運ばれてきたルームサービスの食事を終え、私達はそれぞれ入浴やら着替えやらを終えると、荷物を纏めて受付のジョーイさんに部屋の鍵を返し、ポケモンセンターを後にした。

ふと空を見上げてみたら、空の上でキラキラと輝いている星々の光が私の目を刺激する。空というものは朝も夜も関係なく眩しいものなんだなあと思いながら父と共に人目のつかない場所へ移動し、パッと原型の姿に戻った父の背に素早く飛び乗れば、すぐさま私達は暗闇と同化して空の上へと消えていった。

『ふたごじままで遠いから、背中で眠ってろよ』

「ううん、お父さんと一緒にお話してたい」

『何だよそれ』

ここで言うのもアレだが、どうやら私はでんきタイプのポケモンとは会話する事が出来るらしい。多分もう少し父の血が濃かったら全てのポケモン達と話せたのだろうが、別に私はこれで良いと思っている。別にポケモン達と会話が出来なくとも最低限の意思疎通は出来ているし、話す事が出来なくとも私とポケモン達の間には確かな絆がある。まあ話せるに越したことはないのだろうが、その辺はご愛嬌だ。

「今から会いに行く人って人間？それともポケモン？」

『だーから会ってからのお楽しみだっての！お前は黙って俺にしっかりしがみついてろ』

「はーい」

空の上を飛びながら南にあるふたこじまを目指してカントーの夜空を飛び続ける親子。こんな遅い時間に何やってるんだこいつらと第三者が見たら思いそうだが、そもそも暗がりの中で夜空に溶け込むようにして飛んでいる鳥ポケモンの姿が見える人間なんてそうそういないだろうから大丈夫だろう。そんな事をぼんやり頭の中で考えていたら段々眠気に襲われて来たので、父の背中に顔を押し付けるようにして目を瞑れば、父が飛ぶ速度を少し遅くしてくれた。

「ごめん、少し寝る…」

『ああ、いい夢見ろよなまえ』

そんな父の優しい言葉に後押しされながら、私は不思議の国へと落ちてゆくアリスの様に、ウトウトと眠りの世界へと迷い込んで行ったのだった。