風間夢
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
雲一つない快晴の昼下がりの午後。風間の家にて思い思いの時間をそれぞれ二人は過ごしている。苗字はソファーに座り読書。その隣に風間は寝転がり、毒にも薬にもならないバラエティー番組を心底つまらなそうに見ている。
昼食を食べた後ということもあり、風間の眠気がどんどんと降りてくる。このままいっそ寝てしまおうか、と考え始めた頃、バラエティー番組の司会者が元気よく大声を張り上げて言った。
「街の女性に聞いてみました! もしも、貴方の恋人や旦那が浮気をしていたらどうするか」
風間の眠気が吹き飛んだ。司会者が大声を張り上げた所為ではない。「浮気をしたらどうするか」この言葉によってだ。
風間は女性好きなのは彼自身も苗字にもよく知っている。だが、苗字と交際を始めてからはそのなりを潜めている。もしも、それが発症してしまったら。
風間はさりげなく彼女の方へ視線を向けた。苗字はテレビには目もくれず真剣な顔をしてブックカバーをかけた本と向き合っている。
どうやら彼女は「浮気」という言葉に関心がないようだ。そのことに少し安心した風間は再びテレビに視線を向けた。
再びテレビを見るとカメラはスタジオから一転し、街中を映していた。それからリポーターと思われるおちゃらけた男性芸人と共に街中を歩いている。
街中には大勢の人々が行き交っている。その中でもリポーターは狙いを定め、二人組の若い女性たちにすかさず声をかけた。
「突然ですが! もしも、貴方の恋人や旦那が浮気をしていたらどうしますか?」
聞かれた女性たちは想像してしまったようで途端に眉を顰め嫌な顔をした。
「私はソッコー別れます。だって浮気だよ? そんなのありえない」
「うんうん。私も別れるー」
「なるほど! 貴重なご意見ありがとうございます。では次行ってみましょう!」
軽快なBGMと共に次に現れたのは見るからに大人しそうな女性。女性は重いため息を吐くと「許しちゃいました」と告げた。
「なんと実体験ですか。それは何故なんです」
「だって……あの人は私と一緒じゃないと生きていけないんです。なのにあっちこっちに手を出して痛い目にみたら私の元に帰ってきて『やっぱり君が一番だぜ』なんて言うの。その間抜けな顔を見てしまったらなんか、肩の力抜けちゃって……気がついたら『いいのよ』って言っていたんです」
「へぇ……様々な夫婦の形もあるんですね。次は人生のベテランに聞いてみることにしましょう」
次に現れたのは恰幅の良い五十代の女性と細身の八十代らしき女性。五十代の女性は自信ありげに勝ち気な顔をしている。
「アタシだったらたっくさん慰謝料分取ってやるわよ。母さんも同じでしょ」
母さんと呼ばれた八十代の女性は人の良さそうな笑顔を浮かべながらポツポツと語り始めた。
「私はせっかく慰謝料取ってもこの先短いからねぇ。使い道が無いのよ。だからね、地獄に行ったあの人を私は極楽から見てやるの。そして、あの人に向けて蜘蛛の糸垂らすのよ。そしたら、あの人ブッサイクな顔を晒して登ってくるわ。あと一歩のところでハサミでちょん切ってやるの」
「なにそれ最高じゃないの。母さん」
「うふふ……浮気したこと、後悔するがいいわ」
老婆が言っていた最後の一言が何故か自分に向けられたような気がして風間はテレビを消した。
「あれ、消しちゃったの」
風間の隣から不満の声が上がった。隣を見ると苗字は変わらずに本を目に向けたままだった。
「本、見てるんじゃないの」
「読みながら耳で聞いていたんだよ。ラジオみたいにね」
「随分器用なことをしてるじゃないか」
「ありがとう。それにしても、色んな人がいて面白かったね」
本を読む手を止めた苗字は風間に向かって微笑みかけた。それに対し風間は苦虫を噛み潰したような顔をしている。そんな彼は苗字に恐る恐る問いかけることにした。
「……もしもの話だよ。もしも、僕が浮気をしたら君はどうするんだい」
風間の問いかけに苗字はキョトンと目を丸くしている。
「うーん……そうだなぁ。私だったらね」
顔を俯かせた苗字は顎に手を当てて考え込む。少しした後、思いついたようで「あっ」と声を出した。
そして、風間に向けて、花が満開に咲いたような輝かしい笑顔を見せつけてこう言った。
"風間くんの目の前で、私が浮気相手をボコボコにするよ"
今この瞬間、苗字の答えを聞くまではテレビの中で女性たちが言っていたどれかに該当するだろうと彼は思っていた。しかし、普段の彼女から、かけ離れた予想を遥かに超えた回答に風間は戦慄いた。
内心、戦慄いていることを苗字に悟られぬよう風間は「へえーそうなんだ」と平静を装った。大量の冷や汗をたらたらと流しながら。
このままでは良からぬ追求をされてしまう。この話題を変えようと風間はやたらと明るい声を上げ「ところでさっきから何を読んでいるんだい」と本を指差した。
「これ? これはね」
苗字は本を手に取り、装着していたブックカバーを外して風間に見せつける。そこに書かれていたのは────
"浮気性な恋人を洗脳できる!? 108の方法"
「……今日は外で食べないか。僕の奢りで」
「えぇ!? 急にどうしたの」
「い、いやっ。君に色々と世話になっているからそのお礼としてだよ。そうと決まれば本なんか読んでないで、僕とデートしようじゃないか!」
風間は立ち上がると、苗字の手を取って何かから逃げ出すように外へ飛び出していった。
昼食を食べた後ということもあり、風間の眠気がどんどんと降りてくる。このままいっそ寝てしまおうか、と考え始めた頃、バラエティー番組の司会者が元気よく大声を張り上げて言った。
「街の女性に聞いてみました! もしも、貴方の恋人や旦那が浮気をしていたらどうするか」
風間の眠気が吹き飛んだ。司会者が大声を張り上げた所為ではない。「浮気をしたらどうするか」この言葉によってだ。
風間は女性好きなのは彼自身も苗字にもよく知っている。だが、苗字と交際を始めてからはそのなりを潜めている。もしも、それが発症してしまったら。
風間はさりげなく彼女の方へ視線を向けた。苗字はテレビには目もくれず真剣な顔をしてブックカバーをかけた本と向き合っている。
どうやら彼女は「浮気」という言葉に関心がないようだ。そのことに少し安心した風間は再びテレビに視線を向けた。
再びテレビを見るとカメラはスタジオから一転し、街中を映していた。それからリポーターと思われるおちゃらけた男性芸人と共に街中を歩いている。
街中には大勢の人々が行き交っている。その中でもリポーターは狙いを定め、二人組の若い女性たちにすかさず声をかけた。
「突然ですが! もしも、貴方の恋人や旦那が浮気をしていたらどうしますか?」
聞かれた女性たちは想像してしまったようで途端に眉を顰め嫌な顔をした。
「私はソッコー別れます。だって浮気だよ? そんなのありえない」
「うんうん。私も別れるー」
「なるほど! 貴重なご意見ありがとうございます。では次行ってみましょう!」
軽快なBGMと共に次に現れたのは見るからに大人しそうな女性。女性は重いため息を吐くと「許しちゃいました」と告げた。
「なんと実体験ですか。それは何故なんです」
「だって……あの人は私と一緒じゃないと生きていけないんです。なのにあっちこっちに手を出して痛い目にみたら私の元に帰ってきて『やっぱり君が一番だぜ』なんて言うの。その間抜けな顔を見てしまったらなんか、肩の力抜けちゃって……気がついたら『いいのよ』って言っていたんです」
「へぇ……様々な夫婦の形もあるんですね。次は人生のベテランに聞いてみることにしましょう」
次に現れたのは恰幅の良い五十代の女性と細身の八十代らしき女性。五十代の女性は自信ありげに勝ち気な顔をしている。
「アタシだったらたっくさん慰謝料分取ってやるわよ。母さんも同じでしょ」
母さんと呼ばれた八十代の女性は人の良さそうな笑顔を浮かべながらポツポツと語り始めた。
「私はせっかく慰謝料取ってもこの先短いからねぇ。使い道が無いのよ。だからね、地獄に行ったあの人を私は極楽から見てやるの。そして、あの人に向けて蜘蛛の糸垂らすのよ。そしたら、あの人ブッサイクな顔を晒して登ってくるわ。あと一歩のところでハサミでちょん切ってやるの」
「なにそれ最高じゃないの。母さん」
「うふふ……浮気したこと、後悔するがいいわ」
老婆が言っていた最後の一言が何故か自分に向けられたような気がして風間はテレビを消した。
「あれ、消しちゃったの」
風間の隣から不満の声が上がった。隣を見ると苗字は変わらずに本を目に向けたままだった。
「本、見てるんじゃないの」
「読みながら耳で聞いていたんだよ。ラジオみたいにね」
「随分器用なことをしてるじゃないか」
「ありがとう。それにしても、色んな人がいて面白かったね」
本を読む手を止めた苗字は風間に向かって微笑みかけた。それに対し風間は苦虫を噛み潰したような顔をしている。そんな彼は苗字に恐る恐る問いかけることにした。
「……もしもの話だよ。もしも、僕が浮気をしたら君はどうするんだい」
風間の問いかけに苗字はキョトンと目を丸くしている。
「うーん……そうだなぁ。私だったらね」
顔を俯かせた苗字は顎に手を当てて考え込む。少しした後、思いついたようで「あっ」と声を出した。
そして、風間に向けて、花が満開に咲いたような輝かしい笑顔を見せつけてこう言った。
"風間くんの目の前で、私が浮気相手をボコボコにするよ"
今この瞬間、苗字の答えを聞くまではテレビの中で女性たちが言っていたどれかに該当するだろうと彼は思っていた。しかし、普段の彼女から、かけ離れた予想を遥かに超えた回答に風間は戦慄いた。
内心、戦慄いていることを苗字に悟られぬよう風間は「へえーそうなんだ」と平静を装った。大量の冷や汗をたらたらと流しながら。
このままでは良からぬ追求をされてしまう。この話題を変えようと風間はやたらと明るい声を上げ「ところでさっきから何を読んでいるんだい」と本を指差した。
「これ? これはね」
苗字は本を手に取り、装着していたブックカバーを外して風間に見せつける。そこに書かれていたのは────
"浮気性な恋人を洗脳できる!? 108の方法"
「……今日は外で食べないか。僕の奢りで」
「えぇ!? 急にどうしたの」
「い、いやっ。君に色々と世話になっているからそのお礼としてだよ。そうと決まれば本なんか読んでないで、僕とデートしようじゃないか!」
風間は立ち上がると、苗字の手を取って何かから逃げ出すように外へ飛び出していった。