逢瀬
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「えー!!あのユンちゃんが女の子連れ込んでる!?何で!?まさかレイ...」
「こらエム、早朝なんだから静かにね」
「...全く人聞きの悪い」
まだ日の昇りきって居ない早朝から莫大な声量に叩き起こされた2人は、眉間に皺を寄せながらゆっくりと目を開けた。すっかりこの大声に慣れ切っているユクシーはともかく、ナマエにとっては人生で最も最悪であろう目覚めだった為、寝起きの機嫌も過去最低と言って良い程であったが、ユクシーが美味しい木の実を朝ご飯にと持って来てくれたのでその最低最悪な気分は長続きする事無く一瞬で吹き飛んで行ってしまった。全く現金な女である。それはそうと目の前にいる桃色と青色の人は一体誰なのか。ナマエが頭上にハテナを浮かべて不思議そうな顔をしていると、タイミング良く桃色の方が興味津々と言った様子でナマエへと近付いてきた。
「ねえ!貴女名前は?」
「あ、ナマエと申します...」
「アタシはエムリット!そんでアタシの隣に居るのがアグノムね!アタシ達2人共ユンちゃんの兄弟なの!」
昨日ナマエに自己紹介した際のユクシーと同じ様にそう誇らしげに言って見せたエムリットに対し、ナマエはまた同じ様に「...よろしくお願いします」と礼儀正しく頭を下げた。ナマエ自身学校に通っていた頃シンオウ神話について一通り習っていたので、勿論大昔にユクシーらが人々に感情、意思、知識の3つをもたらした偉大なる神様である事は知っていた。だがこの神様達はその事実をかなり誇りに思っている様子だった為、ここは「知っていますよ」と言いたい気持ちを堪えて彼らをよいしょともう一度昨日の様に持ち上げてやる事にしたのだった。
「それよりアンタ傷だらけじゃない!ちょっとユンちゃんこの子に何したの!?」
「こらエム、人聞きの悪いこと言わないの。ユクシーが人間に対して手を上げるなんて度胸ある訳ないだろ」
「それもそうねアグ!」
「あなた達そろそろぶん殴っても良いですかね」
あからさまに不機嫌そうな顔をしながらエムリットとアグノムを睨みつけたユクシーだが、その細く白い腕はエムリットらに振りかざされる事なく膝の上に置かれている為、勿論ただの冗談であった。だがユクシーのその言葉を聞いてわざとらしく身体を震え上がらせ、「きゃーユンちゃん怖い!ナマエ助けて!」とナマエの身体に思いっきり抱きついてきたエムリットに対し、超高火力のシャドーボールが飛んで来た事に関しては冗談でも何でも無かった。そんな不機嫌な様子のユクシーをアグノムが何とかなだめる事に成功し、ナマエの朝食の一時は一悶着ありながらも幕を閉じた。
「そういえば、この量の木の実って絶対食べ切れなさそうな量ですが、一体どこから...?」
「ここは神の住む湖。それ故、未だ信仰心の強い人間らが供物として木の実を置きに来るのです。まあ食べきれない分も勿論あるので、その分は野生のポケモンや浮浪者に分け与えています。私の為に供えて下さる方々には悪いですが、食物を粗末にする訳にもいきませんので」
「相変わらずユクシーその辺はちゃっかりしてるよね」
「ええ。神が生命あるものを無駄にする訳にはいきませんから...それはそうとナマエ、そろそろ傷の手入れに移りましょうか」
「あ、はい...」
ナマエの前に山積みになっている色とりどりの木の実をサイコキネシスで一気に隅の方へとどかし、ユクシーはガーゼやら軟膏やらをどこからともなくスっと取り出すと、容赦なくナマエの傷口へそれを当てがった。その途端傷が痛いやら薬が染みるやらで凄い勢いで飛び上がったナマエの身体をアグノムが苦笑しながら「ちょっとごめんね」と言って押さえ付ける。その力強さと容赦の無さに観念したナマエがエムリットに手を握ってもらいながらその優しさの欠片もない手入れに耐え抜いてみせると、ユクシーは満足気に「偉い偉い」と頷いてナマエの頭を撫でてくれた。
「あ、ありがとうございました...」
「どういたしまして、女性の身体に傷跡は残せませんから」
「わー!ユンちゃん珍しく紳士的!珍しく!」
「エム、またシャドーボール飛んでくるよ」
そうして仲睦まじく何も取り繕わずに素で会話している様子の3人を、ナマエは羨ましそうな顔をしながらじっと見つめていた。自分の人間性が歪んだものになっていなければ、完璧を目指していなければ、弟に対し関心を持てる良い姉でいれたなら、私もあんな風になれただろうかと、途端にナマエの心に黒いモヤが差す。そんな3人を見て醜い感情を持ってしまった自分を恥じたのか、はたまた傷口の痛みが徐々に引いて来てもう動ける様になったからか、ナマエは流れる様に「私、あまり家族を心配させたくないのでもう帰ります」と震える声で放った。
「...おや、もう帰ってしまうのですか」
「はい、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。今度またお礼をしに伺います」
そう言ってエイチ湖を後にして歩き出したナマエの背に「次会った時は敬語無しで良いからね!」と明るく叫ぶエムリットの優しさを感じながら、ナマエは足取り軽く帰路につくのだった。
「こらエム、早朝なんだから静かにね」
「...全く人聞きの悪い」
まだ日の昇りきって居ない早朝から莫大な声量に叩き起こされた2人は、眉間に皺を寄せながらゆっくりと目を開けた。すっかりこの大声に慣れ切っているユクシーはともかく、ナマエにとっては人生で最も最悪であろう目覚めだった為、寝起きの機嫌も過去最低と言って良い程であったが、ユクシーが美味しい木の実を朝ご飯にと持って来てくれたのでその最低最悪な気分は長続きする事無く一瞬で吹き飛んで行ってしまった。全く現金な女である。それはそうと目の前にいる桃色と青色の人は一体誰なのか。ナマエが頭上にハテナを浮かべて不思議そうな顔をしていると、タイミング良く桃色の方が興味津々と言った様子でナマエへと近付いてきた。
「ねえ!貴女名前は?」
「あ、ナマエと申します...」
「アタシはエムリット!そんでアタシの隣に居るのがアグノムね!アタシ達2人共ユンちゃんの兄弟なの!」
昨日ナマエに自己紹介した際のユクシーと同じ様にそう誇らしげに言って見せたエムリットに対し、ナマエはまた同じ様に「...よろしくお願いします」と礼儀正しく頭を下げた。ナマエ自身学校に通っていた頃シンオウ神話について一通り習っていたので、勿論大昔にユクシーらが人々に感情、意思、知識の3つをもたらした偉大なる神様である事は知っていた。だがこの神様達はその事実をかなり誇りに思っている様子だった為、ここは「知っていますよ」と言いたい気持ちを堪えて彼らをよいしょともう一度昨日の様に持ち上げてやる事にしたのだった。
「それよりアンタ傷だらけじゃない!ちょっとユンちゃんこの子に何したの!?」
「こらエム、人聞きの悪いこと言わないの。ユクシーが人間に対して手を上げるなんて度胸ある訳ないだろ」
「それもそうねアグ!」
「あなた達そろそろぶん殴っても良いですかね」
あからさまに不機嫌そうな顔をしながらエムリットとアグノムを睨みつけたユクシーだが、その細く白い腕はエムリットらに振りかざされる事なく膝の上に置かれている為、勿論ただの冗談であった。だがユクシーのその言葉を聞いてわざとらしく身体を震え上がらせ、「きゃーユンちゃん怖い!ナマエ助けて!」とナマエの身体に思いっきり抱きついてきたエムリットに対し、超高火力のシャドーボールが飛んで来た事に関しては冗談でも何でも無かった。そんな不機嫌な様子のユクシーをアグノムが何とかなだめる事に成功し、ナマエの朝食の一時は一悶着ありながらも幕を閉じた。
「そういえば、この量の木の実って絶対食べ切れなさそうな量ですが、一体どこから...?」
「ここは神の住む湖。それ故、未だ信仰心の強い人間らが供物として木の実を置きに来るのです。まあ食べきれない分も勿論あるので、その分は野生のポケモンや浮浪者に分け与えています。私の為に供えて下さる方々には悪いですが、食物を粗末にする訳にもいきませんので」
「相変わらずユクシーその辺はちゃっかりしてるよね」
「ええ。神が生命あるものを無駄にする訳にはいきませんから...それはそうとナマエ、そろそろ傷の手入れに移りましょうか」
「あ、はい...」
ナマエの前に山積みになっている色とりどりの木の実をサイコキネシスで一気に隅の方へとどかし、ユクシーはガーゼやら軟膏やらをどこからともなくスっと取り出すと、容赦なくナマエの傷口へそれを当てがった。その途端傷が痛いやら薬が染みるやらで凄い勢いで飛び上がったナマエの身体をアグノムが苦笑しながら「ちょっとごめんね」と言って押さえ付ける。その力強さと容赦の無さに観念したナマエがエムリットに手を握ってもらいながらその優しさの欠片もない手入れに耐え抜いてみせると、ユクシーは満足気に「偉い偉い」と頷いてナマエの頭を撫でてくれた。
「あ、ありがとうございました...」
「どういたしまして、女性の身体に傷跡は残せませんから」
「わー!ユンちゃん珍しく紳士的!珍しく!」
「エム、またシャドーボール飛んでくるよ」
そうして仲睦まじく何も取り繕わずに素で会話している様子の3人を、ナマエは羨ましそうな顔をしながらじっと見つめていた。自分の人間性が歪んだものになっていなければ、完璧を目指していなければ、弟に対し関心を持てる良い姉でいれたなら、私もあんな風になれただろうかと、途端にナマエの心に黒いモヤが差す。そんな3人を見て醜い感情を持ってしまった自分を恥じたのか、はたまた傷口の痛みが徐々に引いて来てもう動ける様になったからか、ナマエは流れる様に「私、あまり家族を心配させたくないのでもう帰ります」と震える声で放った。
「...おや、もう帰ってしまうのですか」
「はい、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。今度またお礼をしに伺います」
そう言ってエイチ湖を後にして歩き出したナマエの背に「次会った時は敬語無しで良いからね!」と明るく叫ぶエムリットの優しさを感じながら、ナマエは足取り軽く帰路につくのだった。