hpmi (Ⅱ)


唯ライブをするだけでは勿体ないと企画者一同から声が上がりチャリティ企画という形でライブをイケブクロでやる事になりイケブクロの人気者である山田三兄弟達が俺の伝手で参加する事になった。
ライブ当日。ステージ裏でパフォーマンスを眺めていたらあっという間に午前の部が終わると歌とダンスで盛り上げた三人がステージから休憩に入る為、降りてくる。その方へ俺はさっき買ったコーラを手に近付くと一郎達は明るい表情で傍まで来てくれる。


「盛況してるじゃねぇか」
「ぼちぼちです」
「これの何処がぼちぼちなんだよ。…お前らの人気も上昇する一方だな」


素直に褒めると照れっぽくしてる二郎と三郎の頭を撫でて一郎の頭も撫でてやる。一郎は恥ずかしがっていたが聞く耳持たずでクシャクシャと髪を掻き回す。こういう若いうちから色んな事を体験していく事は良い事だと思う。ほんの一握りのMCしかステージに上がれずファンに恵まれない世界で此奴はイケブクロの頂点に君臨している。それは本当に凄い事で伸びしろがあって良い事だと思う。見てきた今までの事を思い出しながらしみじみと考えていると二郎が俺の服の裾を引っ張る。愛嬌のある垂れ目と目が合う。


「なぁ、朱狼さんのおっさんもステージ上がろうぜ!」
「俺か?俺はなぁ…拍手の代わりにブーイングをもらうのが目に見えてんなぁ」
「そんな事言わないでよ」
「二郎、無理に誘うんじゃない。…すみません」
「はっは!気にすんな。此処に集まったのはほぼお前さん達目当てな筈だから楽しく歌ってくれや」


コーラ缶を傾けて飲もうとすると「でも」と一郎が言葉を紡ごうとするのにその動作を止める。


「この企画考えたの朱狼さんですよね。素早らしい企画だと思います」
「かしこまって俺に褒めても何も出ねぇぜ」


一郎と向かい合って一郎はまだ無邪気さが残る笑顔で笑う。俺もそれに笑い返しているとスタッフが後半のライブの開始を告げにやって来る。三人は「午後もこの調子で頑張りますね」と言い俺はそれに目一杯楽しめと返す。
三兄弟がステージに上がると一斉に声が上がり盛り上がり出す。ファン数も前と比べると多くなってきていてこれからが楽しみな奴だなんて思いながらコーラ缶を手に椅子に腰掛けステージが聴こえる彼らの声を耳に入れていた。



***



午前、午後共にライブが終わるとステージ裏で見守ってくれていたと思っていた朱狼さんがいない事に気付く。スタッフに聞いて探し回るが見つからず何処に行ったんだと困り果てるよりも先に不意に会場側の人気のない街灯下にいる事に気付く。そこで夜空を見上げている朱狼さんを見つけて俺は声を掛ける事はせず隣に寄ると朱狼さんは俺に気付いて此方を向く。


「朱狼さん、今日は有り難う御座いました」
「ああ。良かったぜ三人共」


朱狼さんはそう言ってくれると柔らかく笑って夜空の方に視線を戻す。


「俺はお前達の歌が好きだ。…これからもこの調子で歌っていけよな」
「あの」
「ちゃんと今の言葉覚えておけよ」


俺の頭を撫でてくれる手。何時も傍で当たり前のようにあった。けどそれももう遠ざかっていくような、そんな寂しい感情に包まれる。唯の予感だがけれどでも俺達が出来上がったのは朱狼さんがいてくれてこそでもう既にBBの大切な一部だと思っているから。
弟達が会場から駆けて来るのが見えて二人の姿が街灯下にぼんやりと照らし出されて俺は「よし」と一声口にする。


「じゃあ今からどっかで打ち上げといくか」
「うん!」
「はい!」


二郎と三郎の肩に手を置いて三人でくっつき合って山田サンドを作ると朱狼さんも後に続いて来てくれる。今日一日の出来事も思い出の一つとして俺はずっと忘れないだろう。




(25.07.26)



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