hpmi (Ⅱ)


午後から始まる夏祭りの準備に左馬刻さん達火貂組の人達が出店を出すと言うので左馬刻さんと二人で見に行ってみるとそこは既に他の出店も出来ていた。夏祭りとしては大規模になものになると想像しながら火貂組の出店の前に行くと左馬刻さんの師弟さん達が数人いて形の良いお辞儀をしてくる。


「どうだ、何か足らねぇ材料とかはねぇか」
「問題ないです。順調に…あ」
「何だ。後から言うんじゃねェぞ」
「さっき見間違いじゃなければ飴村乱数がその辺を一人でほっつき歩いてました」


左馬刻さんはその名前が出ると顔渋める。辺りを見渡して煙草をくわえる。その動作を見ながらも師弟さん達は飴村くんが気になるのか「どうします?」と聞いている。それに左馬刻さんは手を軽く振って放っておけとだけ煙草を吹かしながら言う。問題…というか気になる部分はそれだけのようで夏祭りが始まったらまた来ると師弟さん達に伝えて左馬刻さんと僕は立ち並ぶ出店の前から離れる。今日は左馬刻さんに久し振りにメールして返事が返ってきて会う事になったのだけどとにかく真夏なので外は暑く、この暑さの中で屋台の準備をするのも凄いなと思ったけど彼が会うと言ってくれたのにも驚いた。最近会ってなかったから。だから嬉しかった…けど。

左馬刻さんの家に着くとクーラーが効率良く動いて冷気が循環して涼しくなってきた所で左馬刻さんが珈琲を淹れてくれる。珈琲豆の良い香りが部屋を満たして彼が珈琲を淹れてくれている間に僕はリビングの棚を見る。そこには合歓さんやMTCの三人や師弟さんとの写真がコルク板で飾ってあったりその中に一人見知らぬ女性の姿を見つける。左馬刻さんと二人で写っており寄り添って幸せそうにしている。


「湊」


声を掛けられてハッと我に戻る。横を向けば左馬刻さんがいて何か言葉を返そうと思ったけど上手く言葉が出なくて床を唯見つめる。このままこの空気でいるわけにはいかないと「珈琲頂きます」と席につく。
席について彼の淹れてくれた珈琲を飲む。でも何故か今は何も感じなかった。さっきまで香りが良いとか味の想像をしていたのにもう何も考えられなくなっていた。何かが切り替わる前のような。波が全てを流していくような。
写真の女性をもう一度見る。


「綺麗な方ですね」
「…中身は我儘で怒りっぽくて無駄に頑固だ」


彼女を思い出しているのか左馬刻さんの表情が柔らかくなる。それを見てやはりまだ僕には彼に未練があってしまっていると気付く。


「でも一人じゃいられねぇ寂しがり屋な所もあるから憎めねぇ」
「………」
「…湊」
「今夜の夏祭り…彼女さんと一緒に行くんですよね」


気まずい雰囲気になるのは承知で言葉にすると左馬刻さんはそれ以上言葉が見つからないのか黙ってしまう。僕はわざとらしくスマホの時計を見るフリをして「お邪魔しました」と席を立つ。その後に左馬刻さんも続いてついて来ると玄関の扉を開けようとしてその手を掴まれる。


「今更引き留めるんですか」
「……」
「貴方の心の大事な部分には彼女さんがいて…僕では無いでしょう」


左馬刻の掴んでいる手を柔く解くと扉を開けて外に出る。熱気に身が包まれるけど今はその暑さとかはどうでも良かった。
立ち止まる。スマホが鳴ってSMSメールを見る。左馬刻さんからで短いメッセージが載っていた。


(湊と過ごした夏、ずっと覚えてる)


メッセージを読んで彼の住むマンションの上階を見上げる。ベランダで左馬刻さんが見下ろしている。その目と目が合って彼の元に押し戻りそうな感情をぐっと堪えて僕は前へと歩き出した。




(25.08.03)



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