第04話 生きとし 生けるもの
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村田達が部屋に戻って来たのはイリヤを部屋に案内してから2時間位だった。
どんな話をしたのかの問いに村田は『2人のヒ・ミ・ツだよ~v』とか言って内容までは話さなかった。
そんな言い方をしたらコンラッドがブラックモードになるかと思ったがコンラッドはいつもの爽やか名付け親の笑顔を浮かべていた。
……お帰りコンラッド、やっといつもの君に出会えたね。
まぁ、村田の表情を見る限りプールに突き落した事は許してもらえたらしい。
夕食の時間になってイリヤを囲んで晩餐会が開かれた。
堅苦しいのは嫌だと言うイリヤの意見に俺も賛成して、本来なら一緒に食事をする事もない王佐のギュンターや、お庭番のヨザックも一緒に食事を取る事になった。
うん。いいよね!俺もイリヤの考え方が好きだ。食事はやっぱり皆で食べる方が美味いに決まってる。
ヨザックは慣れない食事の風景に少しだけ居心地が悪そうにしているけど俺的には、旅先でもないと一緒に食事をする機会がないヨザックとの食事は嬉しかった。
有「そういえばさ、イリヤって好き嫌いとかあるの?」
唐突に聞いた俺の言葉に、丁度パンを口に入れたイリヤがちょっと待てという様に掌を俺に見せた。
口に物を入れて喋らないお上品さはイリヤの美しさを裏切らない。
近くにあった葡萄酒を一口飲んでイリヤは口を開いた。
李「そうだな、特に嫌いな物はないな…あぁ、でも差し入れの弁当は嫌いと言うより怖いな」
有「差し入れの弁当?」
李「あの米の上に敷き詰まれたピンク色のヤツは特に…」
有「米の上に敷き詰まれたピンク…って田麩のこと?」
李「俺は食べられれば特に何でもいいんだが、アレがハートに描かれた弁当は特に気をつける様にしている」
有「気をつけるって…何を?」
村「イリヤは学園のアイドル的存在だからファンの子達が毎日、手作り弁当を持って来るんだよ」
有「手作り弁当って…はぁ!?だって、お前らが通ってるのって男子校なんだろ!?」
村「そうだよ」
有「だって、手作り弁当は、女の子の特権だろ!?『やぁ~ん玉子焼き焦がしちゃったぁ~v』とか『今日はタコさんウィンナーだぞっv』とか、可愛い彼女が恥じらいながら毎日作ってくれる弁当だろっ!?」
李「何だそれ?ゆーちゃんの理想か?」
村「あぁ~渋谷って『はいっ、あ~んv』とか好きそうだよね~」
有「なっ、ちが…っ」
ヴ「何だユーリ、僕に食べさせて欲しいのか?」
有「ちーがーうー!!」
李「皆が居るからって照れなくたっていいんだぞ、ゆーちゃん」
ヴ「そうだぞユーリ、恥ずかしがるなんて…ん?そうか、分かったぞ!ユーリは僕に食べさせたいんだな!」
村「ひゅ~ひゅ~だぞ渋谷!」
有「村田、お前のその突っ込みはどうしていつも年代を感じるんだ…?」
コ「それで、イリヤは毎日誰かの手作り弁当を食べていたんですか?」
李「最初の頃はな、貰う数が多いから常任委員と、生徒会のメンバーと、親衛隊と皆で分けて…余った分は家に持ち帰って節約になるから夕食や次の日に食べてたんだけど…」
村「全校生徒の大半がファンみたいな感じだったから、差し入れの数も多くてね。それに、全部が安全とは言えないし、そのまま食べるのは危険だから常任委員と生徒会と親衛隊で手分けして安全を確認してからイリヤに渡していたんだよ」
有「安全とは言えないって…?」
「「「「「…………」」」」」
魔族が見守る中、村田とイリヤは互いの目を見ながら何とも言えない顔をした。
李「……………んだ」
「「「「「「え……?」」」」」」
李「だから……弁当に一服盛られたんだ…その…媚薬を……」
「「「「「「…………」」」」」」
しぃ――――――――ん…
一服…盛られたんだ…
……媚薬を…?
ガタ―――――――ン!!
コ「イリヤ、即刻そんな輩はこの俺が叩き潰して来ます!」
婚約者の話を聞いてコンラッドが剣を抜きながら取り乱した。
李「落ち着けコンラート」
コ「ですが…」
李「ほら」
コ「…………」
「「「「「「「…………」」」」」」」
皿にあった料理を魔族ご愛用の先割れスプーンにのせイリヤはコンラッドに差し出した。
李「コンラート、あ~んv」
ぱくっ。っとイリヤの指まで喰らいつきそうな勢いでコンラッドは“あ~んv”され、大人しく席についた。
思わずつられて魔族全員が口を開けてしまった、そんな姿を見たコンラッドは勝ち誇った様な顔でニヤけている。
……畜生、ちょっぴり羨ましいと思ってしまった。
イリヤは男だ、男だ、男だ…惑わされるな俺。
ふと、イリヤを見ると今度はフルーツをコンラッドに食べさせていた。
コ「貴方に食べさせて貰うとより一層美味しく感じますねv」
李「そうか、これも食べるか?」
コ「はいv」
何だか餌付けみたいだ……
ちょっと楽しそうにイリヤはコンラッドの口に運んでいる。
有「あ、あのさ、それでその媚薬入りの弁当は…?」
李「俺は食ってない」
有「え?」
村「さっきも言った様に、プレゼントの中には危ない物もあるからね。たとえ手作り弁当でも一応中身をチェックして安全そうなやつだけを皆で食べるんだけど、中には分かりずらいのもあって…」
李「たまたま、ソレに当たった奴が大変な事になってな…」
有「男が男に手作り弁当をって…媚薬まで入れるなんて、男子校って…」
村「皆、お年頃だしねぇ。特にウチの学園は勉強のストレスが溜まりやすいから、そうゆう対象(女子)が身近にいないから、どうしても見目麗しい生徒に向けられるんだ。まぁ、イリヤはその中でも特例だけどね」
有「美人に生まれるのも大変なんだな…」
李「全く、あの弁当の一件以来、常任委員から弁当禁止令が出てな、差し入れ弁当が廃止された俺は已むなく学食を食う事になったんだ。今までは夏とか冬とか長期の休みに入らない限り、食費の心配はしなくて良かったのに…もしくは、お前がテストであんな訂正しなきゃ良かったんだ!」
有「テスト?」
村「首席には特別優遇で半年分の学食券が貰えるんだよ」
李「そうだ、お前がテスト問題の間違いを訂正したおかげで俺は2位になった」
イリヤの話と村田の話をまとめるとこうだった。
学年トップの争いはいつも村田とイリヤの対決で、普段、全科目満点な2人はダブル1位で、特別優遇も半分コしていたらしい。
だが、前回のテストで村田は問題に間違いを見つけ指摘した分、プラス5点もらえたらしい。
テスト結果で村田と同点だったイリヤからすればそんな事で2位なんて、と怒っていた。
ただ、彼の怒りの理由は2位になった事ではなく、学食券が貰えなかった事らしいが……。
ギ「あぁ、素晴らしい!!美貌だけではなく、猊下に引けを取らない聡明さ!流石は聖下です!」
グ「確かに、頭脳派の人脈は必要だ…」
グウェンダル…それは日頃、執務を押し付けている俺への嫌味でしょうか…?
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