hpmi (Ⅱ)
夜架と知り合ったのは今から数年も前の事。寂雷とも親しい此奴は俺がラップバトルで活躍する度に応援してくれていて何かとお互い心の支えになっていた。けど突然、夜架から弁護士の仕事の話を持ち出されて何かあったのかと聞くと困り事があるようでどうも聞くからに複雑なものだった。その事について詳しく話をするのか夜架は俺と会う約束をしてナゴヤまで来て俺の行きつけの喫茶店に入り二人取り敢えず珈琲を頼むと向かい合ったまま夜架が話し出すのを待つ。それでも中々話さない夜架に俺は此方から話しやすいように持っていってやる。
「で。本題だが…この勝負、勝てねぇ事はねぇよ」
「………」
「唯、その分」
珈琲のカップの中をひたすら見つめていた夜架が顔を上げて俺を見る。決心したような揺らぎが残ってるような少し読めない眼差しにこの場の空気が引き込まれていく。
「ここまで助力して下さる所本当に申し訳無いのですが…これ以上大事にはしたくないんです」
沈黙が出来る。決心の言葉を聞いたというのに俺自身がまだ戸惑っていてウェイトレスが隣の席の客に接客し始めるのをチラと見て俺もカップの中を見下ろし自分は今回この娘の助けにはなれない事を知ると変に納得のいかない心と脱力感があり溜息をついてしまう。
「…そうか」
「お騒がせしてしまって申し訳ありません」
「いや、気にすんなよ。俺がどうこう仕事の話で決める側じゃねぇからな。それより」
珈琲を一口飲んで思ってたのと違う味にマスターが変わったかとカウンターの方を見るとマスターが自分の店の跡取り息子なのかそいつに珈琲の淹れ方を一から伝授してる姿が見える。それを見てからソーサーにカップを置く。
「俺が今回、法で助力しない分お前は何とかして一人で戦う事になるが…本当にいいのか」
「はい。ご心配はいりません」
夜架の視線が窓の外を向きすっかり暗くなったここから見える闇を纏った夜街を見ながら小さく無理に笑む口元。
「足掻く所まで足掻いてやります。それには獄さんに迷惑は掛けないと決めたんです」
夜架の瞳に涙が薄っすらと溜まっていく。この先が見えない不安と助けを求められない状況に藻掻く苦しみ。それを俺は今までの仕事で会った依頼人から見たことは無い事は無かったから分かる。此奴を仕掛けてくる奴等がこの先多くいても歩き生き続けなくちゃいけねぇってことを。それを乗り越えれば未来はあるのかと確信もはっきりしないが誰に決められるものじゃねぇ。未来は自分で切り開いていくものだ。それでもそれに手を差し述べる奴がいても完全に拒まれてるわけではない。
「迷惑なんて思っちゃいねぇよ」
「それでも」
「分かったよ。それ以上…この事について言わねぇでいいから」
夜架の重なってる両手を包み込んでやる。こんなに不安で押し潰されそうになってる此奴の手をとってやる存在が法という仕事に近い俺以外に傍にいるだろうか。俺は、こんな時に何もしてやれねぇのか。そう思うとやりきれなく、夜架を追い詰めてた組織が許せない感情は強まっては負のループに陥る。
「折れそうになった時は何時でも口に出せ。溜め込むな。愚痴ぐらいは悪い事じゃねぇ。だから法でどうにも助力出来なくとも俺を違う形でもいいから少しでも頼ってくれ」
夜架の瞳に溜まってた涙粒が溢れ落ちる。良い奴に限ってどうしようもねぇのにどん底に落とされる。そういう理不尽な世界が俺はどうしても許せねぇ。目の前に光が薄れていくのを唯見ているだけなんて。俺に出来る事は何かと考える。今は傍で此奴の心にそっと寄り添う事なのだろう。
(25.07.18)
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