第03話 マのつく婚約者
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し―――――――ん・・・
イリヤの言葉に再び部屋の空気が凍りついた。
村「イリヤ?」
有「確かに…こっちの世界に来てからの数時間、イリヤにとっては嫌な事だらけかもしれないけど…けどっ、イリヤの力が必要なんだ!この国に住む沢山の人の命が掛かってる!」
李「そんなの…お前たちの都合だろ?」
ヴ「なっ!?お前には魔族の血が流れているんだぞ!!」
李「関係ない。俺に何の血が流れていようがな」
グ「…………」
さっきのデレデレモードから一気に皆の顔が険しくなった。グウェンダルなんか本物の魔王みたいになって眉間の皺も増量中だ!流石のコンラッドも国の危機に困惑を隠せないでいる。ヨザックなんかいつでも切り掛かりそうな顔付きで睨んでいる。
有「ややややっぱり、色々と不快にさせちゃったらかな?あぁ~っっ、どうしよ~俺たちの失態で眞魔国の皆さんの命がぁぁぁっっ」
村「落ち着いて渋谷」
ヴ「これが落ち着いて居られる事かっ!?おい貴様!魔族の血を継いでいながら魔族を助けないとはどういう事か説明しろ!」
李「全く…そんなに気性が激しいんじゃ話にならないな」
ヴ「何だと!?」
李「おい、グウェン」
ヴ「僕を無視するなぁぁぁっっ」
グ「何だ?」
イリヤの呼び掛けに魔王の表層で睨みを利かせたグウェンダルが地獄の底から地響させたように答えた。
李「見たところ、王が不在の場合はグウェンと…そこの汁塗れが代わりをしている様だが…他の奴は気性が荒いか邪気が入っているから話にならない。俺は今からお前と話す」
グ「…………」
尤もだ。と言わんばかりにグウェンダルが黙ってイリヤを見つめた。
グウェン…仮にも部下なんだからちょっとくらい否定してくれたって…王様の俺の立場はさっきから形無しだ。
李「俺は何も契約しないとは言ってない」
ぴたっ。とイリヤの言葉に全員が止まった。
有「イリヤ?」
俺の呼び掛けも虚しくイリヤはグウェンダルから目を外さない。
李「いくら魔族の血が流れていたって、今日まで全く知らない奴がいきなり現れて“自分が精霊使いだ”と言ってこの国に居座るなんて、魔族の危機にそう簡単に決められたら…ソレはソレで不快だろ?」
グ「…………」
有「え?何で?願ったり叶ったりなんじゃ…」
村「渋谷、黙って!」
有「ゴメンナサイ……」
俺たちはやっと落ち着きを戻し、イリヤの言葉に耳を向けた。
李「お前たちに都合が有る様に、俺にも都合がある。だから……少し考えさせてくれ」
グ「……どれくらいだ?」
李「…3日、今日を入れて3日あれば充分だ」
グ「……いいだろう」
李「俺はその間、自分なりにこの国と、お前たちの素行を見極める。だからお前たちも本当に俺でいいのかを見極めればいい」
グ「……あぁ」
李「よし。じゃあ、この話の続きは3日後の同じ時間に此処で」
グ「解った。おい、コンラート」
コ「はい。イリヤお部屋へ御案内しますv」
李「あぁ」
コンラッドに腰を抱かれ部屋を出ようとした時に、イリヤが村田に声を掛けた。
李「おい、村田」
村「ん?なぁに?」
李「お前にはまだ話がある。一緒に来い」
村「え?」
有無を言わせない強い眼力に、誰もが「あぁ…そういえば、まだプールに突落した話しが終わってなかったよね…」と村田に哀れみの目を向けていた。
とりあえず村田、説明無しに突落したお前が悪い。がっちり怒られてこい。
村田に付いてヨザックも部屋を出て行ってしまった。
まだ警戒しているのか、それともさっき自分の眼力と勘で見極めろと言われたからか、ヨザックの真意は俺には分からなかったけど……俺はさっきイリヤが“俺のことも見極めろ”と言った言葉に昔、初めての晩餐会で俺がグウェンダルに言われた言葉を思い出していた。
『双黒だろうが、なんだろうが魔王に立たぬなら何の意味もない。魔王として生きる覚悟がないのなら今すぐ元の世界へお帰り下さい―――心から願うよ。民の期待が高まらぬうちに我々の前から消えてくれ―――』
あの時、俺は俺自身の事で頭がいっぱいだった。
何てところに来てしまったのだろうと、俺がそんな浅はかな思いの時に、グウェンダルは誰よりもこの国とこの国に住む人たちの事を考えていた。
今も、きっとそうに違いない。俺たちがバカみたいに騒いで居る時、グウェンダルはきっと真剣に話を聞いていた…まぁ、イリヤの魅力に顔は赤くなってたけど……でも、眞魔国を思う気持ちは誰よりも強いはずだ。
ただ、俺の時と違うのはイリヤの方から見極めろと言われた事だ。
その時点で、きっとグウェンダルの中にイリヤは聖下として成立しているだろう。
周りには解りづらい彼のそんな不器用でカッコイイ生き方が俺は大好きだ。
俺がじっと見つめていたせいかグウェンダルがこっちを見た。
グ「何だ?」
有「えっ、いやいや何でも……グウェンダル、イリヤのこと結構認めてるだろ?」
グ「………まだ、精霊使いとしての力をみてないから何とも言えん」
有「ふ~ん…」
明らかに照れ隠しにも見えたが、日頃お世話になっているのでイジワルはこれくらいにしておこう。
兎に角、これから3日間、イリヤが眞魔国をどう見てくれるのか……俺が大好きなこの国とこの国の人たちが、どうかイリヤにも大切な仲間で、大切な場所になりますように。
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