hpmi (Ⅱ)
早朝起きるのが得意なわけじゃないけど今朝は機嫌が良かった。なんたって如月が家に来て夏休みの宿題一緒にやってくれるからだ。それでも前日から気合入れてた割には早く起きられなかったし服選びに時間が掛かった。何時もは学生服で会ってるからこういう時くらい洒落た私服でも着ようと思っても変に着飾って三郎辺りにイジられるのがオチだ。だから自然な感じでいくことにした。やっぱり自然が一番良い。
事務所に降りてくると扉前で如月の声が聞こえてくるのが分かって急いで開ける。椅子に座って三郎と談笑しながらもう宿題やり始めてる如月と目が合っておはようと声を掛けられる。
「もう来てたのか!…って何で三郎がいんだよ。如月に教えてもらってたのか?」
持ってきた、というより途中の階段降りてる所で忘れそうになった参考書と教科書を机に置いて如月と三郎の向かいに座る。三郎は如月から少し距離を取る。
「違う」
「じゃあ何でいんだよ」
「二郎。三郎くん、私より頭良いよ?」
「あ?」
「ほら、ここの難しいやつ。クラスの子全員解けなかったでしょ?でも三郎くん普通に解いちゃって」
三郎を見る。自分のドラゴンとマイクのイラストがプリントされたマグでアイスコーヒーを涼し気に飲んでいて、開いた口が閉じない俺を小馬鹿にするようにドヤ顔してくる。何だ此奴やんのかコラ。
「まさか二郎が如月さんに教えるとか無いよな」
「な…わけねぇだろが二人でやんだよ」
「はっ、平均レベルの問題も解けないくせに」
「数学はな!現国は別だぜ」
「どこが」
「三郎、表出ろ!」
朝から三郎が座ってる時点でこうなるとはどことなく予期していたが思ってたより生意気に突っかかってくる。しかも如月より自分が頭良いともう思ってやがる。つかこいつの得意ジャンルだし実際そうなのかもしれねぇけど。
するとデスクワークしてた兄ちゃんが「やーめーろ二人共」と普段通りのタイミングで話に入ってくる。
「それよりクーラー1台しか今稼働しないんだ。俺も同じ部屋にいるから気になるようだったら言ってくれ」
「あ、だから此処に三郎がいんだな」
「一兄、寧ろいて下さい。此奴といると如月さんに飛び火してしまう可能性があるので」
「何だとゴラ!」
「まあまあ。あ、分からねぇ所があったら俺にも聞いてくれ。教えられる所があったら教え」
デスクにいた兄ちゃんが席を立って此処まで来て如月の見ている教科書を覗いている。けど何か衝撃的なものを見たように硬直してしまう。何が起こったのか分からず「どうしたの兄ちゃん」と聞いてみる。兄ちゃんは頭を搔いてやべぇなと深刻そうな表情で最近のはレベルが高いと呟く。それに兄ちゃんとは真逆の意味合いで三人共固まってしまうと三郎が口を開けて何か喋ろうとするけどやめたのか直ぐに閉じる。兄ちゃんは俺の肩をポンポンと撫ぜる。
「賢い弟を持って俺は鼻が高ぇぜ。何かあったら言えよ。あ、喧嘩は禁止だからな」
シラケて困る所なのに何故だか落ち着いてる兄ちゃんに三郎も更に言葉に詰まってしまい如月は目を泳がせている。自慢出来るような弟を持って嬉しいという事なのだろうか。なら素直に喜ぼうと気を取り直して宿題を始め二人は続きに手を付ける。
静かな間が続いて一時間経った所で如月が「ここどうやって解けばいいと思う?」と聞いている。俺じゃなく三郎って所がもう負けてしまっている。三郎は如月の参考書の許可をもらって聞くと見えやすいように開いてノートの側に寄せる。
「ここは…この数式を使うと」
「………」
頬杖をついて二人を眺める。三郎が教えるのを一旦止めて視線だけ向けて此方を睨み返してくる。それに俺も負けじと睨む。視線が下へと落ちて再開する。
「いいですよ。それと此処の頁も良い数解の参考例があったので」
「近い!三郎、レッドカードだろ」
「何だレッドカードって。サッカーなら外でやってこいよ」
「真夏!真夏だっての!」
如月が口元を上品に押さえて笑う。それに俺はつられて笑うと「笑うか怒るかどっちかにしろよ」と三郎も呆れて微笑している。まあ何だ。三郎って油断ならねぇなと思うだけだった。
***
それから一時間くらい経つとさっきまで難しい単語で言葉交わしていた三人が静かになってPCから視線を上げて見ると二郎と三郎が電池が切れたように眠っていた。三郎は昨日遅くまでオンラインゲームしていたのと二郎は如月ちゃん関係で寝不足だなと理解して二人の傍まで寄るとノートにびっしりと二郎の字で書かれている数字を見て目頭を押さえる。如月ちゃんがそれを見て笑っていて俺は時計を見上げて昼も近いから「何食べたい?」と小声で聞く。そうすれば彼女は二郎の好物が良いと言うから。
「じゃあカレーだ」
「久し振りに食べたかったんです」
「そうだな…この前寄ってくれた時に食べたきりだったもんな。楽しみにしててくれ」
そう言って台所へと行くと二郎が小さく「よっしゃ」と後方で呟いているのが聞こえて続けて三郎がペスカトーレと残念そうに呟いたのを聞き逃さない。それに二郎は伏せたままドヤ顔で三郎に喧嘩売ってしまう。
「この前ペスカトーレ食ったんだから今度はカレー」
「二郎、本当にカレー好きだね」
「こいつ甘口食べられないんですよ」
「んなことねぇよ?甘口と辛口のミックスだっていける」
「甘口(2):中辛(1)だろ」
三郎の真面目そうな言葉に二郎は吹き出して笑うと「ほぼ甘口じゃねぇ?」と言っている。
三郎が起き上がる。二郎の頭を二郎の教科書で軽く叩きそれに二郎が勢いよく起き上がり大声を上げるもんで喧嘩が酷くならねぇうちに持っていた玉ねぎを置いて消火活動に移った。
(25.10.18)
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