ケモノとヒトのコ
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ふかふかの布団の上でウインディのもふもふな毛に顔を埋めながら目を覚ますという至福の様な起床を決めて、私は昨日帰ってきてからそのまま放置していたリュックに昨夜使っていた携帯と地図、それからカメックスとウインディのモンスターボールを入れ直すと、それを持って台所へと降りて行った。
階段を降りる私の後ろを、カメックスとウインディが寝ぼけた顔をしながらトコトコと着いてくるのが無性に可愛くて、暫くよそ見しながら歩いていたら壁に額をぶつけてしまった。何だかいつものお母さんみたいな失敗じゃないか。何だ、血は争えないという奴か。
「おはようお母さん」
椅子に座っている母の背中にそう声を掛けてみるも、どうやら母は未だ夢の世界から脱出できていない様だった。朝食の準備をしようと寝室から台所まで何とか自力で移動してきた様だが、途中で力尽きたのか椅子の上でうつらうつらと船を漕いでいる。その様子をリザードンが呆れたように見つめていた。
「…お母さん、起きて」
「ん〜…サンダー?」
「私はお父さんじゃなくてなまえなんですけど」
「ん〜…」
ダメだこれ起きそうに無いなと私は早々に匙を投げ、後は母の頼れる相棒であるリザードンに任せておこうとそのまま船を漕ぐ母を放置して朝食の準備に取り掛かった。…と言っても昨日のカレーを温めてそのまま白米をよそったお皿にかけるだけなのだが。
「お母さん、朝ごはんできたよ」
「はーい…ありがと〜…」
目の前に皿を置いてカレーの美味しい香りを嗅がせても尚起きる気配がないので、私のウインディのもふもふな尻尾で軽く母の頬をぺしぺしと叩いてやれば、流石に擽ったかったのか漸く母の目が開いた。それを見て密かに溜息を付きながら、私もカレーをスプーンで口に運んだ。…うん、やっぱりカレーって2日目とか3日目の方が美味しいよね。
*
「ねえお母さん」
「ん?…どうしたのなまえ」
いつもと変わらない優しい眼差しで私を見つめる母。その隣には美味しそうに母のカレーを頬張っているリザードンの姿がある。私にとっては普段の日常と何ら変わりない風景だが、本来ならば母の隣にはお父さんが座っていた筈だ。お父さんは私を守る為に家を出て行ったと聞いたが、それは裏を返せば私のせいでお父さんが出て行ったという解釈も出来てしまう。母はその事に対し、どう思っているのだろうか。
私が生まれたせいで愛する夫と離れ離れになって、まとまった金を数ヶ月に1度送られる事でしかお父さんとの繋がりを確認出来なかった母。そんな母だって、お父さんが出て行った事に対して何も思うことが無い訳ではないだろうに。それでも、愛する人と一緒に居たいという気持ちを全て押し殺してまで、この十数年間私を守ってくれていた。…今度は、私が母に報いる番ではなかろうか。
「私ね、ここでお父さんとお母さんと一緒に暮らしたい。…だから、もう一度家を出て、これからお父さんを探しに行くつもり、です」
これまで母に自分の考えや思いを否定された事は全く無いけれど、やはり緊張してしまって最後の方はほぼ他人行儀みたいな話し方になってしまった。そのせいか気まづくて中々母の方を真っ直ぐ見ることが出来ない。視線を下に右往左往させていると、後ろにいたウインディに「しっかりしろ」と尻尾で頭を叩かれてしまった。痛い。
「なまえ」
「は、はい」
「…決めたからには、絶対サンダーの事、連れて帰って来てねっ!お母さん、楽しみに待ってるからね!」
「え」
…あれなんだこの展開は。私の意見を否定されるどころか、むしろ母にめちゃくちゃ賛成されている。母に本来生えていない筈の尻尾がブンブンと振られている様に見えるのは私だけだろうか。思わず肩の力がふっと抜けて、ふらふらと椅子の背もたれに身体を預けて深い溜息を吐けば、リザードンが同情する様に私を見た。なんだよ同情するなら金をくれよと、私の中の某家なき子が叫び出す。どうでもいいが今は金よりも落ち着きのあるまともな感性の母親が欲しいよ私は。
階段を降りる私の後ろを、カメックスとウインディが寝ぼけた顔をしながらトコトコと着いてくるのが無性に可愛くて、暫くよそ見しながら歩いていたら壁に額をぶつけてしまった。何だかいつものお母さんみたいな失敗じゃないか。何だ、血は争えないという奴か。
「おはようお母さん」
椅子に座っている母の背中にそう声を掛けてみるも、どうやら母は未だ夢の世界から脱出できていない様だった。朝食の準備をしようと寝室から台所まで何とか自力で移動してきた様だが、途中で力尽きたのか椅子の上でうつらうつらと船を漕いでいる。その様子をリザードンが呆れたように見つめていた。
「…お母さん、起きて」
「ん〜…サンダー?」
「私はお父さんじゃなくてなまえなんですけど」
「ん〜…」
ダメだこれ起きそうに無いなと私は早々に匙を投げ、後は母の頼れる相棒であるリザードンに任せておこうとそのまま船を漕ぐ母を放置して朝食の準備に取り掛かった。…と言っても昨日のカレーを温めてそのまま白米をよそったお皿にかけるだけなのだが。
「お母さん、朝ごはんできたよ」
「はーい…ありがと〜…」
目の前に皿を置いてカレーの美味しい香りを嗅がせても尚起きる気配がないので、私のウインディのもふもふな尻尾で軽く母の頬をぺしぺしと叩いてやれば、流石に擽ったかったのか漸く母の目が開いた。それを見て密かに溜息を付きながら、私もカレーをスプーンで口に運んだ。…うん、やっぱりカレーって2日目とか3日目の方が美味しいよね。
*
「ねえお母さん」
「ん?…どうしたのなまえ」
いつもと変わらない優しい眼差しで私を見つめる母。その隣には美味しそうに母のカレーを頬張っているリザードンの姿がある。私にとっては普段の日常と何ら変わりない風景だが、本来ならば母の隣にはお父さんが座っていた筈だ。お父さんは私を守る為に家を出て行ったと聞いたが、それは裏を返せば私のせいでお父さんが出て行ったという解釈も出来てしまう。母はその事に対し、どう思っているのだろうか。
私が生まれたせいで愛する夫と離れ離れになって、まとまった金を数ヶ月に1度送られる事でしかお父さんとの繋がりを確認出来なかった母。そんな母だって、お父さんが出て行った事に対して何も思うことが無い訳ではないだろうに。それでも、愛する人と一緒に居たいという気持ちを全て押し殺してまで、この十数年間私を守ってくれていた。…今度は、私が母に報いる番ではなかろうか。
「私ね、ここでお父さんとお母さんと一緒に暮らしたい。…だから、もう一度家を出て、これからお父さんを探しに行くつもり、です」
これまで母に自分の考えや思いを否定された事は全く無いけれど、やはり緊張してしまって最後の方はほぼ他人行儀みたいな話し方になってしまった。そのせいか気まづくて中々母の方を真っ直ぐ見ることが出来ない。視線を下に右往左往させていると、後ろにいたウインディに「しっかりしろ」と尻尾で頭を叩かれてしまった。痛い。
「なまえ」
「は、はい」
「…決めたからには、絶対サンダーの事、連れて帰って来てねっ!お母さん、楽しみに待ってるからね!」
「え」
…あれなんだこの展開は。私の意見を否定されるどころか、むしろ母にめちゃくちゃ賛成されている。母に本来生えていない筈の尻尾がブンブンと振られている様に見えるのは私だけだろうか。思わず肩の力がふっと抜けて、ふらふらと椅子の背もたれに身体を預けて深い溜息を吐けば、リザードンが同情する様に私を見た。なんだよ同情するなら金をくれよと、私の中の某家なき子が叫び出す。どうでもいいが今は金よりも落ち着きのあるまともな感性の母親が欲しいよ私は。