hpmi (Ⅱ)
放課後になると俺が受け持ってる数学倶楽部の生徒と次の数学オリンピックに向けて勉強するのが日課だ。生徒達はデカい大会に参加なんて絶対無理だよねなんて言っているが夢を持つのは悪い事じゃない。それに夢が大きければ大きい程叶った時の喜びは増すし自身の成長にも繋がる。そういうのも間近で見守っているのは心地良かった。ここにいるんは本当に数学が好きな奴だと思うし変に点数稼ぎでいるわけじゃない。なのに最近倶楽部に集まったは良いものの数解に向ける集中力が欠けてるようにも思える。何があったのかと女子達のお喋りに聞き耳立てていればどうも最近彼氏が出来てそれで浮かれているようだった。
一時間半程、短い時間だが此奴らに今日教えたかった数式を一緒に解き、後は好きに喋らせておこうともうすぐ下校時間も近かったから一人で片付けを始める。女子達は頬杖をつきながら楽しそうに話している。女子って恋バナホンマに好きやな。
「ほら、もう下校チャイム鳴ったで。閉めるから、早よ帰らんかい」
「ねぇねぇ先生。このお店知ってる?」
話の中心にいた女子生徒の一人が俺にスマホ画面を見せてくる。それは大人の俺でも仰天するくらいの高級フレンチ店でその店のサイトページだった。メニュー画面をスクロールして色々見せてくれるがこのフレンチ店が何だと言うのだろう。嫌な予感がしてしまう。
「知らん…が、まさかこの後行くとか言わへんよな?」
「んーと」
「家族で行くんならええが、お前達はまだ若いんやから控えた方がええで」
「彼氏と行くんだ」
彼氏と聞いてこの前の詐欺関係の事件を思い出す。あれは簓と零が何とかしてくれたが今日もまた生徒が巻き込まれるような事になったらと思うと自然と顔に出てしまう。それを見て女子達が察したのか慌てて手をブンブンと横に振る。
「違う違う。私は騙されてるとかじゃないって」
「ホンマか」
「うん」
そう言ってフレンチ店に行くという子がスマホを操作してもう一度俺に画面を見せてくる。今度は写真アルバムに変わっていて彼氏らしき男性と楽しそうに幸せそうにツーショットで写ってる姿があった。俺は男性の優しげな表情を見てホッと胸を撫で下ろし「ならええんや」と言う。結局フレンチ店も何処か詳しく知らないと返事も返すと女子は何だか今度は俺に興味を示すように頬杖をついて笑みを浮かばせて数解書を片付けてる俺と距離を詰める。
「先生は簓さんと何処行ったりするの?」
「何で簓が出てくるんや」
「だって相方だし、付き合ってるでしょ?」
思ってる事を素直に口に出してしまったのか言い切った女子に隣にいる友人が肩を小突いている。友人は口にした女子に小声で「バカ」と言っているが何を言いたいのかは分かる。俺がホモ路線に走ってるかどうかを知りたいんやって。
「ええか。簓は漫才と結婚してるんや」
「え。それどういう意味?」
「つまりアレだよ。お笑いの神様って事だよね」
「………」
「あ…ごめん先生。そういう意味で言うたんやなくて」
こんな所で一々生徒の言葉に刺さったり感傷的になってられないと俺は気を取り直して俯き顔を上げようとする。するとキンと音が張って拡声器で「躑躅森盧笙さーん?」と何度も外で俺を呼んでる声。カーテンを開けると校庭にはメガホン手に俺を見上げてる簓の姿があった。窓を開けて拡声器には大声で返す。
「聞こえとるわ!どっからそれ持ってきたんや!」
「盧笙ー。今日は俺の誕生日やねん。んでハロウィーンやねーん」
「だから何や!」
「お好み焼き奢らんと白膠木がイタズラするでー」
窓を思い切り閉める。カーテンもサッと閉めると溜息をつく。簓が来た事によってやかましい外とは違って静かな教室に女子達が驚いた様子で俺を見つめている。カーテンから手を離して互いに声掛けづらい空間になってもうて気不味い。
「せ、先生。お好み焼き奢らへんの?」
「はあ…お前達、彼氏にあまり高いもん強請るなよ」
「うん。でも簓さんとは仲良くお祝いしてあげてね」
気遣いの言葉を残して女子達が帰り支度をし始める。閉めたばかりのカーテンを少し開けて外を見る。簓はランニングしている陸上部の男子生徒達に愛用の扇子を広げて戯けて踊りながら応援しよってる。その何時でも楽し気な姿を見て俺は小さく笑みをこぼす。
「(ホンマ、誰とでも馴染むんやな。才能やわ…)」
(25.10.31)
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