出会えっこないけどね

もしも絵画夢主とExtraordinaryライコウが出会っていたら

ポケットにしまった大事な美術館のチケットを取り出して、私の分と彼の分、ちゃんと2枚揃っているか確認する。もしどこかに落としてしまっていたら大変だ。彼と久しぶりに会える上に、せっかくのデート日和だというのに。…でも、私の上着のポケットの中にある2枚のチケットは、自分達の出番が来るまでお行儀よく中で待っていてくれていた。それを確かめる事が出来て心底ほっとしながらまた前を向いて彼の元へと歩を進めようとした途端、不意に後ろから聞こえて来た男性の声が私を呼び止めた。

「ねえねえ、そこの君!こんな人気の無い所で何してんの?」

「え…別に…ただの散歩ですよ」

「ちょっとちょっと、そんな警戒しないでよ〜!こんな所に女の子が1人で居るなんて珍しいからさ、思わず声掛けちゃっただけ!」

何なんだコイツ、と思った。どぎつい香水の匂いを振り撒きながら女に声を掛ける金髪のチャラついた男。いかにも女慣れしてるロクデナシじゃないか。こんな奴に話しかけられるなんて不運中の不運。せっかく彼の為に苦手な早起きしてまでデートの用意したんだから、珍しく急上昇している私の気分を下げないで頂きたい。

「…それだけですか?私はこの先に用事があるので、これで失礼します」

「え?でも、さっき見てたチケットに書いてあった美術館ってさ、こっち側から逆方向じゃない?」

金髪男はそう言うと、私の上着のポケットに手を滑り込ませてチケットを1枚拝借し、それをまじまじと見つめた。急なことに驚いてポカーンと一部始終を見守っていると、金髪男は「ほら!ここから逆方向じゃん!」とご丁寧に指まで指して説明してくれた。何なんだコイツ第2弾。馴れ馴れしいことこの上ない。私はこう言う男が一番嫌いなのだけれど。

「もしかして、一緒に行く相手居ない感じ?」

「いいえ!ちゃんと居ます!良いからそのチケット返して!」

「良いから良いから!強がんなって。せっかくなら俺が一緒に行ってやるよ」

「…は!?」

そう言うと男はエスコートするように私の腕を引いて、美術館の方へとずんずん歩いていく。しかも私が逃げない様に腰にガッチリと腕を回しながら。こういう所だけ無駄に器用なのも、女癖の悪い男に共通している習性だ。クソ、こんな所で気持ちの悪い男に引っかかってしまうなんて。今日こそは彼に会いに行きたかったのに。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この一部始終を見ていた某2人が密かにホッとしてたりしてなかったり。

まあ世界線が違うから出会える筈も無いんだけどね