hpmi


休日で人で賑わってる大型ショッピングモール内を歩き抜けて眼鏡屋までやって来る。自分の歪んだ眼鏡フレームを気にしながら人にぶつからない様に歩いていた那子もここまで来れば安心なのかホッと胸を撫で下ろしている。早速店員に声掛けて出来上がったばかりの予約していた眼鏡の受取と説明を今から聞くらしい那子から離れて店の入口の方へと戻って行く。
視界には鮮やかなピンク色の髪の少年、見るからに文豪の出で立ちの男が横切る。まあ乱数と幻太郎ってのは分かるがここに今いるのにかなり驚く。二人も俺に気付いたのか「あ!帝統だ」と呑気に指差してきてさっきまでクレープか何かを食べてたのか乱数の口元にチョコソースが付いてるのを見つけてしまう。


「どうしたの帝統。眼鏡っ子に転生するの?」
「いいですねぇ。転生物は全く書いた事はありませんが帝統くんだったら中々良いのが書けそうですよ」
「俺じゃねぇよ。那子が眼鏡フレーム派手に壊しちまったんで予約してた新品のと取替えにきたんだ」


口元のチョコソースに気付いたのかカラフルな色のハンカチで拭い取って笑ってる乱数と幻太郎も店内に入って来る。飾られている試供品の眼鏡を着けて下に少しズラして上目で隣りにいる幻太郎を見上げている。


「インテリ乱数ちゃん」
「はいはい。お利口さんですね」
「お。これイケてんじゃん」


ブルーライトカットと書かれてるサングラスの一つを手に取るとそれを着ける。乱数と幻太郎が笑い出す。俺も近くの丸鏡に自分の顔を映して思ったよりしっくりきてしまう自分に笑ってしまう。


「ちょいワルギャンブラーだぁ」
「ガンガン当てにいくぜ」
「そんなのママは許しませんよ!ママは此方の眼鏡にしなさいってあれだけ言ったでしょう」
「あーはいはい。今度は此方な」


俺の着けてるサングラスを無理矢理外して真面目系の全フレーム付きの眼鏡を差し出してくる幻太郎に一応着けてみるかと着けてみれば乱数と幻太郎が腹を抱えて笑い出す。そんなに似合うのか?と聞くと「ううん。全然」と即答されて少し傷付く。

眼鏡受け取りが終わったようで入口前にいる俺達の方に来る那子。乱数と幻太郎は軽く挨拶を交わして俺達はお互いここから別行動となり早々に二人で店から退散した。
エスカレーターに乗って降りてくる時に目の前にいる那子がおニューの眼鏡が気になるのか鏡で自分の顔を確認していてそれに俺は良かったなと話し掛ける。


「はい。お付き合い有難う御座います」


ピンクシルバーの控えめなフレームの眼鏡を着けて頭を下げる。よく似合ってる。前の眼鏡も良かったがやっぱり此方の眼鏡の方がいい。俺の真面目眼鏡の装着時とは大違いだ。さっきの自分を思い出して心の中で笑っていれば那子も何処か嬉しそうに笑み出す。


「どうかしたか?」
「いえ…周囲がよく見えるようになったのでちょっと嬉しくて。あと」
「あと?」
「有栖川さんの事も」


急な発言に心にヒットをくらう。矢で狙い撃ちされた様な感覚だ。俺は感情を抑え込む様に口を手で押さえて横に顔を向けると那子は眉を下げて悲しそうな顔を一瞬見せる。…勘違いさせちまったのか。


「いや、違ぇよ。その…なんつーか」
「?」


落ち着きの無いコロコロ変わる忙しい俺の表情に那子は不思議そうに小首を傾げて見つめてくる。これだから不意打ちってのは威力が高えんだよなって一人ルーザーモードに突入してる俺だった。




(24.08.01)


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