hpmi (Ⅱ)


帝統達と会った後、各々やりたい事があるとかで解散してその帰路の途中に急に喉が渇いてジュースを買った。この暑い日だからか自販機では皆が飲みそうなスポーツドリンク類は売り切れていてその中から残りのを選んで近くのベンチに腰掛けて飲む。お盆休みもあって人が街中や電車では混み合っていたけど夏休みのこの時期って大体何時もそうだから仕方ないと割り切っている。夏に蝉時雨。首筋が汗ばみ、まだまだ暑さが続くんだなと思いながらも今年の夏も過ごせて良かったなとも思う。隣方に腰掛ける人物を横に見て蝉が鳴き静まったのを頃合いに話し掛けてみる。


「よく此処にいるって分かったね」
「別に。捜してなどないですよ。通り掛かったんです」


長い髪を一つに結わっていても暑そうな寂雷にボクは小さく笑う。寂雷は学会の帰りに偶然にもボクが公園にいるのを見つけたと言って本当に偶然だったんだなぁと理解する。蝉が鳴くのを再開し出して沈黙を詰めているとまた静まった時に「この後、暇?」と思い切って聞く。寂雷が答えるよりも先に立ち上がったのでボクも腰を上げて先導するように歩き出した。



***



来た所は今は電車の通ってない線路だった。此処には陽射し避けとか線路以外何も無いからとにかく暑い。けど此処に来ると何故だか変にインスピレーションが湧くのだ。道なりに歩いて行くと三本の線路の分かれ道に差し掛かり立ち止まる。


「ボクの人生はこんなもん」
「…どういう意味ですか」
「未来も過去も現在も、無い。道が無いんだ。ずっと此処で立ち止まってる。それで他の電車がどんどん通過していくのを唯見てるだけの人生」


寂雷は線路の分かれ道を見て何かを考えていて「キミが」と口を開く。


「人生はキミがこれから作っていくんですよ。誰に決められる訳じゃない」
「そんな事無いって」
「初めから敷かれている線路が難しいからキミ自身で新しく作っても良いのではないですか。その作った線路の上をキミという電車が自由に通過していけばいいと思いますよ」


寂雷の返しに少し戸惑う。真面目に返されると思ってなかったから。何を言っていいのか少し迷うけど言いたい事は何となく纏まってはいた。それでも敢えて「キミという電車?」と聞き返してみるけどそれは邪道だったようで寂雷は物の例えだと答える。深く考えないで下さいとも。線路上を歩く。靴の裏の触れた所から金属熱が伝わっていくような気がする。振り返って寂雷を見る。


「でもね、ボクの人生のレールには決められた電車しか通って欲しくないんだ」


寂雷を見つめてしまう自分に今更見つめた後で戸惑うなんて。それは寂雷もそうで見つめ返してはいてもボク達の一度起こってしまった亀裂や過去を思い起こしてしまうのはきっと互いに同じ考えなんだろう。でも彼は柔く笑む。


「その電車には決められた人物しか乗って欲しくない」


二人で例えを言い合うなんてしかもこの夏の日に。その内容がこの状況でちょっと意外過ぎてやっぱり一緒にそれも考えてしまっていたのか同じタイミングで笑ってしまう。夏の暑さにやられたか。はたまた初めからこうだったのか。分からないけどさっきよりかは軽い心になった気がする。


「キミは何時だって自由ですよ」
「…寂雷もね」


ボクのレールも寂雷のレールも決して同じでは無いけれどまた何処かですれ違うような気がしていた。例えを幾つ出した所で今の状況がガラリと変わるといったら難しいけれど少しずつ人生のレールが今は互い違いでもいつかは近付けていけたらいいなと思っている。



(25.08.15)



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