hpmi (Ⅱ)


都会から離れて俺の運転する車で目的地の苺農園にやって来る。思ったより人が多くて駐車場に車を入れている間に後部座席で大人しくしていた乱数と帝統がはしゃぎ出す。さて、始まったぞ。二人が起きたら騒がしい事になるのはそれとなく分かっている。
車窓から「いちご」と書かれた幟旗を見て早く外に出たそうな帝統と乱数に車のエンジン止めて「ここはイチゴ狩りが出来るそうですよ」とさり気なく言ってみる。少々間を置いて考えている乱数と帝統に購入するだけという形も出来るそうですがと選択肢を増やして付け加えるとハントするに決まってんじゃんとあっさり言われ外に飛び出して行ってしまう。入り口の方へと駆けて行く乱数の背を見て帝統が腕捲りをしながら死ぬ程食ってやると言っているが現実味がある。
入り口の受付でお姉さんの話を聞いて一時間摘み放題という形で摘んだ苺を入れる籠を受け取り戦地となる苺ハウスに案内される。ハウスへ歩いてる途中で乱数が「一郎がね」といきなり話し出す。


「今日、未夏ちゃんと苺狩りに来てるんだって」
「それは…こことは言いませんよね」
「うん。そうだよ、ここ」


はっきりと言葉にして乱数は案内してくれたスタッフさんに続いて帝統とハウスの中に入る。二人の邪魔をしてしまうのか何なのか気を使う事を知らない姿に溜息が何時もながらにこぼれてしまう。案内してくれたスタッフは今から一時間以内でこのハウスの中なら好きなだけいいですと言って一旦出て行く。乱数は直ぐ側の苺が摘める位置につくと気合いを入れて一つ一つ取り出す。


「なぁ、これって食べるだけじゃなくて持ち帰れるんだろ?」
「そうですね。でも帝統くんは食べるのでしょう?」
「と思ったが路線変更。摘みまくって持って帰って食う事にした」


帝統も摘み出し意外な発言にちょっと戸惑う。まさか帝統に限ってその場で食べるんじゃなくて摘んで持って帰るという行動に移すと思わなかったから摘む苺はどれくらいの量になるだろうと推測していると乱数が手を止めて前方の苺レーンの方を見る。その視線の先を辿っていくと本当に山田一郎と未夏さんがいた。


「まさか本当に二人を追って来たとは…」
「へぇ。未夏ちゃんってああいう娘なんだ」
「早くしないと苺が逃げますよ」
「帝統、口開けて」
「あ?ンぐ」


帝統の口の中に乱数は苺を一つ摘むと開けた口に押し込むように詰め込む。帝統はもぐもぐと食べながら自分ではあまり食べずにせっせと手を動かし摘んでいる。それに「もう二つくらい入りますね」等と冗談で言うと乱数がまた口に放り込んでいる。


「おい、俺の口にどんどん入れるのはいいがお前らも取れよ」
「分かってるよ。はい、あーん」
「はあっへへえはほ(分かってねぇだろ)」
「それにしても大食いの帝統くんにしてはやけに自ら苺を食べないですね」


まあ考えてても仕方ないと私も話しながら苺狩りに集中しようとすると帝統は私が取ろうとした大粒の苺を取って効率良く籠に収めていく。


「たまにはいいだろ。三人で苺狩りって思い出が出来るし」
「貴方が死ぬ程食べたら食べたで思い出になりますよ」
「あ、見て見て!二人が苺キスしてる!」


苺キスという謎のワードを発した乱数に言われ帝統と前を向くと山田一郎は未夏さんに咄嗟に唇に苺を押し付けられている。笑う未夏さんの横で苺を食べている一郎くんはほんのり頬が苺のように染まっている。そんな他愛もない話をしているともう一時間になるのかさっき案内してくれた人がもうすぐですよとハウスの中に戻ってくる。


「おいおいおい。あと五分しかねぇぞラブってんの見てんなって」
「帝統にもしてあげるちゅー」
「やめんか!つか乱数、全然取れてねぇじゃねぇか」
「ホントだーヤバい」


スタッフの人が近くまで来ると「お時間です」と声を掛けて三人で同時に手を止める。籠の中身の成果を見る。乱数は帝統の言う通り殆ど取れてないが私よりも帝統が真面目に沢山目の前の苺を食さずに取っているのに驚いてしまう。


「帝統すきー」
「ったく…あ」


一郎と未夏さんと目が合う。一郎は俺達の存在に一瞬フリーズするが直ぐに顔全体で取り乱し始めて乱数はすたこらと逃げるようにハウスから出て行く。帝統はそんな乱数を見て「乱数の奴、何がしたかったんだ」と言って乱数の分の中身が少ない苺の籠を持ってあげていた。



(25.10.28)




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