第01話 涸れた水
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どもっ。第27代魔王をやってる渋谷有利原宿不利…じゃなかった、渋谷有利です。
眞魔国の仲間との旅を宗主を倒したことで終え、皆に別れを告げ地球に戻ったはずが大賢者こと村田健に公園の池に突落され再びこの眞魔国に戻って来た。
もう戻って来れないと思っていた場所、もう逢えないと思っていた仲間達との再会。
そして俺は宗主を倒したことで自分の力でスタツア出来る様になった。
だけど…宗主がいなくなって平和になった眞魔国に今、新たな問題が勃発した。
時は遡る事10日前…俺と村田が久し振りに眞魔国に来ると神妙な面持ちで皆が待っていた。
有「水不足!?」
ギ「はい。近頃、下々の民からいくつかの眞魔国お悩み相談目安箱に井戸が涸れるなど、似たような内容を見聞していたのですが……それが何とも不可思議な事で…」
グ「……様子を見ていたのだが事態は悪化している。村に繋がる水路の大元となっている泉までもがいくつか涸れた」
コ「俺もヨザックと被害があった難民の村を視察したんですが……昨日まで水路を流れていた水が次の日には泉にも水路にも一滴の水もなくなって乾いていました」
ヴ「今はまだ国境に近い村だけだが急速に被害が広がっている。このままでは城下や此処も安心は出来ない」
有「それで、水が無くなっちゃった村の皆さんはどうしてるの?」
コ「今は水が残っている近くの村でつないでいます…ですが、そこもいつ水が消えるか…グウェンダルが地の魔術を使うので涸れた泉を調査したんですが…」
ヴ「僕も兄上と一緒に行ったが、泉からも水路からも魔力の欠片も感じなかった」
グ「水の術者も対処が出来なかった…このままでは水だけではなく農作物や草木も枯れてしまう。早急に対策を考えたい」
村「…………」
そこで俺と村田は水が涸れたという場所まで行き、色々と調べたがこれと言って水が涸れた理由になったものは見付からなかった。
応急処置として俺も魔力を使ってみたが涸れてしまった場所に何度水を入れても瞬時にして水は消えた。その様子を黙って見ていた村田は何かを考え込む様に泉の底の土を手で掬った。
村「……これは、もしかしたら僕たちの力では解決出来ないかもしれない」
そう言って村田はギュンターに何かを言い残し眞王廟に行ってしまった。
村田が言うには土地や植物、水など総ての“守り神”が関係しているという事だった。
長い年月の間、眞魔国は隣国との戦争や宗主との戦いで土地が荒れていた。
『きっと総ての精霊たちがこの世界から居なくなってしまったのかもしれない』
そう言った村田の顔は悲痛な面持ちだった。
有「なぁ、コンラッド」
コ「はい。何です陛下?」
有「陛下って言うな名付け親!」
コ「すみません、ユーリ」
有「村田が言ってた守り神?ってどうすれば見付かるんだ?」
コ「どうすれば見付かるのかは俺には分かりません、精霊が本当にいるのかも、居たとして、そもそも俺たちに精霊たちの姿が見えるのかどうかも……俺は百年以上生きていますが、それらしい者は見た事がありません」
有「……いるのかな?いるよね!?ってゆーか、居てくれないと困る!!」
俺とコンラッドが話をしていると村田から言われて何やら調べモノをしていたギュンターが本を片手に戻って来た。
ギ「猊下に頼まれた調べモノがこの本に載っていました」
有「村田に頼まれた?」
ギ「はい。古い歴史の中で我らが眞魔国に精霊使いが確かに居たと記されています」
ヴ「精霊使いが眞魔国に?僕は聞いた事ないぞ」
ギ「とても古い時代の事の様です。此処に記されているのは眞王陛下の時代です」
有「眞王の!?」
ギ「はい。これによると宗主を4つの箱に封印した眞王陛下はその土地の自然を守る精霊使いと契約を交わされたようです」
有「契約?」
ギ「眞王陛下の救った眞魔国の土地を守る契約のようです。ただ、この契約は眞王陛下の代だけのようです」
有「じゃあ、村田が眞王廟に向かったのは…」
ギ「おそらく眞王陛下とその時の契約について話されているのかと…」
有「でもさ、眞王の時代って言ったら大賢者の村田も契約に立ち会ってたんじゃ…」
ギ「それが…猊下が仰るには眞王陛下が精霊使いと契約を交わした時、誰も部屋には入れなかったそうです…それが精霊使いが魔族と契約する条件だったと…」
有「……確かに、何となくだけど魔族の土地に精霊って響きは不思議な感じがするけど…じゃあ、村田はその時の精霊使いがどんな人か見てないってこと?」
ギ「おそらく……」
有「なぁ、その精霊使いと契約を結ばないといけないのは分かったけど…じゃあさ、その精霊使いさんは何処に居るわけ?」
「「「「…………」」」」
ヴ「僕たちには分からない」
グ「……だが、精霊使いを探して契約を結ばねば近い将来この土地も魔族も滅びる…」
シ――――――――ン
グウェンダルの言葉に最悪の未来を考えた魔王と魔族は言葉をなくした…。
コ「……だが、猊下が今眞王廟に行っている」
ヴ「く…っ、せっかく平和になったというのに……」
ギ「兎に角、猊下が血盟城に帰られるのを待ちましょう……」
ところが俺たちの心配をよそに村田は何故かご機嫌で眞王廟から帰って来た。
どうやって精霊使いを探すのかの問いに村田はにっこり笑って『精霊使いに心当たりがある』と言って地球に戻った。
俺はと言うと…呆気にとられた魔族似てねぇ三兄弟と汁だく大佐の間でやっぱり呆けていた……。
有「……魔族の危機だよな?」
コ「はい……」
有「……何で、村田あんなに嬉しそうなんだ?」
「「「「…………」」」」
訳がわからない。
兎に角、村田を地球に戻し、俺は眞魔国で村田と精霊使い?と思われる人を引き寄せる事になった……。
そして今日が、村田がこっちの世界に戻ると言った日だ!
有「コンラッド!今日の正午だよな?村田が精霊使いさんを連れて来るの」
コ「はい。猊下が精霊使い、聖下をお連れになるのは今日の正午、あと一時間位ですね」
有「なんか緊張するよなぁ~どんな人だろ~可愛いといいなぁ…」
コ「ユーリ、最後の一言をヴォルフラムが聞いたら大変ですよ」
ヴ「もう聞こえてる!」
バン!と勢いよく開かれた執務室のドアからヴォルフラムが入って来てユーリの頬を抓った。
有「わわっ、ヴォルフ、ちょっと痛いって、イタタタ…」
ヴ「五月蠅いこの尻軽!僕という婚約者がいるのに!!このへなちょこめ!」
有「へなちょこゆーな!」
コ「ほら、ヴォルフその辺でやめないと陛下の顔が曲がるぞ」
有「へーか言うな!ってか、曲がるの?俺の顔曲がっちゃうの??」
グ「……はぁ~っ」
執務室でぎゃあぎゃあ騒いでいる魔王と自分の弟たちを見ながら長男のお兄ちゃんは深い溜息をついた。
グ「まったく……緊張感のない奴らだ」
……と、ぼやいてみるが、毎度の事ながら仕事よりも雑談で盛り上がる声に彼の溜息は消された。
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