「まもなく家に帰ります」
　このメッセージが届いてからかなりの時間が経つ。彼のことだからよっぽどのことがない限りすぐに帰ってくる筈だ。
　心配する要素なんて一つもないけれども、心配なものは心配だ。スマホロトムを手にして今か今かと彼の帰りを待つ。
　鍵を開け、ガチャリと開く音が響いた。私はすかさず立ち上がりバタバタと足音を盛大に立てなら玄関へ走って行った。
　髪は乱れていて、いつも以上に疲れた顔をしている彼は靴を脱いでいる最中だった。彼の名前を呼ぶとアオキさんは顔を上げた。疲れた顔をしていた彼だったが、ホッと息を吐き顔を緩ませ、安心しきった表情に変わった。
　いつもは丁寧に靴を並べてくれるのだが、靴を乱雑に置きぐっと距離を縮められた。　　　
　気がつくと、私は温かいアオキの体に包まれていた。
　アオキさんの背中に手を回して「おかえりなさい」といつもの言葉を彼にかける。
「ただいま、帰りました」
　私の肩に顔を埋めいつもの言葉を彼は言った。耳に彼の息がかかって少しくすぐったい。
「やっぱり我が家が一番です。落ち着きますし、何より貴女がいる。それだけで充分だ……」
　久々に聞くアオキさんの声は柔らかく、とても優しかった。