ケモノとヒトのコ
Name Change
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『おいなまえ、そろそろ着くぞ』
「はーい」
ふたごじまから北へと飛ぶことおよそ1時間。ふたごじま周辺を覆っている冷気のせいでついさっきまでは羽根を動かすのもやっとだったが、マサラタウン側に近付いていくにつれて段々とその凍えてしまう様な冷気が春の陽気に変わってゆく。そうして俺達はようやく待ち侘びた我が家へと到着しようとしていた。
ここに来るのもいつぶりだろうか。俺が名前と2人で住んでいた頃から全く何も無いと言って良い程ここは過疎化した街だった。此処を離れてから何か新しい物が出来ていれば良いと密かに思っていたが、俺が出て行った時と全く変わりないその平凡な街並みに思わず苦笑が漏れる。
『…此処は何も変わんねえな』
「そりゃ田舎だもん。平和で落ち着いてて、住みやすい所だと思う」
『…そうだよな、何事も平和が1番だよな』
俺の羽ばたきの音よりも明瞭に、なまえがそうハッキリとした言葉を放つ。なまえ自身この街で名前と2人健やかに育って来たのだから、このマサラタウンという街に対する思い入れは人一倍強いのだろう。
俺が出て行った後、名前はなまえの世話を全て1人でこなして来た。その結果娘は家を出て行った父親を無理やり見つけだして力づくで家へ連れ帰ろうとするという何とも脳筋…いや、気の強い女に成長を遂げたが、これも母親としてなまえを健やかに成長させてくれた名前のおかげと言える。
数ヶ月に1度名前に送っていたあの大金は、各地方に1人は居るであろう幾多のポケモン博士達に、俺のサンダーという種族に関するあまり知られていない情報を売って稼いだ金だ。少なくともあまり綺麗と呼べる金では無い。きっと名前となまえがその事を知れば、「信天翁」だの「自己犠牲野郎」だのと散々罵られる事だろう。
だが俺はそれでも良かった。お前達2人が何も困ること無く平和に暮らしてさえいてくれれば、それだけで良いと思っていたんだ。
「お母さんは、私の方からお父さんについて聞いてくるまで、絶対に自分からお父さんの事を私に言わなかった」
『…ほう?』
「きっとお母さんは、私が自分の意思でお父さんを探しに行くという形を望んでいたんだと思う。1度家から出ていくのを許した手前、自分からお父さんを迎えに行くのが忍びなかったんじゃないかな」
『その名前の目論見は、十数年越しに見事叶えられたって訳か』
あいつは昔からどこか抜けている様な何も出来ないちっぽけな女に見られる事の多い奴だったが、その人間性の根幹部にある芯の強さと家族への愛情は確かに本物だった。だからこそ名前の愛情を溢れるくらい注がれながら育ったなまえは、その愛情の中にある母親の目論見に気づく事が出来たのだろう。
或る意味名前の仕向けた事は、浅く見てみればなまえを良い様に使役して家族3人でまた過ごしたかっただけの様に見えるかもしれない。それも確かに間違ってはいないだろうし、寧ろ正解に近い解答だろう。だが、それ以上に名前は食えない女だ。きっと粗方、成長した娘を俺に突き付けて、突然家を出た仕返しがてら俺をちょっと驚かせたかっただけかもしれないし、それ以上に深い理由があるのかもしれない。
だが結局理由がどうであれ、これからまた家族3人で暮らせる事に変わりは無いのだ。だから、少しだけ目を瞑っておいてやる事にしよう。
「お父さん、お家見えて来たよ。家の前にお母さんも立ってる」
『ハッ、俺達が寒い中凍えそうになりながら帰ってきたっつーのにあいつは呑気にあったかい場所で出迎えかよ』
「お母さんに聞こえないからって好き放題言わないのお父さん」
感動の再会が果たされるまで、あと僅か数秒。
「はーい」
ふたごじまから北へと飛ぶことおよそ1時間。ふたごじま周辺を覆っている冷気のせいでついさっきまでは羽根を動かすのもやっとだったが、マサラタウン側に近付いていくにつれて段々とその凍えてしまう様な冷気が春の陽気に変わってゆく。そうして俺達はようやく待ち侘びた我が家へと到着しようとしていた。
ここに来るのもいつぶりだろうか。俺が名前と2人で住んでいた頃から全く何も無いと言って良い程ここは過疎化した街だった。此処を離れてから何か新しい物が出来ていれば良いと密かに思っていたが、俺が出て行った時と全く変わりないその平凡な街並みに思わず苦笑が漏れる。
『…此処は何も変わんねえな』
「そりゃ田舎だもん。平和で落ち着いてて、住みやすい所だと思う」
『…そうだよな、何事も平和が1番だよな』
俺の羽ばたきの音よりも明瞭に、なまえがそうハッキリとした言葉を放つ。なまえ自身この街で名前と2人健やかに育って来たのだから、このマサラタウンという街に対する思い入れは人一倍強いのだろう。
俺が出て行った後、名前はなまえの世話を全て1人でこなして来た。その結果娘は家を出て行った父親を無理やり見つけだして力づくで家へ連れ帰ろうとするという何とも脳筋…いや、気の強い女に成長を遂げたが、これも母親としてなまえを健やかに成長させてくれた名前のおかげと言える。
数ヶ月に1度名前に送っていたあの大金は、各地方に1人は居るであろう幾多のポケモン博士達に、俺のサンダーという種族に関するあまり知られていない情報を売って稼いだ金だ。少なくともあまり綺麗と呼べる金では無い。きっと名前となまえがその事を知れば、「信天翁」だの「自己犠牲野郎」だのと散々罵られる事だろう。
だが俺はそれでも良かった。お前達2人が何も困ること無く平和に暮らしてさえいてくれれば、それだけで良いと思っていたんだ。
「お母さんは、私の方からお父さんについて聞いてくるまで、絶対に自分からお父さんの事を私に言わなかった」
『…ほう?』
「きっとお母さんは、私が自分の意思でお父さんを探しに行くという形を望んでいたんだと思う。1度家から出ていくのを許した手前、自分からお父さんを迎えに行くのが忍びなかったんじゃないかな」
『その名前の目論見は、十数年越しに見事叶えられたって訳か』
あいつは昔からどこか抜けている様な何も出来ないちっぽけな女に見られる事の多い奴だったが、その人間性の根幹部にある芯の強さと家族への愛情は確かに本物だった。だからこそ名前の愛情を溢れるくらい注がれながら育ったなまえは、その愛情の中にある母親の目論見に気づく事が出来たのだろう。
或る意味名前の仕向けた事は、浅く見てみればなまえを良い様に使役して家族3人でまた過ごしたかっただけの様に見えるかもしれない。それも確かに間違ってはいないだろうし、寧ろ正解に近い解答だろう。だが、それ以上に名前は食えない女だ。きっと粗方、成長した娘を俺に突き付けて、突然家を出た仕返しがてら俺をちょっと驚かせたかっただけかもしれないし、それ以上に深い理由があるのかもしれない。
だが結局理由がどうであれ、これからまた家族3人で暮らせる事に変わりは無いのだ。だから、少しだけ目を瞑っておいてやる事にしよう。
「お父さん、お家見えて来たよ。家の前にお母さんも立ってる」
『ハッ、俺達が寒い中凍えそうになりながら帰ってきたっつーのにあいつは呑気にあったかい場所で出迎えかよ』
「お母さんに聞こえないからって好き放題言わないのお父さん」
感動の再会が果たされるまで、あと僅か数秒。