視してくる。は?何だよその目。まさか強請ってんのかよ歳下に。少し情けなくなってきて僕は財布を取り出す。けど一兄が制して険しい表情で二郎を見やっている。
「これを買ったら二郎は宿題も仕事の手伝いもしなくなるだろ」
「あ。そうか…そうですね、御尤もです一兄!」
「ここまできてやめるなんて聞いてねーぞ!」
「でも実際そうなるだろ。諦めるんだな」
くっそぉと悔しそうな声に僕は益々呆れてきてゲームをクリスマスプレゼントで買って貰うのか親に強請っている何個も歳下の子供を見て二郎は尚欲しがっている。
すると後方から視線を感じて三人振り返る。久し振りに会ったような気がするが二郎の同級生の東雲くんがいた。
「東雲?何か買いに来たのか?」
「ちょっと退いて」
僕等は退いてと言われ東雲くんにディスプレイにあるZERO-BOXを見えるように移動すると東雲くんは上着の両ポケットに手を突っ込だまま真剣にZERO-BOXを見つめている。これはもしかするといや確実に買う気なのでは。
「まさか…東雲買うのかよ」
「買うけど」
「マジか!イイじゃんイイじゃんどんどん買えよ」
「どんどんって何だよ使い方間違ってるだろ単語」
馬鹿と欲丸出しの二郎に此奴は東雲から借りる気満々なんだなと気付いて二郎の耳を引っ張る。二郎はまた抜けた声を出して朝っぱらから幼児レベルに落ちたんじゃないかってくらいの物欲に、ここらで反省させ現実を教えないとと声を耳元で上げようとすると東雲くんが「色」とZERO-BOXを見据えて呟く。
「何色がいいと思う」
「青」
「おい!二郎、お前なぁ!」
「じゃあ青にする」
ディスプレイの見本品を見ていた東雲くんが屈んで下の購入用のゲーム機の箱を持ち上げる。それを一兄が手伝ってあげていて二郎がレジの方へと行く東雲くんの後に続きまだゲームを借りるのを諦めてないのかしつこく話し掛けている。
「なあなあ、今日これから泊まっていけよ。一緒にゲームやろうぜ」
「二郎!」
「いいけど」
東雲くんの返しは予想外のものばかりだった。何万もするゲーム機をあっさり二郎のチョイスした色にするとか、しかもこの後ゲームソフトまで二郎のやりたがってた物に合わせるとかどこまで気前が良いのかとか考えてしまってもしかして二郎の為に買ってるとかじゃないよなと思ってしまう。
それから購入して店を出た後に事務所に直帰して早速ゲームをやり出す。突然の事だから部屋の中とか片付けてなくて急いでしまっているとゲームをずっとぶっ続けでやっている二人に時折一兄が十五分休憩と注意を挟みながら二人は萬屋の休日を満喫する。僕はというとその二人のゲームの進行度を離れた位置から珈琲マグ手に眺めていて東雲くんと二郎ってこんなに仲良かったんだなと思う程息が合っている。
そして夕食を済ませてまたゲームをやり始めて一時間後くらいに「よっしゃあ!」と声が上がり二郎が背中から床に寝転がる。
「クリアー!」
「はあ?まだ一日しか経ってないだろ」
「これくらいだよ。ゲームソフト一本分のストーリークリアなんて」
「東雲めちゃくちゃ強ぇし…もしかしてゲーマー?」
「ゲームで動画配信出来るくらいには」
凄ぇと二郎の眠そうな声に時計を見る。もう十二時三十分をまわっている。一兄が早く寝ろと言ってこないのは珍しいなとデスクの方へと視線を向ければ一兄はデスクのPC前で突っ伏して眠っていた。近寄って毛布を掛けてあげると二郎が寝転がったまま「東雲」と話し掛ける。
「俺の部屋で寝ろよ。あと、寝間着貸してやるから」
「…ありがと」
セーブをして電源を切る東雲くんは笑い掛ける二郎に頷いて顔を洗いに行くのか二郎を跨いで洗面所へと行こうとする。その脚のズボンの裾を二郎がやんわりと掴む。
「もしかして俺とゲームしたかった?」
「………」
「へへ。有難うな、楽しかった」
彼は何も答えないがここまでする東雲くんは二郎の事好きなんじゃないかと思ってしまう。顔に出ないのであまりよく真意が掴めないけど。でも二郎とゲームを一日出来た事に二人満足しているようで「またやろうな」と言っている二郎に東雲くんは「気が向いたら」と照れ隠しをしているようにも見えた。
(25.12.08)
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