ケモノとヒトのコ
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暫く向かい合いながらお互いを感慨深そうに見つめ合っていると、やがて沈黙に耐えかねたのか、父が徐に口を開いた。
「…まあ、''何で此処に来たんだ''とか''どうやって俺の事を知ったんだ''とか、色々と聞きてえ事は山程あるが…敢えて今は聞かねえ事にしとくぜ。…立派に成長したんだな、なまえ」
「…うん!」
その言葉に思いっきり頷いて父の所に駆け寄れば、父は私の身体をしっかりと抱きしめてくれた。その温もりと優しさが私の心に染み込んで来て、いつの間にか私の瞳から大粒の涙が溢れ出して来ていたが、父の腕の中に身体をがっしり閉じ込められているので拭う事が出来ない。その涙はどんどん父の服に大きな染みを作っていったが、父はそれを気にする事無く、ずっと私の頭を撫で続けてくれた。
「…ていうかお父さん、何で一目見ただけで私が自分の娘だって分かったの?」
「そりゃあお前…名前とほとんど顔が瓜二つだからに決まってんだろ。それにあんだけ耳元でお父さんお父さん叫ばれたら嫌でも娘だって分かるわ」
「えぇ、私そんなにお母さんと似てる?大袈裟じゃない?」
父の腕から抜け出し、暫く座ってそんな他愛の無い話をしていれば、十数年離れ離れだったブランクなんてすぐさま消し飛んで行ってしまった。いくら長い間会ってなかったとはいえ、親子間に置ける無条件の親しみやすさというものは決して消えない。それと同時に、ああやっぱりこの人は私のお父さんなんだなあと、しみじみと感じたのだった。
*
「ところでなまえ、何でお前今更こんな所まではるばるやって来たんだよ。まあ何となく俺絡みなのは予想出来るが」
「え、来ちゃ駄目だった?一応親子なのに」
「いやまあ親子なのは違いねえけどな…?でもほら、一応名前から俺が出て行った理由は聞いてんだろ?それを知ってて何でわざわざ会いに来たのかって聞いてんだよ」
「…それは、」
父のその何でも見透かしてしまうような鋭い目付きに射抜かれ、私は戦いて口ごもってしまった。そんな私の様子を見抜いた父の目付きが一瞬だけ緩んだが、またすぐ元の目付きに戻ってしまう。
「また私達と一緒に暮らそうよ」たったこれだけの事を言うだけなのに、何故私の口は動いてくれないのだ。…それはきっと昔の母と同じように、私達を守ろうとして自ら家を離れた父の気持ちを尊重しようとしているからだ。母だって父と離れたくは無かっただろうに、自分の気持ちを押し殺してまで父を見送った。その選択はきっと正解だ。父が出ていけば、私も母も他人に脅かされる事無く平和に暮らせるし、実際平和だった。
…だが私は母とは違う。どれだけ母と似ていようが母の血の方が濃く受け継がれていようが、大切な人が自分から離れて行きそうな時に、それを黙って指を咥えて見ているだけなんて絶対に耐えられない。それに母と約束したじゃないか、必ず父を連れて家に帰ってくると。ここまで来て父と再会出来たのに、呑気に1人でのこのこ家に帰ってたまるか。ようやく会えたのだから、どれだけ嫌と言われようが絶対家に父を連れて帰ってやる。ええい女は度胸よ頑張れ私。
「ねえお父さん、私達ともう一度一緒に暮らそうよ」
「は、お前何言って…」
「私、旅をしてとっても強くなったの。ポケモンリーグで頂点にも立ったし、お母さんのリザードンみたいな頼れる相棒も出来た…もう私、自分の身は自分で守れるくらい強くなったんだよ。…だから、2人で家に戻ろう。お母さんも待ってるよ」
「…あのな、俺はこの十数年間お前の為に、」
「その''私''が、自分で自分の身を守れるくらい強くなったんだから良いでしょ?…それとも、お父さんはもう私達と暮らしたく無くなっちゃった?」
ここで娘の必殺泣き落とし。先程感動の再会を果たしたお陰か、威力はかなり倍増している様子。流石の父も、ようやく会えた娘を泣かせるのは忍びないのだろう、分かりやすいくらい狼狽えている。だがしかし父の中にもまた譲れないものがあるのか、渋々と言った様子で首を横に振ってしまう。そんな父に、私は畳み掛ける様にこう放った。
「良いって言うまでここから出て行かないから」
「あのなあなまえ、」
「お父さん…!」
何かまたもごもごと言い出した父を思いっきり睨みつけ、話を遮るように強い口調で父を呼べば、父は観念したようにツンツンした頭をガシガシ掻いて「…分かったよ」と溜息をつきながら首を縦に振ってくれた。それを見て「ほんと!?」と驚きながらも思いっきり感謝の意を込めて父に抱きつけば、上からまた溜息が振ってくる。その事に気付いてないフリをして、私は父の手を引きながらルンルンで無人発電所を後にするのだった。
「…まあ、''何で此処に来たんだ''とか''どうやって俺の事を知ったんだ''とか、色々と聞きてえ事は山程あるが…敢えて今は聞かねえ事にしとくぜ。…立派に成長したんだな、なまえ」
「…うん!」
その言葉に思いっきり頷いて父の所に駆け寄れば、父は私の身体をしっかりと抱きしめてくれた。その温もりと優しさが私の心に染み込んで来て、いつの間にか私の瞳から大粒の涙が溢れ出して来ていたが、父の腕の中に身体をがっしり閉じ込められているので拭う事が出来ない。その涙はどんどん父の服に大きな染みを作っていったが、父はそれを気にする事無く、ずっと私の頭を撫で続けてくれた。
「…ていうかお父さん、何で一目見ただけで私が自分の娘だって分かったの?」
「そりゃあお前…名前とほとんど顔が瓜二つだからに決まってんだろ。それにあんだけ耳元でお父さんお父さん叫ばれたら嫌でも娘だって分かるわ」
「えぇ、私そんなにお母さんと似てる?大袈裟じゃない?」
父の腕から抜け出し、暫く座ってそんな他愛の無い話をしていれば、十数年離れ離れだったブランクなんてすぐさま消し飛んで行ってしまった。いくら長い間会ってなかったとはいえ、親子間に置ける無条件の親しみやすさというものは決して消えない。それと同時に、ああやっぱりこの人は私のお父さんなんだなあと、しみじみと感じたのだった。
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「ところでなまえ、何でお前今更こんな所まではるばるやって来たんだよ。まあ何となく俺絡みなのは予想出来るが」
「え、来ちゃ駄目だった?一応親子なのに」
「いやまあ親子なのは違いねえけどな…?でもほら、一応名前から俺が出て行った理由は聞いてんだろ?それを知ってて何でわざわざ会いに来たのかって聞いてんだよ」
「…それは、」
父のその何でも見透かしてしまうような鋭い目付きに射抜かれ、私は戦いて口ごもってしまった。そんな私の様子を見抜いた父の目付きが一瞬だけ緩んだが、またすぐ元の目付きに戻ってしまう。
「また私達と一緒に暮らそうよ」たったこれだけの事を言うだけなのに、何故私の口は動いてくれないのだ。…それはきっと昔の母と同じように、私達を守ろうとして自ら家を離れた父の気持ちを尊重しようとしているからだ。母だって父と離れたくは無かっただろうに、自分の気持ちを押し殺してまで父を見送った。その選択はきっと正解だ。父が出ていけば、私も母も他人に脅かされる事無く平和に暮らせるし、実際平和だった。
…だが私は母とは違う。どれだけ母と似ていようが母の血の方が濃く受け継がれていようが、大切な人が自分から離れて行きそうな時に、それを黙って指を咥えて見ているだけなんて絶対に耐えられない。それに母と約束したじゃないか、必ず父を連れて家に帰ってくると。ここまで来て父と再会出来たのに、呑気に1人でのこのこ家に帰ってたまるか。ようやく会えたのだから、どれだけ嫌と言われようが絶対家に父を連れて帰ってやる。ええい女は度胸よ頑張れ私。
「ねえお父さん、私達ともう一度一緒に暮らそうよ」
「は、お前何言って…」
「私、旅をしてとっても強くなったの。ポケモンリーグで頂点にも立ったし、お母さんのリザードンみたいな頼れる相棒も出来た…もう私、自分の身は自分で守れるくらい強くなったんだよ。…だから、2人で家に戻ろう。お母さんも待ってるよ」
「…あのな、俺はこの十数年間お前の為に、」
「その''私''が、自分で自分の身を守れるくらい強くなったんだから良いでしょ?…それとも、お父さんはもう私達と暮らしたく無くなっちゃった?」
ここで娘の必殺泣き落とし。先程感動の再会を果たしたお陰か、威力はかなり倍増している様子。流石の父も、ようやく会えた娘を泣かせるのは忍びないのだろう、分かりやすいくらい狼狽えている。だがしかし父の中にもまた譲れないものがあるのか、渋々と言った様子で首を横に振ってしまう。そんな父に、私は畳み掛ける様にこう放った。
「良いって言うまでここから出て行かないから」
「あのなあなまえ、」
「お父さん…!」
何かまたもごもごと言い出した父を思いっきり睨みつけ、話を遮るように強い口調で父を呼べば、父は観念したようにツンツンした頭をガシガシ掻いて「…分かったよ」と溜息をつきながら首を縦に振ってくれた。それを見て「ほんと!?」と驚きながらも思いっきり感謝の意を込めて父に抱きつけば、上からまた溜息が振ってくる。その事に気付いてないフリをして、私は父の手を引きながらルンルンで無人発電所を後にするのだった。