Extraordinary!
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ここどこ…?」
目を覚ました途端、そこは先程まで閉じ込められていた狭くて暗い錆れた学校の倉庫…ではなく、明るくてどこもかしこもピカピカで広々とした、立派な御殿であった。だが私は知っての通り、先程まで倉庫の中に閉じ込められていた筈だ。もしかして、誰かが私を倉庫から助けてくれたのだろうか。でもこんなに立派な部屋、私は来た事ないぞ…?まさか誘拐か?なんて事をブツブツ呟きながら考えていると、段々と頭が混乱してきてしまった。ここは一体何処なのだ。学校の保健室でも無さそうだし、かといって私の家はこんな立派ではない筈だ。両親がそこそこのお金を叩いて建てた、普通のどこにでもありそうな狭い一軒家だ。やはり誘拐されたのだろうか。粗方倉庫の中で眠っていた私を誰かが攫って来たとしか考えられないのだが。被害妄想とかではなく本当に。
混乱してまともに回っていない頭でそんな事を考えていた途端、部屋の扉がガラリと開いたと同時に何とも人間離れした雰囲気を持つ端正な顔の男が部屋に入ってきた。その男は長い睫毛に縁取られた赤色の瞳に私を捉えると、嬉しそうに此方へ近づいてきた。尚、この間約0.3秒。いくら何でも早すぎやしないか。私も私で何故声の一つも上げなかったのか甚だ疑問なのだが、言い訳させて貰うと脳がまだ上手く働いていなかったのに加え、男の美しさに驚きすぎて声すら出せなかったのだ。面食いなのは自覚していたが、まさかそれが己の身を滅ぼすだなんて考えもしなかった。
「あんたやっと起きたんか…2日間も起きひんかったさかい心配したんやぞ?」
「え…?」
眉尻を八の字に下げながら瞳に涙を浮かべてそう言った男の言葉に私は耳を疑った。2日間も目を覚まさなかったって一体どういう事なのだ。そもそもここは何処で、貴方は一体誰なんですか。そう聞きたいのは山々だが、此方も此方で目覚めたばかりで声帯が上手く働いてくれないのだ。この男が今言っていた事が本当なら、私は2日間ずっと眠っていた事になる。ならばこの乾ききって声の一つも出せない喉も、気だるくて布団から起き上がる事すら出来ない身体についても合点がいく。
「とりあえず、水…水を、くだ…さい…」
布団に横たわったままの、寝起き特有の浮腫んだ顔と相まって何とも間抜けな姿で水を要求すると、男は「分かった分かった、喉乾いとる筈やんな」と言って水を持ってきてくれた。その水を全て飲み干して漸く声が出せる様になったのを見計らって、私は男に向かって口を開く。
「あの…貴方は一体誰なんでしょうか…?」
一応礼儀知らずな小娘だとは思われたくない為、名前を聞く前に「私はナマエと言います」とだけ男に伝えておいた。一応2日間私の面倒を見ていてくれたらしいので、最低限の礼儀は払っておくべきだろうと思っての事だ。
「俺は…まああんま人間には言いたく無いんやけど、スイクン言うねん。ほんまの名前やなくて、あくまで種族名やけどな」
「え、種族名…?」
その言葉に私は耳を疑った。否誰だって疑う筈だ。人間離れした美貌はさておき、どこからどう見ても同じ人間としか思えない男性が自分の種族を知らない動物(?)の名前で言い出したら誰だって耳を疑うに決まってる。ていうかそもそもスイクンって何だ。何の動物だ。
「スイクン…?スイクンって何ですか…?」
「…スイクンはスイクンやで?ほら、ジョウト地方の神話って聞いた事あらへん?そこに載っとった水色のポケモンや」
「ジョウト地方…神話…ポケモン…?すみません、何を仰っているのか…」
「あかん、話噛み合っとらんなあこれ…てかお嬢さん、あんたもしかしてやけど、ポケモンすら知らへんの…!?」
男性(以後スイクンさん)はギョッとした顔でまじまじと私を見やると、「マジかよコイツ」とでも言うような顔をした。何故こちらがそんな顔をされなければいけないのか些か疑問ではあるが、大人しく「はい…」とだけ答えておいた。ポケモンといえばよくテレビで取り上げられているあのアドベンチャー式ゲームが思い当たるが、多分あれの事だろうか。生憎私はゲームに然程興味を示さなかった子供だった為、実際にプレイした事は無いが。
「ポケモン知らへん人間なんてこの世界では以ての外やん!?まあ屋敷の前に倒れとった時点でおかしいけど…お嬢さんあんた、一体どの地方から来たん?」
「え、えっと、地方と言いますか…」
見ず知らずの人に住所を教えるのに抵抗はあったが、スイクンさんとの話の噛み合わなさを見るに、此処は多分、私の居た世界では無いんだと…思う。いや認めたく無いんだけど、先程までのスイクンさんの話し方に、私を黙そうとしている様な感じは見受けられなかった。とすると考えられる事はただ1つ。ここは私の居た世界ではなく、多分2次元の…言わばポケモンの世界だという事。そう考えれば私の住所もこの世界には存在しないと思う(多分)ので、まあ住所を言ってしまっても問題ないだろう。
そして案の定、スイクンさんは私の言った住所を聞いて、更に頭を抱えてしまった。いや2日間も面倒見させといて更に困らせるなんて申し訳なさすぎないか…と思ったが、此方も本当の事を話しているだけなのだ…だがまあ本当にごめんなさいそんなに困らせて。
「そないな住所ほんまに聞いた事あらへんのやけど…?でもまあ嘘ついとる様には見えへんしなあ…それに嘘やとしても、こんなに存在せん地名とか番地とかパッと思いつくもんでもないやろうし…」
ブツブツとそう呟いていたスイクンさんは、やがてぱっと顔を上げたと思うと、静かにこう呟いた。
「まさかあんた…この世界の人やあらへん感じか…?」
多分それでご明答です。
目を覚ました途端、そこは先程まで閉じ込められていた狭くて暗い錆れた学校の倉庫…ではなく、明るくてどこもかしこもピカピカで広々とした、立派な御殿であった。だが私は知っての通り、先程まで倉庫の中に閉じ込められていた筈だ。もしかして、誰かが私を倉庫から助けてくれたのだろうか。でもこんなに立派な部屋、私は来た事ないぞ…?まさか誘拐か?なんて事をブツブツ呟きながら考えていると、段々と頭が混乱してきてしまった。ここは一体何処なのだ。学校の保健室でも無さそうだし、かといって私の家はこんな立派ではない筈だ。両親がそこそこのお金を叩いて建てた、普通のどこにでもありそうな狭い一軒家だ。やはり誘拐されたのだろうか。粗方倉庫の中で眠っていた私を誰かが攫って来たとしか考えられないのだが。被害妄想とかではなく本当に。
混乱してまともに回っていない頭でそんな事を考えていた途端、部屋の扉がガラリと開いたと同時に何とも人間離れした雰囲気を持つ端正な顔の男が部屋に入ってきた。その男は長い睫毛に縁取られた赤色の瞳に私を捉えると、嬉しそうに此方へ近づいてきた。尚、この間約0.3秒。いくら何でも早すぎやしないか。私も私で何故声の一つも上げなかったのか甚だ疑問なのだが、言い訳させて貰うと脳がまだ上手く働いていなかったのに加え、男の美しさに驚きすぎて声すら出せなかったのだ。面食いなのは自覚していたが、まさかそれが己の身を滅ぼすだなんて考えもしなかった。
「あんたやっと起きたんか…2日間も起きひんかったさかい心配したんやぞ?」
「え…?」
眉尻を八の字に下げながら瞳に涙を浮かべてそう言った男の言葉に私は耳を疑った。2日間も目を覚まさなかったって一体どういう事なのだ。そもそもここは何処で、貴方は一体誰なんですか。そう聞きたいのは山々だが、此方も此方で目覚めたばかりで声帯が上手く働いてくれないのだ。この男が今言っていた事が本当なら、私は2日間ずっと眠っていた事になる。ならばこの乾ききって声の一つも出せない喉も、気だるくて布団から起き上がる事すら出来ない身体についても合点がいく。
「とりあえず、水…水を、くだ…さい…」
布団に横たわったままの、寝起き特有の浮腫んだ顔と相まって何とも間抜けな姿で水を要求すると、男は「分かった分かった、喉乾いとる筈やんな」と言って水を持ってきてくれた。その水を全て飲み干して漸く声が出せる様になったのを見計らって、私は男に向かって口を開く。
「あの…貴方は一体誰なんでしょうか…?」
一応礼儀知らずな小娘だとは思われたくない為、名前を聞く前に「私はナマエと言います」とだけ男に伝えておいた。一応2日間私の面倒を見ていてくれたらしいので、最低限の礼儀は払っておくべきだろうと思っての事だ。
「俺は…まああんま人間には言いたく無いんやけど、スイクン言うねん。ほんまの名前やなくて、あくまで種族名やけどな」
「え、種族名…?」
その言葉に私は耳を疑った。否誰だって疑う筈だ。人間離れした美貌はさておき、どこからどう見ても同じ人間としか思えない男性が自分の種族を知らない動物(?)の名前で言い出したら誰だって耳を疑うに決まってる。ていうかそもそもスイクンって何だ。何の動物だ。
「スイクン…?スイクンって何ですか…?」
「…スイクンはスイクンやで?ほら、ジョウト地方の神話って聞いた事あらへん?そこに載っとった水色のポケモンや」
「ジョウト地方…神話…ポケモン…?すみません、何を仰っているのか…」
「あかん、話噛み合っとらんなあこれ…てかお嬢さん、あんたもしかしてやけど、ポケモンすら知らへんの…!?」
男性(以後スイクンさん)はギョッとした顔でまじまじと私を見やると、「マジかよコイツ」とでも言うような顔をした。何故こちらがそんな顔をされなければいけないのか些か疑問ではあるが、大人しく「はい…」とだけ答えておいた。ポケモンといえばよくテレビで取り上げられているあのアドベンチャー式ゲームが思い当たるが、多分あれの事だろうか。生憎私はゲームに然程興味を示さなかった子供だった為、実際にプレイした事は無いが。
「ポケモン知らへん人間なんてこの世界では以ての外やん!?まあ屋敷の前に倒れとった時点でおかしいけど…お嬢さんあんた、一体どの地方から来たん?」
「え、えっと、地方と言いますか…」
見ず知らずの人に住所を教えるのに抵抗はあったが、スイクンさんとの話の噛み合わなさを見るに、此処は多分、私の居た世界では無いんだと…思う。いや認めたく無いんだけど、先程までのスイクンさんの話し方に、私を黙そうとしている様な感じは見受けられなかった。とすると考えられる事はただ1つ。ここは私の居た世界ではなく、多分2次元の…言わばポケモンの世界だという事。そう考えれば私の住所もこの世界には存在しないと思う(多分)ので、まあ住所を言ってしまっても問題ないだろう。
そして案の定、スイクンさんは私の言った住所を聞いて、更に頭を抱えてしまった。いや2日間も面倒見させといて更に困らせるなんて申し訳なさすぎないか…と思ったが、此方も本当の事を話しているだけなのだ…だがまあ本当にごめんなさいそんなに困らせて。
「そないな住所ほんまに聞いた事あらへんのやけど…?でもまあ嘘ついとる様には見えへんしなあ…それに嘘やとしても、こんなに存在せん地名とか番地とかパッと思いつくもんでもないやろうし…」
ブツブツとそう呟いていたスイクンさんは、やがてぱっと顔を上げたと思うと、静かにこう呟いた。
「まさかあんた…この世界の人やあらへん感じか…?」
多分それでご明答です。