ギラティナ
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桜の花弁が春風で舞い、向日葵が太陽の如く眩しく咲き、やがて紅葉が色付き、雪化粧を纏った椿が落ちる。そんな自然の美しい移り変わりを楽しむのが人生の醍醐味だと、その女は言った。何処にでもいるような、平凡で特徴の無い容姿をした女だったが、その瞳の奥からはどこか人を惹きつける眩い光が放たれていた。その光は人も獣も、種族の壁を越えて何でも虜にし、どんな者でも惹き付けた。私も、その内の1人であった。
私は光を求めていた。闇を寄せ付けず、何物にも汚される事の無い、そんな純粋な光を欲していた。ずっと暗い世界の最奥で孤独に生きてきた故の、寂しさだったのかもしれない。兎に角私の虚構を包んでくれる、優しい光に触れてみたかったのだ。最早飢えに近い感覚であったかもしれない。そして、ずっと探し続けたその光に出会えた時、私は決してそれを離さないと誓ったのだ。
「この世界に花は咲かないの?」
私の世界──やぶれた世界──に己の愛獣と共にやって来た時。彼女はその異質さに驚く事も無く、私の姿を見て怖がる事もせず、ただ静かに私に向かってそう問い掛けてきた。この空間に似合わない、眩い光をその真っ直ぐな瞳に乗せて。
この世界に存在しない光と相見える事が叶った事と、初めてこの世界に自分以外の存在が来てくれた事で、気分が高揚していたのだろう。気付けば私は身体の形を獣から人間の姿に変え、その人間とくだらない話に興じていた。本来の目的である戦いを放棄して。そして、先程の彼女の発言に至る。「この世界に花は咲くのか?」と。その言葉を受けた私は、ただ静かにこう答えていた。
「...この世界には陽の光も、水も、土も備わって居ない。そんな空間にそもそも花が咲くと思うか?」
「...つまらない空間。貴方はずっとこんな所で暮らしていたの?」
「時たま表の世界に出る事はあれど、基本はここで世界を見守っていた。それが私の生き方だ」
伏せていた瞳を少し開き、永遠に月も星も浮かぶことの無い、空洞の様な黒い空を見上げる。私のその動作に習い、女も上を向いて空を眺める。2人揃って何も無い空を見上げている絵面は傍から見れば酷く滑稽に映るだろう。しかし私にとってはかけがえのないものであった。不思議だ、女と私は出会ったばかりだというのに。ただ2、3言だけ会話を交わしただけの、さよならという別れの言葉一つで終わる関係。素性も知れぬただの女と孤独な神。共通点など一つも無い、出会えた事すら奇跡と呼べる立場。
「...こんな、何も無い世界で?」
「そうだな。この世界には何も無い。だが、お前達にとって無くてはならない世界でもある」
「...それ、本で読んだ事がある。私達の世界の裏側には、やぶれた世界があると。そこは反物質を司る神 ...貴方が住む世界だって。考古学者の知り合いに借りた本に、そう書いてあった。私ね、ずっと貴方に会いたかったの。この世界で孤独に生きる貴方を、一目見てみたいって」
女はそう言って空から目を離し、また私の顔を見据えた。嗚呼、その瞳の輝きに魅せられれば何も身動きが取れなくなる。思考は乱され、身体は固まり、私はその光だけを欲した。そして彼女は私にそっとボールを当てた。見た事はあれど、決して自分には当てられる事の無かった、赤と白のツートンカラーをしたその球体。そのボールから放たれる光に包まれた私は、漸くもう孤独に縛られる事は無いのだと静かに安堵し、彼女の掌に収められた。
今や私と彼女の空間には、色とりどりの花が隙間なく咲き誇り、私の世界に彩りを与えている。
私は光を求めていた。闇を寄せ付けず、何物にも汚される事の無い、そんな純粋な光を欲していた。ずっと暗い世界の最奥で孤独に生きてきた故の、寂しさだったのかもしれない。兎に角私の虚構を包んでくれる、優しい光に触れてみたかったのだ。最早飢えに近い感覚であったかもしれない。そして、ずっと探し続けたその光に出会えた時、私は決してそれを離さないと誓ったのだ。
「この世界に花は咲かないの?」
私の世界──やぶれた世界──に己の愛獣と共にやって来た時。彼女はその異質さに驚く事も無く、私の姿を見て怖がる事もせず、ただ静かに私に向かってそう問い掛けてきた。この空間に似合わない、眩い光をその真っ直ぐな瞳に乗せて。
この世界に存在しない光と相見える事が叶った事と、初めてこの世界に自分以外の存在が来てくれた事で、気分が高揚していたのだろう。気付けば私は身体の形を獣から人間の姿に変え、その人間とくだらない話に興じていた。本来の目的である戦いを放棄して。そして、先程の彼女の発言に至る。「この世界に花は咲くのか?」と。その言葉を受けた私は、ただ静かにこう答えていた。
「...この世界には陽の光も、水も、土も備わって居ない。そんな空間にそもそも花が咲くと思うか?」
「...つまらない空間。貴方はずっとこんな所で暮らしていたの?」
「時たま表の世界に出る事はあれど、基本はここで世界を見守っていた。それが私の生き方だ」
伏せていた瞳を少し開き、永遠に月も星も浮かぶことの無い、空洞の様な黒い空を見上げる。私のその動作に習い、女も上を向いて空を眺める。2人揃って何も無い空を見上げている絵面は傍から見れば酷く滑稽に映るだろう。しかし私にとってはかけがえのないものであった。不思議だ、女と私は出会ったばかりだというのに。ただ2、3言だけ会話を交わしただけの、さよならという別れの言葉一つで終わる関係。素性も知れぬただの女と孤独な神。共通点など一つも無い、出会えた事すら奇跡と呼べる立場。
「...こんな、何も無い世界で?」
「そうだな。この世界には何も無い。だが、お前達にとって無くてはならない世界でもある」
「...それ、本で読んだ事がある。私達の世界の裏側には、やぶれた世界があると。そこは
女はそう言って空から目を離し、また私の顔を見据えた。嗚呼、その瞳の輝きに魅せられれば何も身動きが取れなくなる。思考は乱され、身体は固まり、私はその光だけを欲した。そして彼女は私にそっとボールを当てた。見た事はあれど、決して自分には当てられる事の無かった、赤と白のツートンカラーをしたその球体。そのボールから放たれる光に包まれた私は、漸くもう孤独に縛られる事は無いのだと静かに安堵し、彼女の掌に収められた。
今や私と彼女の空間には、色とりどりの花が隙間なく咲き誇り、私の世界に彩りを与えている。
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