風間夢
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次の日。
登校すると風間が既に席に座っていたので驚いた。いつも遅刻ギリギリに来るから何事かと思い、彼に話しかけた。
すると風間は「みんなが僕との別れを惜しんで一秒でも長く一緒にいたい思いが聞こえたから早く来た」と言っている。
私はそんな訳ないだろと思いつつ適当に相槌を打った。その日風間はクラスメイトや廊下ですれ違った別クラスの生徒、はたまた先生や下級生たちところ構わずやたらめったら話しかけている。話しかけては適当にあしらわれるの連続だ。
そんな風間を不憫に思った私はお弁当のおかずの唐揚げを一つあげた。風間は美味しそうに唐揚げを食べている。
なんとなしに外の景色に目を向けると、毛並みの良さそうな黒猫が校庭を駆けていく姿が見えた。
かわいいネコだ。放課後になったら探してみようかな。もしかしたら何処かに隠れているかもしれないし。そんなこと考えながら今度はお弁当に目を向けると風間がお弁当にある唐揚げに手を伸ばしていた。
この唐揚げ泥棒め、そうはさせん。私は唐揚げ泥棒の手をはたいた。風間は口を尖らせて不服そうな顔をしている。
「……スンバラリア星に帰ったら君はけちんぼうだったと報告するよ」
「唐揚げもう一個あげるから私の変な報告をしないでくれる!?」
一生行くことがない場所であろうが私の風評被害が広がることはなんとしても避けたい。風間に唐揚げを渡した。すぐさま口に放り込み、唐揚げを頬張っている風間はニンマリと笑い、こくこく頷く。
「そういえば今日僕は七不思議の会に参加するんだよ」
「前に言っていた新聞部主催のやつだっけ」
「そうそう。どうしても参加してくれって必死に頼まれてね。そんなこと言われたら参加せざるおえないじゃないか。皆を恐怖の渦に沈めて毎晩震えて安眠出来なくなるそんなとびっきりの怖い話を披露してくるよ」
「へーがんばってね」
「君も僕の話が聞きたくて仕方ないんだろ? まったくしょうがないぁ……特別に聞かせてやろう。この学校に出没する七人小僧というのを知っているかい? しりとり小僧、ちりとり小僧、それから」
……くだらない話をする予感がする。いや、するね、ヤツは。
マンモス校で数多のクラスがあるというのに三年間も同じクラスで、しかも何度席替えしても必ず隣の席になってしまう偶然……いや、呪いの所為によってヤツの性格は充分過ぎる程理解している。だからこそ今止めないと碌でもない話を延々と聞かされることになってしまう。そんな話を聞きながらではご飯が美味しくいただけない。ヤツの気をそらすことにしよう。
「おっとーあんなところに五百円が落ちているのがみえるぞーだれか拾わないのかなー」
「五百円が落ちてるだってぇ!?」
適当に指した場所へ向かって風間はボールを取りに行くワンちゃんのように走っていき、ありもしない五百円を必死に探している。
よし、これでご飯に集中できる。あ、卵焼きが無くなってる。アイツ卵焼きを取りやがったな。風間を睨むと、風間は私の視線に反応したようで顔を上げてこちらを向く。そして、卵焼き泥棒はバッチリとウィンクを決めたのであった。
放課後。
帰りの身支度をしていたら風間がじっと何かを見つめている様子が目に入った。何を見つめているのか気になって近づくと彼は写真を眺めていた。
「ふふーん。どうやら君もこの写真から何かを感じるようだね」
「いや、別に……それ何の写真なの」
「これは心霊写真だよ。とびっきりのね」
風間は手に持っていた写真を私に見せる。女子生徒が二人並んで笑顔でピースをしている微笑ましい写真だ。どこからどう見ても心霊写真には見えない。
「おや? 君にはこの幽霊が見えないのかい。全くしょうがないねぇ。天才霊媒師であるこの僕が特別に教えるとしようか、膝をよく見てみるといい。ほら、君にも見えただろう……膝小僧が」
「……」
私は深呼吸して、殴りたがっている強く握られた拳を抑えた。落ち着け私。風間の話がくだらないことは私がよく知っているじゃないか……だけども、今の話はあまりにも度が過ぎている。好奇心は猫をも殺すと言うけど本当にその通りだ。好奇心に負けずあの時さっさと帰ればよかった。
「これを七不思議の会でみんなに見せようと思っているんだ。今からみんなの反応が楽しみだよ」
心の中で見知らぬみんなに向けてご愁傷様と呟く。折角の七不思議の会なのにこんな物を見せられては場はしらけるに違いない。彼の行動を止めたいのはやまやまだが、これを見て私と同じ気持ちになって、あわよくば誰かコイツを殴ってはくれないかと淡い願いの為に風間の手綱を放棄することにした。
開かれた窓から風が教室に流れる。風間の机に置いてあったいくつかの写真が風に乗って空中をひらひらと舞って床に落ちた。床に散らばった写真を拾い集めていると、一枚の写真に目を奪われた。それはどこかの国の風景が映っており、広い草原に色彩鮮やかな見知らぬ花々が咲いている。
「君も気に入ったようだね、その写真が」
彼は優しい微笑みを浮かべ愛おしそうに写真の表面をなぞった。
「これは何の写真……?」
「これはスンバラリア星だよ。僕が地球に行く前に撮ったんだ。この場所は僕のお気に入りでね、僕の美貌と同等の美しい場所さ。いつかは……いや、なんでもない」
あの風間がそこまで言うほどの場所と聞いてほんの少しだけスンバラリア星に行ってみたい気持ちが湧いた。
「綺麗だね。スンバラリア星」
「だろう? 君にこの写真をプレゼントするよ」
「えっ……いや、いいよ。これ、風間の大切な写真じゃないの? だったら尚更風間が持っていないと」
「いーいから、いーから。その写真を持っていなさい」
口の両端を高く釣り上げてにんまりと笑っている風間は私にその写真を押し付けて席から立ち上がった。
「では僕は七不思議の会に行くとするよ。じゃあね!」
本日二回目のウィンクを決めた彼は嵐のように颯爽と居なくなった。
写真が折れ曲がらないように慎重にカバンの中に入れた。家に帰ったらこの写真、フレームにでも入れようかな。ひとり歩きながら私はそんなことを考えていた。
風間望がいなくなるまであと三日。
登校すると風間が既に席に座っていたので驚いた。いつも遅刻ギリギリに来るから何事かと思い、彼に話しかけた。
すると風間は「みんなが僕との別れを惜しんで一秒でも長く一緒にいたい思いが聞こえたから早く来た」と言っている。
私はそんな訳ないだろと思いつつ適当に相槌を打った。その日風間はクラスメイトや廊下ですれ違った別クラスの生徒、はたまた先生や下級生たちところ構わずやたらめったら話しかけている。話しかけては適当にあしらわれるの連続だ。
そんな風間を不憫に思った私はお弁当のおかずの唐揚げを一つあげた。風間は美味しそうに唐揚げを食べている。
なんとなしに外の景色に目を向けると、毛並みの良さそうな黒猫が校庭を駆けていく姿が見えた。
かわいいネコだ。放課後になったら探してみようかな。もしかしたら何処かに隠れているかもしれないし。そんなこと考えながら今度はお弁当に目を向けると風間がお弁当にある唐揚げに手を伸ばしていた。
この唐揚げ泥棒め、そうはさせん。私は唐揚げ泥棒の手をはたいた。風間は口を尖らせて不服そうな顔をしている。
「……スンバラリア星に帰ったら君はけちんぼうだったと報告するよ」
「唐揚げもう一個あげるから私の変な報告をしないでくれる!?」
一生行くことがない場所であろうが私の風評被害が広がることはなんとしても避けたい。風間に唐揚げを渡した。すぐさま口に放り込み、唐揚げを頬張っている風間はニンマリと笑い、こくこく頷く。
「そういえば今日僕は七不思議の会に参加するんだよ」
「前に言っていた新聞部主催のやつだっけ」
「そうそう。どうしても参加してくれって必死に頼まれてね。そんなこと言われたら参加せざるおえないじゃないか。皆を恐怖の渦に沈めて毎晩震えて安眠出来なくなるそんなとびっきりの怖い話を披露してくるよ」
「へーがんばってね」
「君も僕の話が聞きたくて仕方ないんだろ? まったくしょうがないぁ……特別に聞かせてやろう。この学校に出没する七人小僧というのを知っているかい? しりとり小僧、ちりとり小僧、それから」
……くだらない話をする予感がする。いや、するね、ヤツは。
マンモス校で数多のクラスがあるというのに三年間も同じクラスで、しかも何度席替えしても必ず隣の席になってしまう偶然……いや、呪いの所為によってヤツの性格は充分過ぎる程理解している。だからこそ今止めないと碌でもない話を延々と聞かされることになってしまう。そんな話を聞きながらではご飯が美味しくいただけない。ヤツの気をそらすことにしよう。
「おっとーあんなところに五百円が落ちているのがみえるぞーだれか拾わないのかなー」
「五百円が落ちてるだってぇ!?」
適当に指した場所へ向かって風間はボールを取りに行くワンちゃんのように走っていき、ありもしない五百円を必死に探している。
よし、これでご飯に集中できる。あ、卵焼きが無くなってる。アイツ卵焼きを取りやがったな。風間を睨むと、風間は私の視線に反応したようで顔を上げてこちらを向く。そして、卵焼き泥棒はバッチリとウィンクを決めたのであった。
放課後。
帰りの身支度をしていたら風間がじっと何かを見つめている様子が目に入った。何を見つめているのか気になって近づくと彼は写真を眺めていた。
「ふふーん。どうやら君もこの写真から何かを感じるようだね」
「いや、別に……それ何の写真なの」
「これは心霊写真だよ。とびっきりのね」
風間は手に持っていた写真を私に見せる。女子生徒が二人並んで笑顔でピースをしている微笑ましい写真だ。どこからどう見ても心霊写真には見えない。
「おや? 君にはこの幽霊が見えないのかい。全くしょうがないねぇ。天才霊媒師であるこの僕が特別に教えるとしようか、膝をよく見てみるといい。ほら、君にも見えただろう……膝小僧が」
「……」
私は深呼吸して、殴りたがっている強く握られた拳を抑えた。落ち着け私。風間の話がくだらないことは私がよく知っているじゃないか……だけども、今の話はあまりにも度が過ぎている。好奇心は猫をも殺すと言うけど本当にその通りだ。好奇心に負けずあの時さっさと帰ればよかった。
「これを七不思議の会でみんなに見せようと思っているんだ。今からみんなの反応が楽しみだよ」
心の中で見知らぬみんなに向けてご愁傷様と呟く。折角の七不思議の会なのにこんな物を見せられては場はしらけるに違いない。彼の行動を止めたいのはやまやまだが、これを見て私と同じ気持ちになって、あわよくば誰かコイツを殴ってはくれないかと淡い願いの為に風間の手綱を放棄することにした。
開かれた窓から風が教室に流れる。風間の机に置いてあったいくつかの写真が風に乗って空中をひらひらと舞って床に落ちた。床に散らばった写真を拾い集めていると、一枚の写真に目を奪われた。それはどこかの国の風景が映っており、広い草原に色彩鮮やかな見知らぬ花々が咲いている。
「君も気に入ったようだね、その写真が」
彼は優しい微笑みを浮かべ愛おしそうに写真の表面をなぞった。
「これは何の写真……?」
「これはスンバラリア星だよ。僕が地球に行く前に撮ったんだ。この場所は僕のお気に入りでね、僕の美貌と同等の美しい場所さ。いつかは……いや、なんでもない」
あの風間がそこまで言うほどの場所と聞いてほんの少しだけスンバラリア星に行ってみたい気持ちが湧いた。
「綺麗だね。スンバラリア星」
「だろう? 君にこの写真をプレゼントするよ」
「えっ……いや、いいよ。これ、風間の大切な写真じゃないの? だったら尚更風間が持っていないと」
「いーいから、いーから。その写真を持っていなさい」
口の両端を高く釣り上げてにんまりと笑っている風間は私にその写真を押し付けて席から立ち上がった。
「では僕は七不思議の会に行くとするよ。じゃあね!」
本日二回目のウィンクを決めた彼は嵐のように颯爽と居なくなった。
写真が折れ曲がらないように慎重にカバンの中に入れた。家に帰ったらこの写真、フレームにでも入れようかな。ひとり歩きながら私はそんなことを考えていた。
風間望がいなくなるまであと三日。