コバルオン
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初めて足を踏み入れたあの頃と比べ、すっかり軽くなってしまった足取りで私は今日もこの洞窟に足を踏み入れる。こんな暗くてじめじめした場所に好んで近付く人間など、このイッシュ地方にはきっと私以外存在しないだろう。
英雄と崇められ、リーグの頂点にまで上り詰め、ほぼ全てのポケモンを力で捻じ伏せ捕獲出来るまでに成長した私だが、それでも手の届かない存在というものがある。何百と投げた幾多のボールを全て弾かれ躱され、挙句の果てに「お前に捕まる気はない」と面と向かって言われても尚諦めない私も私だが、何度会いに来られても全く誘いに乗ってくれない強情な彼も彼だ。
こんな陰気臭い洞窟を住処にしているから考えが昔のままで凝り固まってしまうんだ。私と一緒に地上に出て明るい場所で過ごしたほうが絶対マシなのに。まあ無理強いしすぎて洞窟出禁にされたら元も子もないから面と向かってこんな事言わないけど。
「おはよー、コバルオン」
「...またお前か、ナマエ」
こいつ性懲りも無くまた来たのか。とでも言いたげな彼の視線をガン無視し、私は「どうせ朝ご飯まだでしょ?ご飯持ってきたよ」と家から持って来た木の実を鞄から出してコバルオンの前に適当に広げてやった。いや男に会いに行くならせめてお弁当くらい作って来いよという言葉が聞こえてきそうだが、生まれながらにしてママの子宮の中に器用さを忘れてきたガサツで不器用なこの私に手料理なんて求めないで欲しい。それに人間嫌いの彼が私の作った料理なんて食べてくれる訳ないだろうし。これで良いのだ、これで。
「相変わらず私のポケモンになる気の無さそうな態度だね、コバルオン」
「人間嫌いな聖剣士のリーダーがそう易々と人間に従うと思うな馬鹿者」
「そんな事言って、本当は嬉しいんじゃないの。私がここに来て」
「今までの私の態度と言葉を見て何故そう思えるのかが甚だ疑問なのだが。相変わらずの脳内お花畑女だなお前は」
そんな毒を私に吐き捨てながらも、ちゃっかり私の持って来た木の実を器用に剥いて頬張っている聖剣士のリーダー様もといコバルオン。何故彼がここまで人間を嫌っているのかは本で読んだ伝承と人から聞いた噂でしか知らないが、そんな中でも1つ確かな事は、彼は意外と健啖家だという事だ。人間から差し出された食べ物なんて、例えそれが元々自然の中で実っていた木の実であれど彼にとっては口に入れたく無い筈の物だろう。それなのにこうして毎回食べてくれるのだから、伝説の聖剣士と呼ばれる凄いポケモンであれど食欲には抗えないという事だ。こうして見れば普通のポケモンと何ら大差は無い。
「昨日、君のお仲間達にも会ってきたんだよ」
「ほう。あの2匹は何か言っていたか」
「概ね初対面の時の君と似た様な感じだったかな。「人間が我らの地に何の用だ」って門前払いされちゃった」
「そうか。彼らが変わりないようで私も何よりだ」
そう言って緩く口角を上げ、琥珀の様に美しい金色の瞳をそっと瞼の中に閉じ込めた彼。彼とその同胞らの固く結ばれている絆は、ぽっと出のちっぽけな小娘である私には到底手出しも出来ない様なもの。私が彼を手に入れられないのはひとえに彼が人間嫌いであるからだ。だからこそ、彼と同じ種族で、彼を昔から知っていて、彼と共に戦う事の出来たあの2匹が、私はどうにも羨ましくて仕方が無いのだ。まあこの醜い嫉妬心を彼に気付かれる訳にはいかないから、私はずっとこの醜い感情を内に秘める選択しか取れない訳だが。
「…彼らに会いに行かないの?きっと君を待ってる筈だよ」
「いいや、私は此処に居る。彼等にも私にも、もう自分の居場所があるのだから。それを壊す訳にもいかないだろう」
「…そう。ところで、私の手持ち、まだ1枠空いてるんだけど」
「お断りだ。誰かに従うのは性に合わん」
ここで「なら私と一緒に居てくれるだけでいいから」と食い下がる事が出来ない私は、ずっと大切な事を彼に打ち明ける事の叶わない弱い女なのだろう。同じ地方の遠い場所に居る2匹の仲間を思いながら静かに木の実を嚥下する彼の表情と風に揺れるコバルト色の艶やかな髪を見て、密かにそう思った。
英雄と崇められ、リーグの頂点にまで上り詰め、ほぼ全てのポケモンを力で捻じ伏せ捕獲出来るまでに成長した私だが、それでも手の届かない存在というものがある。何百と投げた幾多のボールを全て弾かれ躱され、挙句の果てに「お前に捕まる気はない」と面と向かって言われても尚諦めない私も私だが、何度会いに来られても全く誘いに乗ってくれない強情な彼も彼だ。
こんな陰気臭い洞窟を住処にしているから考えが昔のままで凝り固まってしまうんだ。私と一緒に地上に出て明るい場所で過ごしたほうが絶対マシなのに。まあ無理強いしすぎて洞窟出禁にされたら元も子もないから面と向かってこんな事言わないけど。
「おはよー、コバルオン」
「...またお前か、ナマエ」
こいつ性懲りも無くまた来たのか。とでも言いたげな彼の視線をガン無視し、私は「どうせ朝ご飯まだでしょ?ご飯持ってきたよ」と家から持って来た木の実を鞄から出してコバルオンの前に適当に広げてやった。いや男に会いに行くならせめてお弁当くらい作って来いよという言葉が聞こえてきそうだが、生まれながらにしてママの子宮の中に器用さを忘れてきたガサツで不器用なこの私に手料理なんて求めないで欲しい。それに人間嫌いの彼が私の作った料理なんて食べてくれる訳ないだろうし。これで良いのだ、これで。
「相変わらず私のポケモンになる気の無さそうな態度だね、コバルオン」
「人間嫌いな聖剣士のリーダーがそう易々と人間に従うと思うな馬鹿者」
「そんな事言って、本当は嬉しいんじゃないの。私がここに来て」
「今までの私の態度と言葉を見て何故そう思えるのかが甚だ疑問なのだが。相変わらずの脳内お花畑女だなお前は」
そんな毒を私に吐き捨てながらも、ちゃっかり私の持って来た木の実を器用に剥いて頬張っている聖剣士のリーダー様もといコバルオン。何故彼がここまで人間を嫌っているのかは本で読んだ伝承と人から聞いた噂でしか知らないが、そんな中でも1つ確かな事は、彼は意外と健啖家だという事だ。人間から差し出された食べ物なんて、例えそれが元々自然の中で実っていた木の実であれど彼にとっては口に入れたく無い筈の物だろう。それなのにこうして毎回食べてくれるのだから、伝説の聖剣士と呼ばれる凄いポケモンであれど食欲には抗えないという事だ。こうして見れば普通のポケモンと何ら大差は無い。
「昨日、君のお仲間達にも会ってきたんだよ」
「ほう。あの2匹は何か言っていたか」
「概ね初対面の時の君と似た様な感じだったかな。「人間が我らの地に何の用だ」って門前払いされちゃった」
「そうか。彼らが変わりないようで私も何よりだ」
そう言って緩く口角を上げ、琥珀の様に美しい金色の瞳をそっと瞼の中に閉じ込めた彼。彼とその同胞らの固く結ばれている絆は、ぽっと出のちっぽけな小娘である私には到底手出しも出来ない様なもの。私が彼を手に入れられないのはひとえに彼が人間嫌いであるからだ。だからこそ、彼と同じ種族で、彼を昔から知っていて、彼と共に戦う事の出来たあの2匹が、私はどうにも羨ましくて仕方が無いのだ。まあこの醜い嫉妬心を彼に気付かれる訳にはいかないから、私はずっとこの醜い感情を内に秘める選択しか取れない訳だが。
「…彼らに会いに行かないの?きっと君を待ってる筈だよ」
「いいや、私は此処に居る。彼等にも私にも、もう自分の居場所があるのだから。それを壊す訳にもいかないだろう」
「…そう。ところで、私の手持ち、まだ1枠空いてるんだけど」
「お断りだ。誰かに従うのは性に合わん」
ここで「なら私と一緒に居てくれるだけでいいから」と食い下がる事が出来ない私は、ずっと大切な事を彼に打ち明ける事の叶わない弱い女なのだろう。同じ地方の遠い場所に居る2匹の仲間を思いながら静かに木の実を嚥下する彼の表情と風に揺れるコバルト色の艶やかな髪を見て、密かにそう思った。
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