hpmi (Ⅱ)
猛暑の日が続き心まで茹だるような熱地獄の中で空腹まで襲ってくる。こういう時は寝ときゃ何とか治るだろうとベンチに寝転がる。こんな暑い中で外でベンチ使用する奴なんてそんなにいないし独占したって構いやしないと上手く生きてく術を考えてる俺は理鶯さんよりサバイバーなんじゃないかってたまに思う。でも自爆に出る方のサバイバーだ。分かってる。こんな時に賭けに行くような奴なんだ俺は。
「あの」
直射日光から避けるように手で顔を隠して目を閉じていると声が掛かり手を退けて声の主の方へ目線を向ける。俺よりかは歳下のまだ学生くらいの青年が俺を見下ろしている。逆光でよく顔が見えないがこの暑さの中で明らかホームレスの俺に話し掛けるなんて変わり者かと思っていると青年は生きてますかと率直に聞いてくる。
「死んでる」
「いや、生きてますよね」
起き上がり着ている黒シャツの襟首を掴んでパタパタと扇ぐ。ベンチの上で胡座をかくと青年の手にある袋が目に留まりその袋の中身が光に透けて弁当が入っているのが何となく分かる。それをガン見していると青年は袋を少し上に上げて「唐揚げ弁当です」と言う。
「唐揚げ〜!丁度唐揚げの夢見てたんだよな」
「どんな夢ですか」
「ここで突っ立ってたら弁当保たねぇだろ」
「僕の家知りませんよね」
「知らねぇ」
胡座の脚の間に手を置いて弁当を見せてくれるのか袋の中を覗き込もうとするが首を引っ込める。青年は直ぐ側のマンションだと教えてくれるが個人情報簡単に教えんなよと言い返してやれば困った様に口元を結ぶ。俺はそれに何時もの乱数達とのノリでガオーと獣の手を作って笑ってみせると青年は小さく笑む。
「この弁当、あげます」
「は?いいって。食えよ」
「食べちゃって下さい。先に」
先?と疑問が浮かぶ。それでも青年はベンチ横の自販機でミネラルウォーターを買い出す。そして「僕も自分の分買って来ます」と言う。確かにコンビニは直ぐ近くにあるがこんなに安易に弁当が手に入るなんてしかも知らねぇ歳下の奴から貰うなんてと俺がどんなに有名なMCでも早々無いだろと思っていると青年は見透かした様に気にしないでと笑んだまま水のペットボトルと弁当を渡してくる。
「弁当くらい買えますから」
「………」
間が出来る。少ししてこのままでいる訳にもいかず箸を割って差し出された弁当の蓋を開けて唐揚げを口に入れる。噛んで食べた後「金持ちでもそうじゃなくても親に断りも無く使うな」と金銭の話を驚く程に真面目に語ると青年は俺の隣に腰掛ける。
「半分食うから半分は持って帰って食え」
「…この後用事とかあるんですか」
「は?何で」
「無いならいいんです。…ちょっと構いたかっただけなので」
ご飯と肉片を一緒に飲み込むと半分になってきた所で食べる手を止め蓋を閉める。それを見て何処か慌てた様子で何で、と呟き青年は眉を下げる。それでも何をしたくてここに今いるのか分かってはいた。
「俺の事心配してコンビニ飯わざわざ買って来たんだろ?」
「…何でそう思うんですか」
「そこのマンションから俺の事見えるだろうし」
青年は縦に馬鹿高い上層を見上げる。そんなリアクションとって住んでる場所教えてるようなもんじゃねぇか警戒心が無いなと思いながら俺は立ち上がる。青年のお陰で生き返った。
「コンビニ行こうぜ。暑ちぃけど一緒に飯くらい食うから」
「………」
「何だ。熱中症か?」
「そうかもしれません」
二人でコンビニ向かって歩み出す。まだ少し立ち眩みがしたがさっきよりかは全然良い。そんな俺の隣を歩きながら青年は俺と目を合わせようとしないまま「僕ん家で食べますか?」と聞いてくる。それに俺は笑う。
「言ったばかりだろ。何するか分からねぇぞ?」
「…そうですか」
そうだよと言って両手でまた獣の手を作ると青年は何処か嬉しそうに笑い返していた。
(25.07.21)
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