hpmi
レンタルショップで低価格で数枚お得にレンタル出来ると言う期間限定シーズンに借りてきたディスクの中に乱数が入れた恋愛物に紛れて帝統がさり気なく入れたのかホラー映画が一枚あった。そのディスクを見つけてしまった乱数の機嫌の悪さときたら物凄い事。ディスクの表面の幽霊と顔を見合わせるなりソファーで隣で座ってる帝統にクッションを投げつけそれをぶん回し始める。ホラー映画のディスクを引っ掴んでどっかにやろうとしてるその手よりも先に帝統がディスクをハードの中の差込口の中に入れてしまう。これはやばいと思った矢先にさっきまでのクッションをズタボロにした威圧はどうしたのかと思う程乱数は帝統に飛び付くように抱きつく。帝統は「よっしゃあ!」と何故か喜んでいる。
「乱数ぁー。おーよしよし。怖いよなー」
「帝統…」
「怖ぇよ!目が据わってる!」
「帝統のバカバカ!何で嫌がってるのにつけちゃうの!バカぁ!」
クッションの端を引っ掴んでバシバシと叩きまくる乱数に帝統はひでぇと叫び私に助けを求める目を向けてくるがここまでやってしまうと取り返しのつかない状態である。それより乱数より帝統よりクッションの方が心配なのだが。これはしっかりした素材で出来た値打ち物なのに。どうしたものか。
「ちょ待てよ!ほらそんなに出てこないだろ!話の内容もそこまで悪くない」
「驚かせる内容があるから怖さが増すんじゃん!そこはいらないんだよ!」
「乱数」
震えてるしがみついてる乱数を帝統はギュと包み込むように抱きしめる。不機嫌で怯えてる顔のままだがその調子だ帝統。クッションをこれ以上犠牲に出さない為にも。
帝統の宥め方が何となく上手いのか乱数はグスと鼻を啜りながら抱きしめ返す。
「これで怖くねぇだろ?」
「うん。…僕と帝統の愛でお化けもどっか行っちゃうもんね」
「おう。それにホラー体質になっとけばこの先、困る事もねぇだろ?」
「それもそうだけど…うゔ」
それなりに怖い描写や雰囲気に差し掛かってきたのかビクと帝統の腕の中で肩を震わす乱数。私はそれだけ見て仲間外れにされて少し面白くなく感じて部屋の灯りを消してみる。暗くなり慌てるのはやはり乱数か。
「え、なに何?!」
「おい停電か!?」
「うらめしや」
「ぎにゃあ!?出たぁあー!?」
「ちょ、驚き過ぎですよ」
怖がってる乱数を差し置いて自分が一番怖がってる帝統に少し引いてしまう。しかもよく分からない呻き声まで上げて。私はテッパンの顎下から当てている懐中電灯の光を消して声だけで正体明かしをしてやると「見えなくなると余計に怖いんだよ消すな」と帝統は私の手にある懐中電灯のボタンを手探りで押してまた灯をつける。するとさっきまで震えていた乱数が笑い出す。
「帝統、驚き過ぎでしょ」
「お前は怖がってねぇのかよ!」
「こういうのは怖くないよ。だって幻太郎だし」
「ああ…まあな。って、うお」
「ひぃ!」
テレビに注目する。ユラユラとノイズ等が走り二重に揺れる画面。どうやら帝統は定番の名ホラー映画を借りてきたらしく丁度あの「 見てはいけないビデオの映像」部分を流しているのか少しグロい描写やストーリーに意味のあるシーンが次々に出てくる。私は話を最後まで知っているがこの二人は観るのが初めてのようであの乱数が見入ってしまうのはそこまで作り込まれている証拠だと思う。
「やだやだやだ!怖い!井戸?井戸?!」
「や、やべぇガチで怖ぇぞ」
そして怯える二人に追い討ちをかけるようにけたたましく鳴り響く電話。テレビの中からなので怖くはないとは思うのにいきなり鳴ったから驚いたのか本気で怖がる二人に私は部屋の灯を消したままなのを思い出してつけてあげる。
その後二人は生気が抜けたかのように幽霊が井戸から這い上がってくるシーンを見つめていた。このシーンが一番怖い筈なのにあまり怖がっておらずちょっと二人がよく分からなくなってしまう。
ビデオを途中で止めてあげる。この二人には刺激が強すぎた様だった。
(24.06.23)
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