ケモノとヒトのコ
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娘を背に乗せて満天の星空の中を羽ばたくことおよそ数時間。ようやくふたごじまへと到着したので、俺は自分の姿を人間の形へと変えて旧友の住む拠点へと歩き出した。
背中で眠る娘が全く身動ぎしていない様子を見るに、どうやらグッスリと熟睡してしまっているらしい。こんな寒い所でよくもまあ眠れるものだなと感心しながら拠点の扉を2、3回ノックすれば、最近めっきり顔を合わせていなかった旧友が歯ブラシ片手に出迎えてくれた。
「え、サンダーじゃん。何だよこんな時間に…いや会えて嬉しいけどさ」
「おう久々だなフリーザー。つーか何でこんな時間に歯磨きしてんだお前」
「そりゃ鳥ポケモンの朝は早いからね」
ほら、取り敢えず上がりなよ。と言われ、俺は娘をおんぶしながらフリーザーの拠点へと足を踏み入れた。相変わらず肌寒くて殺風景な場所だなと失礼な事を考えながら椅子に座ると、フリーザーが2人分の飲み物を持ってきてくれた。ちなみに中身は見た事も聞いた事も無いブランドの洒落た紅茶だった。それに驚いて「お前こんな趣味してたか?」と聞いてみれば、どうやらファイヤーが随分前に土産に持ってきた物らしい。成程アイツの仕業か。ならば合点がいく。
「…ところでその子は?」
「あ?見て分からねえか?俺の娘だよ」
「あぁ、成程その子が…ていうか全然似てないね。サンダーの子だから、目付きも柄も悪い糞ガキだと思ってたよ」
「何言ってんだお前相変わらず失礼なヤツだな」
紅茶を啜りながら暫くそんな談笑をしていた所、隣に座らせていたなまえが「うーん…」と唸ってようやく目を覚ました。辺りをキョロキョロ見渡しながら寝ぼけ眼で不思議そうな顔をしている娘に「おはようさん」と言ってやれば、やっと脳味噌が覚醒したのか「あ、おはようお父さん」と娘も掠れた声でそう口を開いた。
「ところでここは?」
「ふたごじまにあるコイツの拠点だ。ほら、コイツに自己紹介してやれ」
「あ、この人の娘のなまえです」
「僕はフリーザー。サンダーとは腐れ縁みたいな関係なんだ、宜しくね」
そうして2人に自己紹介させて暫く身体を温めるついでに3人で談笑に生じていると、フリーザーが「…やっと君達、家族で暮らせる様になったんだね」と感慨深そうにそう言った。それに対し「あぁ」と短い返事を返せば、なまえが不思議そうにまた首を傾げる。
「フリーザーさん、どこまで私達の事についてご存知なんですか…?」
「ああ、サンダーから色々と相談されたりしてたから、君達家族についてある程度の事は知っているよ」
「まあ何処ぞのヘタレよりもコイツの方がまだマシな方だからな」
「サンダー、それファイヤーが聞いたら怒ると思うよ」
そんな話を繰り返すこと数十分。カップの中の紅茶もすっかり飲み干してしまって、そろそろお暇しようかと俺は椅子から立ち上がった。そろそろ太陽が昇り始める時間になるし、なるべく今日中に名前の待つ家へと帰ってしまいたい。その意をフリーザーに伝えるべく口を開こうとすれば、それより早くフリーザーが何やら話し始めた。
「良かったね、サンダー。やっと幸せを掴む事が出来て」
「はっ、何言ってんだ急に」
「…君は家族について僕に話している時、ずっと悲しそうな顔してた。いつかまた3人揃って暮らせたらって嘆いてた事もあったよね。それでも君は、自ら家族と離れてその子を守る選択を取った」
「…そんな事もあったっけか」
正直ここ最近はめっきりフリーザーの所に来ていなかったので、今フリーザーが言ったことを全て覚えているかと聞かれれば自信が無い。
確かに家を出たばかりの頃は時たま此処にやって来てはフリーザーに色々話を聞いてもらったりしていたが、いつしか時が過ぎれば外の世界にも自分の居場所というものが出来る。そのせいか、最後にここに顔を出したのはいつだったかなんてもう覚えてすらいない。だがそのせいで、こいつにはどれだけ迷惑と心配をかけただろう。
「色々と迷惑かけたな、フリーザー」
「別にそれはもう良いよ。サンダー、君は幸せになるべきだ。君にはその権利がある」
「…いつも冷徹でクールぶってるお前にそんな事言われるなんて夢にも思わなかったぜ」
そう言い残して俺は元の姿に戻り、娘を背に乗せてまた空へと駆け上がり大きく羽ばたいてふたごじまを後にした。最後にふと下を見てみれば、そこには旧友が、俺達が見えなくなるまで見送ってくれていたのだった。
マサラタウンまで、あと少し
背中で眠る娘が全く身動ぎしていない様子を見るに、どうやらグッスリと熟睡してしまっているらしい。こんな寒い所でよくもまあ眠れるものだなと感心しながら拠点の扉を2、3回ノックすれば、最近めっきり顔を合わせていなかった旧友が歯ブラシ片手に出迎えてくれた。
「え、サンダーじゃん。何だよこんな時間に…いや会えて嬉しいけどさ」
「おう久々だなフリーザー。つーか何でこんな時間に歯磨きしてんだお前」
「そりゃ鳥ポケモンの朝は早いからね」
ほら、取り敢えず上がりなよ。と言われ、俺は娘をおんぶしながらフリーザーの拠点へと足を踏み入れた。相変わらず肌寒くて殺風景な場所だなと失礼な事を考えながら椅子に座ると、フリーザーが2人分の飲み物を持ってきてくれた。ちなみに中身は見た事も聞いた事も無いブランドの洒落た紅茶だった。それに驚いて「お前こんな趣味してたか?」と聞いてみれば、どうやらファイヤーが随分前に土産に持ってきた物らしい。成程アイツの仕業か。ならば合点がいく。
「…ところでその子は?」
「あ?見て分からねえか?俺の娘だよ」
「あぁ、成程その子が…ていうか全然似てないね。サンダーの子だから、目付きも柄も悪い糞ガキだと思ってたよ」
「何言ってんだお前相変わらず失礼なヤツだな」
紅茶を啜りながら暫くそんな談笑をしていた所、隣に座らせていたなまえが「うーん…」と唸ってようやく目を覚ました。辺りをキョロキョロ見渡しながら寝ぼけ眼で不思議そうな顔をしている娘に「おはようさん」と言ってやれば、やっと脳味噌が覚醒したのか「あ、おはようお父さん」と娘も掠れた声でそう口を開いた。
「ところでここは?」
「ふたごじまにあるコイツの拠点だ。ほら、コイツに自己紹介してやれ」
「あ、この人の娘のなまえです」
「僕はフリーザー。サンダーとは腐れ縁みたいな関係なんだ、宜しくね」
そうして2人に自己紹介させて暫く身体を温めるついでに3人で談笑に生じていると、フリーザーが「…やっと君達、家族で暮らせる様になったんだね」と感慨深そうにそう言った。それに対し「あぁ」と短い返事を返せば、なまえが不思議そうにまた首を傾げる。
「フリーザーさん、どこまで私達の事についてご存知なんですか…?」
「ああ、サンダーから色々と相談されたりしてたから、君達家族についてある程度の事は知っているよ」
「まあ何処ぞのヘタレよりもコイツの方がまだマシな方だからな」
「サンダー、それファイヤーが聞いたら怒ると思うよ」
そんな話を繰り返すこと数十分。カップの中の紅茶もすっかり飲み干してしまって、そろそろお暇しようかと俺は椅子から立ち上がった。そろそろ太陽が昇り始める時間になるし、なるべく今日中に名前の待つ家へと帰ってしまいたい。その意をフリーザーに伝えるべく口を開こうとすれば、それより早くフリーザーが何やら話し始めた。
「良かったね、サンダー。やっと幸せを掴む事が出来て」
「はっ、何言ってんだ急に」
「…君は家族について僕に話している時、ずっと悲しそうな顔してた。いつかまた3人揃って暮らせたらって嘆いてた事もあったよね。それでも君は、自ら家族と離れてその子を守る選択を取った」
「…そんな事もあったっけか」
正直ここ最近はめっきりフリーザーの所に来ていなかったので、今フリーザーが言ったことを全て覚えているかと聞かれれば自信が無い。
確かに家を出たばかりの頃は時たま此処にやって来てはフリーザーに色々話を聞いてもらったりしていたが、いつしか時が過ぎれば外の世界にも自分の居場所というものが出来る。そのせいか、最後にここに顔を出したのはいつだったかなんてもう覚えてすらいない。だがそのせいで、こいつにはどれだけ迷惑と心配をかけただろう。
「色々と迷惑かけたな、フリーザー」
「別にそれはもう良いよ。サンダー、君は幸せになるべきだ。君にはその権利がある」
「…いつも冷徹でクールぶってるお前にそんな事言われるなんて夢にも思わなかったぜ」
そう言い残して俺は元の姿に戻り、娘を背に乗せてまた空へと駆け上がり大きく羽ばたいてふたごじまを後にした。最後にふと下を見てみれば、そこには旧友が、俺達が見えなくなるまで見送ってくれていたのだった。
マサラタウンまで、あと少し