ストーリー•序章
中庭が見える渡り廊下を”桜の部屋”に向かって歩いていると、数人の使用人とすれ違った。
「伝承の花の話聞いた?」
「ええ、聞いたわ。もし、その花と一緒にプロポーズされたらロマンチックよね」
通り過ぎざまに聞こえてきたのは、例の花の噂。少なくとも俺はクラウディアから聞いたのが初めてだ。
本を読んでいる間に、いったい何があったのか。
考えながら歩いているうちに、”桜の部屋”へたどり着く。
ノックをして入ろうと手を挙げた瞬間、目の前の扉が勢いよく開かれた。
それと同時に、長い金髪が出てくる。驚いて反応が遅れ、よける事が出来なかった。
「きゃっ!・・・ノルン?!」
大きく見開いた瞳が、意地悪く細められる。
「逃げるわよ!!」
状況が読み込めないまま、クラウディアに腕をつかまれその場を走り去る。
「姫!まだ、授業は終わってません!お戻りください!」
講師の悲痛な叫びと、カミューのため息が聞こえてきた気がした。
廊下を走っていると、クラウディアを探しているであろう講師とカミューが先回りしたのか、反対側から声が聞こえる。
慌てているクラウディアの腕をとり、近くにあった使用人用の通路に走りこむ。
しばらく走り、声が聞こえなくなったところで息を整える。
「それで?俺を巻き込む必要性は?」
満足そうにしているクラウディアに、ため息混じりに聞いてみる。
「だって部屋の外にいたんだもの。他の人だったら捕まるでしょうけど、ノルンなら助けてくれるって信じてたしね」
得意げに言うクラウディアに、苦笑を返す。
甘やかしすぎたかと思うが、今に始まったことでもないので折を見てカミューに引き渡そうと心の中で考える。
やる気の無い時に、何を教えても時間がかかるだけで全く覚えれないのがクラウディア。そういう少女なのだ。
「今日の勉強は何だったんだ?」
場所を変えるため、歩きながら聞く。
「今日は、歴史で建国記。なぜ国が興ったとか永遠に話し続けるの。もう眠くて」
あくびの真似をしながら話す少女の後ろを歩く。
しばらくして、使用人通路から出て裏の中庭へ出る。
「それは眠くなるな」
「そうでしょ?」
そんな話をしつつ、休める場所を探す。
「知ってるか?お前が好きなあの縫いぐるみ。元は、国の興りに関わった例の魔法使いが元になってるらしいぞ?」
わざとらしく振った話題。それでも自分の興味あるものに関係する話だと好奇心がくすぐられるのか、クラウディアは話に乗ってくる。
「でも、魔法使いっぽくないし幻獣みたいで可愛いのに?」
「だから元はって言っただろ。この国は昔、魔法使いが使った大魔法で魔物を退けた。その魔法使いと大魔法をモチーフに作られたのが、クラウディアの好きなあの縫いぐるみだ」
「そうなんだ。知らなかった」
目を丸くしてこちらを見るクラウディアに、
「興味ないか?お前の縫いぐるみの起源」
「気になるわね・・・。あの縫いぐるみのどの部分が大魔法なのかしら」
考え込むクラウディアに、
「物には背景がある、ルーツが。歴史をを知れば、わかるかもしれないな」
そういうと少女の目にきらきらとした光が宿る。
そろそろか・・・。
丁度よく、カミューの声が聞こえる。
「二人とも探したよ。クラウディア、王族として勉強はしっかりやらないとだめじゃないか」
少し怒り気味のカミューに、
「さっきの勉強の続きやってみるわ」
クラウディアはそういうと王宮の中に入っていった。まるで嵐だ。
ため息をついてクラウディアを見送る親友がこちらを見る。
その視線に、肩をすくめ返す。
「毎回、ありがとうと言っておくよ」
「お互いに・・・な」
それから、カミューは王宮へ戻っていく。
俺も今日は、部屋に戻ることにする。結局聞きそびれた噂話は明日また聞けばいい。
太陽が、少し傾いた空を横目に王宮へと足を向けた。
「伝承の花の話聞いた?」
「ええ、聞いたわ。もし、その花と一緒にプロポーズされたらロマンチックよね」
通り過ぎざまに聞こえてきたのは、例の花の噂。少なくとも俺はクラウディアから聞いたのが初めてだ。
本を読んでいる間に、いったい何があったのか。
考えながら歩いているうちに、”桜の部屋”へたどり着く。
ノックをして入ろうと手を挙げた瞬間、目の前の扉が勢いよく開かれた。
それと同時に、長い金髪が出てくる。驚いて反応が遅れ、よける事が出来なかった。
「きゃっ!・・・ノルン?!」
大きく見開いた瞳が、意地悪く細められる。
「逃げるわよ!!」
状況が読み込めないまま、クラウディアに腕をつかまれその場を走り去る。
「姫!まだ、授業は終わってません!お戻りください!」
講師の悲痛な叫びと、カミューのため息が聞こえてきた気がした。
廊下を走っていると、クラウディアを探しているであろう講師とカミューが先回りしたのか、反対側から声が聞こえる。
慌てているクラウディアの腕をとり、近くにあった使用人用の通路に走りこむ。
しばらく走り、声が聞こえなくなったところで息を整える。
「それで?俺を巻き込む必要性は?」
満足そうにしているクラウディアに、ため息混じりに聞いてみる。
「だって部屋の外にいたんだもの。他の人だったら捕まるでしょうけど、ノルンなら助けてくれるって信じてたしね」
得意げに言うクラウディアに、苦笑を返す。
甘やかしすぎたかと思うが、今に始まったことでもないので折を見てカミューに引き渡そうと心の中で考える。
やる気の無い時に、何を教えても時間がかかるだけで全く覚えれないのがクラウディア。そういう少女なのだ。
「今日の勉強は何だったんだ?」
場所を変えるため、歩きながら聞く。
「今日は、歴史で建国記。なぜ国が興ったとか永遠に話し続けるの。もう眠くて」
あくびの真似をしながら話す少女の後ろを歩く。
しばらくして、使用人通路から出て裏の中庭へ出る。
「それは眠くなるな」
「そうでしょ?」
そんな話をしつつ、休める場所を探す。
「知ってるか?お前が好きなあの縫いぐるみ。元は、国の興りに関わった例の魔法使いが元になってるらしいぞ?」
わざとらしく振った話題。それでも自分の興味あるものに関係する話だと好奇心がくすぐられるのか、クラウディアは話に乗ってくる。
「でも、魔法使いっぽくないし幻獣みたいで可愛いのに?」
「だから元はって言っただろ。この国は昔、魔法使いが使った大魔法で魔物を退けた。その魔法使いと大魔法をモチーフに作られたのが、クラウディアの好きなあの縫いぐるみだ」
「そうなんだ。知らなかった」
目を丸くしてこちらを見るクラウディアに、
「興味ないか?お前の縫いぐるみの起源」
「気になるわね・・・。あの縫いぐるみのどの部分が大魔法なのかしら」
考え込むクラウディアに、
「物には背景がある、ルーツが。歴史をを知れば、わかるかもしれないな」
そういうと少女の目にきらきらとした光が宿る。
そろそろか・・・。
丁度よく、カミューの声が聞こえる。
「二人とも探したよ。クラウディア、王族として勉強はしっかりやらないとだめじゃないか」
少し怒り気味のカミューに、
「さっきの勉強の続きやってみるわ」
クラウディアはそういうと王宮の中に入っていった。まるで嵐だ。
ため息をついてクラウディアを見送る親友がこちらを見る。
その視線に、肩をすくめ返す。
「毎回、ありがとうと言っておくよ」
「お互いに・・・な」
それから、カミューは王宮へ戻っていく。
俺も今日は、部屋に戻ることにする。結局聞きそびれた噂話は明日また聞けばいい。
太陽が、少し傾いた空を横目に王宮へと足を向けた。