アルセウス
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大きな桜の木に背中を預け、私は1人でぼーっと考え事をし始めた。そうする事でしか今は暇を潰せないからだ。家から本でも数冊持ってくれば良かったと後悔するも、そんな事は後の祭り。
左腕に身につけている腕時計にチラリと目を向けてみると、それは丁度お昼の12時を指していた。まだそんな時間なのか、と少々げんなりした気持ちに襲われながらも昼食にと持ってきておいたお弁当箱の中からサンドイッチを取り出し、桜の花びらがはらはらと舞う様子を肴にもそもそとそれを貪る。レタスのシャキシャキとした食感を暫く楽しみながら静かにそれを嚥下すると、僅かだが腹が満たされたような気がした。
腹を満たすために暫くサンドイッチを口に入れては飲み込み、また口に入れては飲み込んでを繰り返していると、いつの間にか隣に人が座っていた事に気がついた。こんな所に人が来るなんて珍しいこともあるものだ。ぼーっと腹を満たす事だけに集中していた為気付くのが遅くなってしまった。...だが、少々警戒しながら隣に座る人物を確認してみると何ら警戒する必要も無い見知った顔の友人だった。ほっとしながら肩の力を抜いて件の人物に「久しぶり」と声を掛けてみると、相手も私の声に呼応する様に表情を緩ませて口を開けた。
「…久しいな、人間よ」
「種族名で呼ぶの辞めてって去年も言わなかったかしら?それとも私の名前忘れちゃった訳?」
「久しいな、ナマエ」
「よろしい」
手に持っていたサンドイッチを1度お弁当箱の中に戻して彼の方に向き直り、久しぶりに顔を合わせる友人へ人の良い笑みを顔に貼り付けて笑いかけてやれば、彼もまた硬い表情筋を何とか緩ませて此方に笑みを向けてくれた(傍から見ても全く口角は上がっていないが)。
「今年もまた貴方と一緒に桜が見れて嬉しいわ、アルセウス。見て、何度見ても本当に此処の桜は綺麗」
でも、花の美しさと見物客の多さって比例しないのね。とわざとらしくため息を吐いてみる。賑やかな場所はあまり好かないが、これだけ美しい場所なのだ、見物客が私と彼の2人だけというのも何だかこの桜の美しさを自分達だけの物にしてしまっている様で何だか後ろめたい。
「貴方もそう思わない?アルセウス」
「…此処は私の様な存在にとって唯一の憩いの場。それ故、他の人間に此処を知られるのは些か気分が悪い」
「...美しいものは独り占めって事?流石偉大なる創造神様、考えが私みたいな人間とはまるきり違ってるわね」
「そんな傍若無人な考えなどしていない。お前はもう少し人の考えを正しく理解出来る様な脳味噌を持つべきでは無いか」
眉根を寄せてムッとした様な表情(表情筋を動かすのが下手くそなせいで端正な顔が台無しになっている)を私に向けながら、アルセウスは私のお弁当箱の中から勝手にサンドイッチを拝借し、それを何食わぬ顔で口に運んだ。相変わらず礼儀もクソもない性格をしている神様だが、私の様な小娘に対して彼の様な大層な存在が礼儀正しく居るのも何だか不思議な感じなので、このままの関係が私たちにとってベストなのだろう。それに、元々私達は一年に一度、この桜の木が満開に咲き誇った時にしか会えないのだから。
「サンドイッチ美味しかった?」
「去年の方が美味だった」
「あらそう、今年のは結構自信作だったのに」
「冗談だ、今年のが1番美味い」
「貴方いつの間に冗談言えるようになったのね、初めて会った時はもう少し淡白な性格してたのに」
来年はもっと美味しいやつ作って来るから、絶対また来なさいよね。と私は彼にそう言って、空のお弁当箱を持ってこの美しい場所を後にするのだった。
来年また会いましょう
左腕に身につけている腕時計にチラリと目を向けてみると、それは丁度お昼の12時を指していた。まだそんな時間なのか、と少々げんなりした気持ちに襲われながらも昼食にと持ってきておいたお弁当箱の中からサンドイッチを取り出し、桜の花びらがはらはらと舞う様子を肴にもそもそとそれを貪る。レタスのシャキシャキとした食感を暫く楽しみながら静かにそれを嚥下すると、僅かだが腹が満たされたような気がした。
腹を満たすために暫くサンドイッチを口に入れては飲み込み、また口に入れては飲み込んでを繰り返していると、いつの間にか隣に人が座っていた事に気がついた。こんな所に人が来るなんて珍しいこともあるものだ。ぼーっと腹を満たす事だけに集中していた為気付くのが遅くなってしまった。...だが、少々警戒しながら隣に座る人物を確認してみると何ら警戒する必要も無い見知った顔の友人だった。ほっとしながら肩の力を抜いて件の人物に「久しぶり」と声を掛けてみると、相手も私の声に呼応する様に表情を緩ませて口を開けた。
「…久しいな、人間よ」
「種族名で呼ぶの辞めてって去年も言わなかったかしら?それとも私の名前忘れちゃった訳?」
「久しいな、ナマエ」
「よろしい」
手に持っていたサンドイッチを1度お弁当箱の中に戻して彼の方に向き直り、久しぶりに顔を合わせる友人へ人の良い笑みを顔に貼り付けて笑いかけてやれば、彼もまた硬い表情筋を何とか緩ませて此方に笑みを向けてくれた(傍から見ても全く口角は上がっていないが)。
「今年もまた貴方と一緒に桜が見れて嬉しいわ、アルセウス。見て、何度見ても本当に此処の桜は綺麗」
でも、花の美しさと見物客の多さって比例しないのね。とわざとらしくため息を吐いてみる。賑やかな場所はあまり好かないが、これだけ美しい場所なのだ、見物客が私と彼の2人だけというのも何だかこの桜の美しさを自分達だけの物にしてしまっている様で何だか後ろめたい。
「貴方もそう思わない?アルセウス」
「…此処は私の様な存在にとって唯一の憩いの場。それ故、他の人間に此処を知られるのは些か気分が悪い」
「...美しいものは独り占めって事?流石偉大なる創造神様、考えが私みたいな人間とはまるきり違ってるわね」
「そんな傍若無人な考えなどしていない。お前はもう少し人の考えを正しく理解出来る様な脳味噌を持つべきでは無いか」
眉根を寄せてムッとした様な表情(表情筋を動かすのが下手くそなせいで端正な顔が台無しになっている)を私に向けながら、アルセウスは私のお弁当箱の中から勝手にサンドイッチを拝借し、それを何食わぬ顔で口に運んだ。相変わらず礼儀もクソもない性格をしている神様だが、私の様な小娘に対して彼の様な大層な存在が礼儀正しく居るのも何だか不思議な感じなので、このままの関係が私たちにとってベストなのだろう。それに、元々私達は一年に一度、この桜の木が満開に咲き誇った時にしか会えないのだから。
「サンドイッチ美味しかった?」
「去年の方が美味だった」
「あらそう、今年のは結構自信作だったのに」
「冗談だ、今年のが1番美味い」
「貴方いつの間に冗談言えるようになったのね、初めて会った時はもう少し淡白な性格してたのに」
来年はもっと美味しいやつ作って来るから、絶対また来なさいよね。と私は彼にそう言って、空のお弁当箱を持ってこの美しい場所を後にするのだった。
来年また会いましょう
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