ハッピーニューイヤー2026
大人になると1年なんてあっという間だ。特に私のような、毎日毎日変わらず日々の雑務に追われ続けている人間にとっては。私の子供の頃はお正月と言えば、母のご馳走と親戚からのお年玉にありつく事の出来る幸せの象徴のような行事だったが、大人になって料理やお年玉を自分で用意する側に回った途端、幼少期に貰っていたあの幸せは、当たり前の事では無いことを知った。おせち料理はとにかく盛り付けに時間がかかるし、お雑煮を作ろうにも物価高のせいで餅は今や高級品だ。近所のスーパーで10個入り税込698円の表記を見た時、思わず自分の目を疑った程だ。それと同時に、冬休みに毎日お雑煮を食べさせてくれた母の偉大さを今更になって知った。 お母さんありがとう。今年はちゃんと帰省するからね。
「とりあえず明日は親戚の集まりがあるから、子供たちに渡すお年玉を今の内に入れておかないと……」
そんな事をぶつぶつ言いながら、予め銀行で引き出しておいた1万円札を封筒から取り出し、可愛い柄のポチ袋に1枚づつ入れて行く。
物価高を嘆く庶民の象徴の様な生活をしている私だが、ポケモントレーナーとしてある程度高い地位に立たせて貰っているので、収入は結構あると言って良い。とはいえ、この物価高と円安の時代に贅沢しようものなら一瞬でお金が飛んでいく為、質素倹約を徹底して余ったお金を全て貯金に回し、こういう時にきちんと使えるようにしているのである。それに、ポチ袋の封を開いた瞬間の従姉妹達の嬉しそうな顔を見るのは、一種の私の楽しみでもあるのだ。
今年も喜んでくれるといいな。そんな思いを込めながらお年玉を用意していると、突然後ろの部屋の扉が開き、派手な赤い髪色の男───もとい、私の手持ちであるホウオウがリビングへと入ってきた。炎タイプの癖に寒いのが苦手らしいので、片手にはちゃっかりカイロを握っている。一応暖房は彼の部屋にも付けてある筈なのだが。
「なにゴソゴソとお金数えてんだよ、俺にお年玉でもくれんのか?」
「お前の分な訳あるか。明日会う親戚の子供達の分よ」
「そんな冷たい事言うなよ」
そんな軽口を叩き、ちゃっかり私の隣に座ってくるホウオウ。ソファーが大きめだから良かったが、小さかったら今頃ぎゅうぎゅうに狭くなって私が弾き出されていたかもしれない。寝転がりたいからと大きめのソファーを買った過去の私に密かに感謝した。それはそうと、なぜ突然この男はリビングまでやって来たのか。「俺部屋で紅白見てるからな!」とわざわざ先程言いに来ていたので、今夜はずっと自室に閉じこもる気だと思っていたのだが。今更話し相手でも欲しくなったのだろうか。
「紅白見てるんじゃなかったの」
「飽きた。お前の声聞いてた方が良い」
「絶対紅白の方が良いと思うけど。今年のキャスト、凄く豪華だって聞いてるし」
「おれ芸能人とか歌手とか流行りとかそういうの分かんねえ」
「じゃあ何で紅白見てたんだ…」
そんな事を話している間にお年玉の用意が終わったので、手持ち無沙汰になってしまった私は仕方なくホウオウを構ってやることにした。飽きたとか言ってるが、どうせ1人で見るのが寂しくなっただけなのだろう。長い時を生きている伝説のポケモンの癖に、こういう所は笑ってしまうくらい不器用だ。
「あと少しで年が明けるな」
「今年も本当に色んなことがあったね、主に貴方に振り回されてばかりの1年だったけど」
「大事な女と一緒に居てテンション上がらねぇ男なんて居ないだろ」
「空気を読めって事よ」
「空気は吸うもんだ」
「黙らっしゃい」
ああ言えばこう言う、減らず口と屁理屈ばかり叩く我の強い男。しかし彼が私の仲間になってくれたお陰でポケモントレーナーとして今の地位に就けているので、この様なダル絡みをされても中々無下には出来ないのだ。他の手持ちだって決して弱いという訳では無く、世間一般で言う"無駄無く鍛え上げられたポケモン"の部類に入るが、やはり伝説のポケモンであるというブランド効果は絶大なのである。
私に都合よく懐いて惚れてくれたは良いが、私は別に絶世の美女という訳でもないし、人を惹きつける性格をしている訳でもない平々凡々な女。何がホウオウのお眼鏡に叶ったのかは知らないが、愛想を尽かされないに越したことは無いので現状維持の姿勢を徹底している。それに、強くて顔の良い男から心底愛されるというのも中々悪くない。色々と目を瞑れば、の話だが。
「もう正月の準備終わったんだろ?なら初詣という名の新年1発目デート行こうぜ」
「はいはい、用意してくるから待っててね」
「すぐ来いよ。この時間でも意外と混むからな」
「とりあえず明日は親戚の集まりがあるから、子供たちに渡すお年玉を今の内に入れておかないと……」
そんな事をぶつぶつ言いながら、予め銀行で引き出しておいた1万円札を封筒から取り出し、可愛い柄のポチ袋に1枚づつ入れて行く。
物価高を嘆く庶民の象徴の様な生活をしている私だが、ポケモントレーナーとしてある程度高い地位に立たせて貰っているので、収入は結構あると言って良い。とはいえ、この物価高と円安の時代に贅沢しようものなら一瞬でお金が飛んでいく為、質素倹約を徹底して余ったお金を全て貯金に回し、こういう時にきちんと使えるようにしているのである。それに、ポチ袋の封を開いた瞬間の従姉妹達の嬉しそうな顔を見るのは、一種の私の楽しみでもあるのだ。
今年も喜んでくれるといいな。そんな思いを込めながらお年玉を用意していると、突然後ろの部屋の扉が開き、派手な赤い髪色の男───もとい、私の手持ちであるホウオウがリビングへと入ってきた。炎タイプの癖に寒いのが苦手らしいので、片手にはちゃっかりカイロを握っている。一応暖房は彼の部屋にも付けてある筈なのだが。
「なにゴソゴソとお金数えてんだよ、俺にお年玉でもくれんのか?」
「お前の分な訳あるか。明日会う親戚の子供達の分よ」
「そんな冷たい事言うなよ」
そんな軽口を叩き、ちゃっかり私の隣に座ってくるホウオウ。ソファーが大きめだから良かったが、小さかったら今頃ぎゅうぎゅうに狭くなって私が弾き出されていたかもしれない。寝転がりたいからと大きめのソファーを買った過去の私に密かに感謝した。それはそうと、なぜ突然この男はリビングまでやって来たのか。「俺部屋で紅白見てるからな!」とわざわざ先程言いに来ていたので、今夜はずっと自室に閉じこもる気だと思っていたのだが。今更話し相手でも欲しくなったのだろうか。
「紅白見てるんじゃなかったの」
「飽きた。お前の声聞いてた方が良い」
「絶対紅白の方が良いと思うけど。今年のキャスト、凄く豪華だって聞いてるし」
「おれ芸能人とか歌手とか流行りとかそういうの分かんねえ」
「じゃあ何で紅白見てたんだ…」
そんな事を話している間にお年玉の用意が終わったので、手持ち無沙汰になってしまった私は仕方なくホウオウを構ってやることにした。飽きたとか言ってるが、どうせ1人で見るのが寂しくなっただけなのだろう。長い時を生きている伝説のポケモンの癖に、こういう所は笑ってしまうくらい不器用だ。
「あと少しで年が明けるな」
「今年も本当に色んなことがあったね、主に貴方に振り回されてばかりの1年だったけど」
「大事な女と一緒に居てテンション上がらねぇ男なんて居ないだろ」
「空気を読めって事よ」
「空気は吸うもんだ」
「黙らっしゃい」
ああ言えばこう言う、減らず口と屁理屈ばかり叩く我の強い男。しかし彼が私の仲間になってくれたお陰でポケモントレーナーとして今の地位に就けているので、この様なダル絡みをされても中々無下には出来ないのだ。他の手持ちだって決して弱いという訳では無く、世間一般で言う"無駄無く鍛え上げられたポケモン"の部類に入るが、やはり伝説のポケモンであるというブランド効果は絶大なのである。
私に都合よく懐いて惚れてくれたは良いが、私は別に絶世の美女という訳でもないし、人を惹きつける性格をしている訳でもない平々凡々な女。何がホウオウのお眼鏡に叶ったのかは知らないが、愛想を尽かされないに越したことは無いので現状維持の姿勢を徹底している。それに、強くて顔の良い男から心底愛されるというのも中々悪くない。色々と目を瞑れば、の話だが。
「もう正月の準備終わったんだろ?なら初詣という名の新年1発目デート行こうぜ」
「はいはい、用意してくるから待っててね」
「すぐ来いよ。この時間でも意外と混むからな」