hpmi (Ⅱ)


行き交う人々。その一人一人に人生があって色があってストーリーがある。俺は寂雷の前ではどんな色でいただろう。そう考えては深く深く知り得ない俺という色は滲んでいく。

一人でいるよりも皆に会う方が良いと今日もシブヤに繰り出す。帝統と幻太郎は何処にいるかとSNSで聞こうとすると一瞬にして色があった世界がモノクロに染まっていってしまう。何が起きたんだと周囲を見渡せば直ぐ近くを通り過ぎた若者達が止まっている。これは夢か、なんて目を瞬かせてみるけど何時もなら直ぐに現実に戻る夢が戻らない。


「(現実…?)」


現実なら一体何が起こっているのだろう。シブヤだけなのか。他の場所もこんな風ならかなりの狂い様だ。取り敢えず突っ立っていても意味が無いと歩き出す。歩く先には止まった人達と色の無い世界だというのに俺の心は落ち着いていた。スクランブル交差点に出てシブヤが見渡せるようになるとその感情は少しずつ崩れていく。何かの魔法にかかったように広い範囲で静止している。こんな事出来るマイクあったっけと考えてはマイクは関係ないと異様な空間の中で交差点を通り抜ける。
何時も話してるオネーさん達の集団を見つけて通り過ぎ何時も甘い匂いを漂わせているクレープ屋の前に来てもあの良い匂いはせず。そこから少し歩いた先によく立ち寄るボクらFPの作戦場所でもあるカフェが見えてきてそこで幻太郎と帝統がいるのが目に入る。


「(二人共、今は此処にいるんだな)」


でもこの状況じゃ会って話せない。後にしよう
と立ち止まってたカフェの前から歩き出す。そうして109の前へと出ればこんな状況になった根源が近くなっていく予感がした。
行き交う人々。その中に圧倒的な存在感で彼はいた。


「寂雷」


あまり彼が立ち寄らないと思ってた場所なのに俺の前には滅多に現れないのにいざ目の前にするとこの異変よりも心に波が出来た。そして気付く。寂雷にだけ色がついているのだ。正確に言うと寂雷がボクと目を合わせた途端に彼に色がついたのだ。向かい合うボクらのこの先が始まる訳でもないのに距離がそれを物語っているのに、止まっている人々はボクらを何処か待ち侘びているかのように見えてしまう。


『飴村くん。私は、ずっと』


寂雷の唇が動くと紡がれた言葉に鼓動が高まる。その先の言葉が聞こえない。でも微笑みかける彼にそこから一斉に波紋を生じさせるように人々に色がついていく。周囲を見渡す。何事も無く動き出す世界。前へと寂雷のいる方へと視線を戻せば彼はそこにはもういなかった。

カランと涼し気な音を鳴らしてさっき飲んでいたコップの中のお洒落な色した紫色の炭酸飲料水の中の氷が全て溶けて薄まっている。
ボクが寝てからどれくらいの時間が過ぎただろう。夢の中では事務所の中から始まったのに思い出せば現実、喫茶店で居眠りしていた。カウンター席で雨の降り出した外の交差点で傘が一つ二つと開いていく様を見下ろしてSNSに着信がきているのに気付きやり取りしてたオネーさんからだと分かるけど今は見る気になれずうつ伏せになる。


「(俺の時間は動いているようで止まっていたんだな。寂雷との時間はずっと…かけがえないものだったのに)」


寂しいって感情って何だっけ。初めて味わう感情でも無いのかもしれないけど寂雷との事となると胸が引き締められるように強く感じる。思えば思う程、寂雷は俺にとって大きい存在で何時だってパズルのピースの一部なんかじゃ足りない心のジグソーパズルのそのものだった。
自分が重症だって分かっていても発作のように考えずにはいられない。この感情こそ、何だろう。




(25.10.17)




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