第05話 ピエールと紐パンツ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そんな感じでイリヤの眞魔国2日目がスタートした。
普段、夜中まで執務をしている為、朝が遅いグウェンダルや、低血圧のヴォルフラムも俺たちに合わせて朝食の席にいた。今日は朝から天気が良いので中庭での朝食を希望した俺にイリヤは嬉しそうに庭を眺めていた。
昨日と同じで同席したギュンターとヨザックも中庭での食事のせいか畏まった食事にならず特にヨザックはホッとした様子だった。
さっきは、コンラッドの怒りが恐ろしくて考える余裕も無かったが、イリヤとヨザックはいつの間に一緒に風呂に入るほど仲良くなったのだろう…?しかもパンツの話をするくらいに……。
ふとイリヤをみると優雅にスープを口に運んでいるところだった。
あぁ…黙ってれば最高なのに…。
いや、友達としては彼の男前な気質は抜群なんだが、彼の見た目が美し過ぎる故にどうしても邪な期待をしてしまう。
有「そうだ、イリヤ今日はどうする?良かったら城下でも…」
李「いや、必要ない」
有「じゃあ、乗馬でもする?綺麗な場所も沢山あるんだぜっ!」
本当は水が涸れてしまった村を一番イリヤに見て欲しかったが、俺は約束の時間までその話を避ける事にした。無理やり連れて来て魔族の都合を押し付けたくは無かったし、何よりも今はこの眞魔国と皆の事を少しでも理解して好きになってもらいたいたかったからだ。
ところがイリヤの返事は素っ気無いものだった。
李「いや、それもいい」
有「え?あ、じゃあ…何処か行きたい場所とかあるかな?言ってくれれば…」
李「いや、俺の事は気にするな。お前達はいつもと変わらない日常を送ってくれ」
「「「「「「…………」」」」」」
有「え、でも、案内とか…」
李「どうせ誰かしら俺に就いているんだろ?その時にでも案内してもらう」
有「え?」
村「そっか、んじゃ、僕は眞王廟の方に行ってくるよ。ヨザック、後で馬車の手配を頼むよ」
ヨ「承知致しました」
有「え?ちょっ村田、友達を置いてくのかよ!?」
李「構わん、俺の所為でお前達の執務が滞っては困るからな」
村「そうだよ渋谷、たまには自分の仕事をキチンとやらないと。執務も立派な王の仕事だよ」
有「う゛ぅっυ」
ヴ「日頃、お前がサボっているからこうなるんだ!へなちょこめ!」
有「へなちょこゆーなっ!」
グ「…確かに、そうして戴けるのなら助かる。魔王陛下のサインが必要な書類が既に溜まっている」
ギ「あぁ、聖下のお優しいお心遣いに私、感服しております。通常通りの御予定ですと…陛下、執務の前に午前中の魔族語のお勉強が1時間…その後、執務をして戴き昼食を取られた後、午後は眞魔国の歴史のお勉強が2時間、休憩を取られましてから夕方まで執務となっております」
有「え゛ぇ――っ!?それじゃ、俺、全然イリヤを案内出来ないじゃん」
李「お前、俺の案内より国の仕事を優先させろよ」
有「う゛…っ。けどさ、やっぱり自分の国なら俺が案内したいっていうか…」
李「………そうか、この国の王は大切な自分の仕事を人に押し付けるのか、ふぅん…」
有「え゛…っυもしかして、それって俺の評価!?わ゛―――っっ、イリヤちょっと待った!やります!やります!」
俺が慌てて訂正すると、イリヤはジロっと睨む様に俺を見た。
李「………いいかユーリ、俺の案内は此処に居る誰でも出来る。むしろ地球で育ったお前よりも此処で育った、こいつ等の方が詳しい位だろ?だけど、お前が受け持つ仕事はお前にしか出来ない事だ。勉強だって、お前の為にわざわざ自分の時間を割いて教えてくれるんだ。お前はそれに答える義務がある」
有「うん…そうだよな。ごめん」
「「「「「「…………」」」」」」
李「それに、こうやって食事を摂ってる間は一緒に居るんだし、その時に色々と話してくれればいいだろ?」
有「イリヤ…、ありがとう。うん、俺頑張るよ!」
俺達が朝食を終え、食後のティータイムに入った頃、一羽の鳩がギュンターの肩に止まった。
有「あれ?それって白鳩便?」
ギ「はい、難民の村に使わせた者からのようですね…」
カサカサと手紙を広げてギュンターは読み始めた。
ギ「こ、これは!」
グ「どうした?」
今度はギュンターから手紙を受け取ったグウェンダルがギュンターと同じ台詞を言った。
グ「こ、これは…」
有「何?どうした?」
ギ「はい、先程もお伝えした通り、これは難民の村に使わした者からの報告ですが…村に水が戻ったと…」
「「「「「水が戻った!?」」」」」
ギ「これによると、今まで我々が認知していた箇所総ての泉に水が戻ったと書いてあります。このまま順調に泉に水が戻れば明日には水路にも水が行き届くだろうと…」
魔族は一斉にイリヤを見た。イリヤは然程驚きもせずお茶を飲んでいる。
皆からの視線を浴び怪訝そうにイリヤは口を開いた。
李「何だよ?」
有「イリヤ、もしかして水を元に戻してくれたのか!?」
イリヤは自分を見つめる魔族一人ひとりを見渡すと俺の質問に答えた。
李「俺は何もしてねぇよ」
有「で、でも、昨日まで涸れていた水がいきなり戻るなんて、皆が魔力を使っても、俺が魔力を使っても、どうにもならなかったのに…」
村「イリヤ、本当に何もしていないのかい?」
「「「「「…………」」」」」
李「あぁ、何もしていないよ」
イリヤの言葉を聞いて困惑する一同にイリヤが話しを続けた。
李「ただ……」
有「えっ!?」
李「俺と此処の…眞魔国の波長が合っただけだ」
有「波長?」
コ「どういう事ですか?」
李「どうって…だから、眞魔国の自然と俺の力の波長が合うって事だよ」
村「つまり、君が此処に来た事によって、眞魔国の自然が反応したって事かい?」
李「あぁ」
ヴ「おい、アレを見ろ!」
話の途中でヴォルフラムが何かを指差した。
有「え?何?」
コ「これは…」
ヨ「嘘だろ!?」
今、俺たちの目に映っているのはまるで映画の1シーンをスローモーションで再生させた様な状況だった。
血盟城にある花が総て咲き始めたのだ。
花壇にあるまだその時期でない植物たちまでもが一斉に満開になって色鮮やかに咲き誇っていく。まるで、夢の世界にいるみたいだった。魔族がその光景に驚きを隠せないでいてもイリヤは変わらず静かにお茶を飲んでいる。
コ「コレが精霊使いの力…」
グ「何の力も使わずに、存在だけでここまでの威力があるとは…」
精霊使いの力をまざまざと見せつけられた魔族達は改めてイリヤの存在の大きさを知らされた。
村「凄いな…契約をしなくてもコレだけの影響力があるなんて」
有「つまり、イリヤが此処に居る間は水の涸れが治まってるって事だよな?」
ヴ「へなちょこなお前にしては珍しく察しがいいな」
有「へなちょこは余計だ!」
こんな力を見せられたらますます契約したい!
有「イリヤ、あのさ…」
李「これで、お前達の焦る気も少しは治まるだろ?あと1日半、お互いゆっくり考えようぜ!」
村「そうだね、じゃあ僕はそろそろ行くよ。ヨザック、眞王廟まで送って」
ヨ「はい」
有「え?む、村田!?」
村「ほら、渋谷はフォン・クライスト卿とお勉強、お勉強!」
ギ「さ、陛下参りましょう」
有「え゛ぇっ!?今?今からぁぁぁ!?」
こんな時に勉強なんてっ、頭に入る訳ないじゃぁぁぁぁん!!
俺の叫びも虚しく、俺はギュンターに引き摺られ強制的に朝食会は幕を閉じた。
俺、まだお茶飲んでないよーっっ!!
.