ホウオウ
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「綺麗な瞳、ですね」
自慢の羽で悠々と空を飛んでいたら不運にも突然の雨に降られた哀れな俺。そんな俺の大事な羽根が濡れて飛べなくなってしまう前に…と急いで地上に降りて姿を人間の形に変え、丁度近くにあった土産屋の軒下でぼーっと雨が止むのを待っていた。そんな平凡な昼の午後3時。
じっとりと身体に纏わりついてくる湿気にうんざりしながら佇んでいた俺に、同じく隣で雨宿りをしていた妙齢の女が、俺を見上げながら確かにそう言った。急な事に驚いて声を発せずにいる俺の瞳を、女は未だ凝視し続けている。そんな様子を見て内心「礼儀知らずな人間だな」と感じたが、褒められたせいかそれとも驚きのほうが勝ったせいか、不思議と不愉快さは感じなかった。長い間ここで立ち続けていて暇だった事もあってか、その不思議な女の言葉と行動に自然と興味を惹かれた俺は、この無遠慮な女と暇潰しがてら話してみることにした。
「…そう言われて悪い気はしねえな。だけど知らない男に女がいきなり話しかけるのは危険だぜ」
「別に良いじゃありませんか。綺麗なものを綺麗と言って何が悪いんです。それとも貴方は話し掛けられたくらいで私を襲う気なのですか?」
「そんな事しねえよ。盛りのついた獣じゃあるまいし」
「なら構わないじゃないですか」
…若干話の通じない女だが、我の強さなら俺も負けてはいないのでここは敢えて何も言わない事にした。そんな細かい事を一々気にしていては身が持たないのは、長年生きてきた己の経験から良く知っている。
目の前の女は未だ俺の瞳から目を離す素振りを見せない。その様子はまるで妖に魅入られてしまったかの様だ。そんなにこいつ俺の瞳が気に入ったのか。確かに自分の瞳が人間離れした──本当に俺は人間では無いのだが──珍しい色だという自覚はあるが、だからといって今までこんなに凝視された事など無い。本当にこいつ不思議な女だな浮世離れしすぎだろと呑気に思っていると、不意に女が一言。
「雨が強く降りしきる中で、必死に雨宿りの場所を探していたんです。そしたら貴方の瞳が雨で視界の悪い中でもお構い無しに美しく輝いていたから、そのお陰でこうして此処を見つける事が出来て、私は今雨に濡れる事無く居られるのです」
確かによく見ると女の服や髪は水滴が滴る程によく濡れていて、此処を見つけて雨宿りをするまでに長い事雨に降られていた様子が伺える。だからこんな執着する様に俺の瞳を見つめてるのかこの女。と漸く合点が行った俺は、まあ人助けした様なものだから誇っていいのか…?と複雑な感情に苛まれながらも、取り敢えず寒そうで見ていられないので身に付けていた上着を女の肩にさりげなく掛けてやった。
「…申し訳ありません、突然こんな事言われても訳が分からないですよね」
「何で謝んだよ。さっきまで遠慮無しに俺の顔じっと見つめて来てた癖に」
「…恋を、してしまったのです」
「は?恋?」
「…はい」
''貴方の美しい瞳に助けられた私は、そのまま魅入られて恋に落ちてしまったのです''と、女は頬を赤らめながら確かにそう言った。いやいやどういう事だよ新手の逆ナンかよ貴方の瞳に恋しましたなんてフレーズ今の時代誰も使わねえよとそんなまとまりの無い言葉の羅列が俺の脳内を一瞬で駆け巡ったが、どう見ても目の前の女はナンパして男で遊ぶ様なタイプの風貌ではないし、そんな欲に塗れた雰囲気を漂わせていない。我の強い唯一無二の強かな性格はさて置き、見た目だけなら本当に何処にでも居るような女だ。…そして何より、俺の瞳を食い入るように見つめているその目が本気 だった。
「…俺じゃなくて、俺の目に惚れたって訳か?」
「はい、その通りです」
「…正気かお前、そもそも俺人間じゃねえぞ」
「正気ですよ勿論。それに、そんなの雰囲気でとっくに分かってました」
真剣な眼差しでそう言う女に対して、俺の口から軽く溜息が漏れた。そこまで言うなら仕方無い。一度惚れさせた手前(俺自身に女が惚れた訳では無いが)雨が止んだらここでさよならと言うのも何だか忍びない。上着も貸している事だし、ここは一つ連絡先でも交換するか!と色々吹っ切れて俺が女の方に向き直った瞬間、俺が口を開くより先に女がにっこり笑顔でこう放った。
「連絡先、交換致しませんか」
それを聞いて、本当にお前何もかもが手の早い女だな。という俺の言葉は、口に出されることなく女への呆れと共にどこかへと消えていった。
「ところでお前の名前何なんだよ」
「ナマエと申します。そういう貴方は?」
「…いずれ必ず分かるさ」
「何ですかそれ」
自慢の羽で悠々と空を飛んでいたら不運にも突然の雨に降られた哀れな俺。そんな俺の大事な羽根が濡れて飛べなくなってしまう前に…と急いで地上に降りて姿を人間の形に変え、丁度近くにあった土産屋の軒下でぼーっと雨が止むのを待っていた。そんな平凡な昼の午後3時。
じっとりと身体に纏わりついてくる湿気にうんざりしながら佇んでいた俺に、同じく隣で雨宿りをしていた妙齢の女が、俺を見上げながら確かにそう言った。急な事に驚いて声を発せずにいる俺の瞳を、女は未だ凝視し続けている。そんな様子を見て内心「礼儀知らずな人間だな」と感じたが、褒められたせいかそれとも驚きのほうが勝ったせいか、不思議と不愉快さは感じなかった。長い間ここで立ち続けていて暇だった事もあってか、その不思議な女の言葉と行動に自然と興味を惹かれた俺は、この無遠慮な女と暇潰しがてら話してみることにした。
「…そう言われて悪い気はしねえな。だけど知らない男に女がいきなり話しかけるのは危険だぜ」
「別に良いじゃありませんか。綺麗なものを綺麗と言って何が悪いんです。それとも貴方は話し掛けられたくらいで私を襲う気なのですか?」
「そんな事しねえよ。盛りのついた獣じゃあるまいし」
「なら構わないじゃないですか」
…若干話の通じない女だが、我の強さなら俺も負けてはいないのでここは敢えて何も言わない事にした。そんな細かい事を一々気にしていては身が持たないのは、長年生きてきた己の経験から良く知っている。
目の前の女は未だ俺の瞳から目を離す素振りを見せない。その様子はまるで妖に魅入られてしまったかの様だ。そんなにこいつ俺の瞳が気に入ったのか。確かに自分の瞳が人間離れした──本当に俺は人間では無いのだが──珍しい色だという自覚はあるが、だからといって今までこんなに凝視された事など無い。本当にこいつ不思議な女だな浮世離れしすぎだろと呑気に思っていると、不意に女が一言。
「雨が強く降りしきる中で、必死に雨宿りの場所を探していたんです。そしたら貴方の瞳が雨で視界の悪い中でもお構い無しに美しく輝いていたから、そのお陰でこうして此処を見つける事が出来て、私は今雨に濡れる事無く居られるのです」
確かによく見ると女の服や髪は水滴が滴る程によく濡れていて、此処を見つけて雨宿りをするまでに長い事雨に降られていた様子が伺える。だからこんな執着する様に俺の瞳を見つめてるのかこの女。と漸く合点が行った俺は、まあ人助けした様なものだから誇っていいのか…?と複雑な感情に苛まれながらも、取り敢えず寒そうで見ていられないので身に付けていた上着を女の肩にさりげなく掛けてやった。
「…申し訳ありません、突然こんな事言われても訳が分からないですよね」
「何で謝んだよ。さっきまで遠慮無しに俺の顔じっと見つめて来てた癖に」
「…恋を、してしまったのです」
「は?恋?」
「…はい」
''貴方の美しい瞳に助けられた私は、そのまま魅入られて恋に落ちてしまったのです''と、女は頬を赤らめながら確かにそう言った。いやいやどういう事だよ新手の逆ナンかよ貴方の瞳に恋しましたなんてフレーズ今の時代誰も使わねえよとそんなまとまりの無い言葉の羅列が俺の脳内を一瞬で駆け巡ったが、どう見ても目の前の女はナンパして男で遊ぶ様なタイプの風貌ではないし、そんな欲に塗れた雰囲気を漂わせていない。我の強い唯一無二の強かな性格はさて置き、見た目だけなら本当に何処にでも居るような女だ。…そして何より、俺の瞳を食い入るように見つめているその目が
「…俺じゃなくて、俺の目に惚れたって訳か?」
「はい、その通りです」
「…正気かお前、そもそも俺人間じゃねえぞ」
「正気ですよ勿論。それに、そんなの雰囲気でとっくに分かってました」
真剣な眼差しでそう言う女に対して、俺の口から軽く溜息が漏れた。そこまで言うなら仕方無い。一度惚れさせた手前(俺自身に女が惚れた訳では無いが)雨が止んだらここでさよならと言うのも何だか忍びない。上着も貸している事だし、ここは一つ連絡先でも交換するか!と色々吹っ切れて俺が女の方に向き直った瞬間、俺が口を開くより先に女がにっこり笑顔でこう放った。
「連絡先、交換致しませんか」
それを聞いて、本当にお前何もかもが手の早い女だな。という俺の言葉は、口に出されることなく女への呆れと共にどこかへと消えていった。
「ところでお前の名前何なんだよ」
「ナマエと申します。そういう貴方は?」
「…いずれ必ず分かるさ」
「何ですかそれ」
1/1ページ
