Extraordinary!
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「だーから違ぇっての!特性がもらいびのポケモンがほのお技を受けた時に上がる炎の威力は1.5倍!2倍も上がる訳ねえだろ!さっき散々俺教えたよな!?」
「す、すみません…!今度こそちゃんと覚えます!」
スイクンさんに旅に出ようと誘われて、2ヶ月半で知識を詰め込めるだけ詰め込んでみせますと啖呵を切ってからおよそ3週間が経過していた。その間自分なりに寝る間も惜しんで教科書と睨めっこする勉強漬けの日々をこれまで通り続けていたのだが、3日目にしてとうとう目の下に酷く濃い隈を作ってしまい、スイクンさんには泣く程心配されて強制的に睡眠を取らされ、ヒトモシくんにはしっかり休まないと駄目だよと優しいお叱りを受けてしまった。でも私は効率の良い勉強方とか知らないですし…とスイクンさんに相談してみた所、家庭教師としてスイクンさんの知り合いを紹介してもらう事になったのだ。そしていざその家庭教師の方と対面してみるとまあびっくり。いつぞやの写真で見た事のある色鮮やかな赤い髪に、ライコウさん以上に高い身長。びっくりしすぎて思わずその人を初対面にも関わらずジロジロと凝視してしまうという大変失礼な行為をしてしまい、傍にいたスイクンさんに大笑いされたのは今思い出すだけでも大変恥ずかしい。
その赤髪の男性…ホウオウさんこそが、スイクンさんが私に紹介してくれた家庭教師だと知った時は、驚いて思わず大声で「嘘でしょう!?」と叫んでしまい、ホウオウさんに「お前意外と失礼なガキだな!」と言われてしまった。その事については大変ホウオウさんには申し訳無いと思っている。だってジョウトに伝わる伝説のポケモンの中でも、ルギアと並んでとりわけ出会うのが難しいと言われるホウオウに出会えるなんて思いもしなかったのだから。この世界の住人ですらないひよっ子の私がこんな形で会ってしまっても良いのだろうかと思ったが、ホウオウさんと少し話してみてびっくり。神に等しい力を持つポケモンだと言われているのを知っていた為最初は畏怖の念が拭いきれなかったが、意外と話してみれば飄々とした話しやすい陽気なお兄さんだった。少し前にスイクンさんからモラルも常識も無いジョウトの異端児と呼ばれていたのを覚えていた為警戒していたが、まああれは誇張表現の様なものだったのだろう。
そんなこんなで、今こうして家庭教師のホウオウさんに毎日勉強を教えてもらいながら、空いた時間にヒトモシくんとレベル上げがてら特訓をする日々を繰り返している。まあまだまだヒトモシくんのレベルは高いとは言えないので、低いレベルのポケモン達が生息するワカバタウンとヨシノシティの間の29番道路までホウオウさんに送ってもらわないといけないという中々に時間のかかる方法を取っているのだが…まあこればっかりは致し方ない。これから強くなっていけばいい話だ。
「タイプ相性はこの3週間で頭に無理矢理叩き込んだからまあ心配は無いだろうが…他にも沢山覚えて貰うから覚悟しとけよ?」
「は、はい…」
ホウオウさんは勉強と関係ない時は明るくて頼もしいお兄さん的存在の人だったが、流石に古い付き合いであるスイクンさん直々に家庭教師を頼まれているからか、私に勉強を教えている時は物凄いスパルタ教師へと変貌してしまうのだ。まあ此方としてはこの2ヶ月半で沢山の知識を頭に入れなければならない為、下手に優しく教えて貰うよりも100倍有難いのだが、流石に耳元で大声出しながら教えてくるのだけは控えて欲しい。このままでは2ヶ月半経つ頃には私の耳が使い物にならなくなってしまう。
そんな事を頭の中でぼやいていると、ホウオウさんに「勉強中に何考え事してやがる小娘」と頬を抓られてしまった。ホウオウさんにとってはこれが軽い力なのかもしれないが、脆弱な人間である私にとっては痛い事この上ない。このままでは私の顔がホウオウさんによってちぎられてしまいそうだったので、「痛い痛い!やめてくださいホウオウさん!」とホウオウさんの普段の大声に負けず劣らずの声量で痛みを訴えると、頭上から此方をフンッと鼻で笑うような声が聞こえてきたと同時に、私の頬がホウオウさんの手からやっとこさ解放された。
「ちょっと痛いじゃないですかホウオウさん!」
「お前が勉強中に意識どっかに飛ばしてるのが悪ぃんだろ阿呆娘」
そんないがみ合いのキャッチボールを数回繰り返しながら改めてペンを握って参考書に向き直そうとすると、部屋のドアが勢いよく開いたと同時に、スイクンさんが珍しく切羽詰まった様子で私達の方に駆け寄ってきた。
「ナマエ!ホウオウ!」
「ど、どうしたんですかスイクンさん」
「どうしたスイクン。悪いけどまだナマエの勉強は終わってねぇぞ」
「そんな事くらい分かっとるわ唐変木!それよりもなぁ、2人共ヒトモシ見ぃひんかった!?」
「いえ、見てませんけど…」
私がそう言った途端、ホウオウさんが溜息をつきながらスイクンさんの肩を掴んで脇にあった椅子に座らせる。その一連の無駄のない流れに関心していると、スイクンさんが事の経緯を先程よりも落ち着いた様子で説明してくれた。
曰く、先程までヒトモシくんはスイクンさん一緒に庭で花の水やりをしていたらしいのだが、スイクンさんが如雨露の水を汲み直しに行っていた間に、先程まで庭に居たはずのヒトモシ君が居なくなってしまっていたらしい。スイクンさんも急な事に驚いて庭と屋敷の中を隈なく探し回っていたそうなのだが、どこにもヒトモシくんの姿は見当たら無かったそうだ。それでも流石に私の勉強を邪魔する訳にもいかないとこの部屋だけは避けて探して下さっていたそうなのだが、それでもやはりどこにもヒトモシくんは見当たらなかった為、藁にも縋る思いで私とホウオウさんを頼ってきたらしい。
「ほんまに勉強中に堪忍なあ…でもヒトモシは勝手にどっか行くような子やないし、こんな事初めてやから心配で心配で…」
「い、いえ…私も2人の家族ですから、勿論探すの手伝いますよ!」
ね、ホウオウさん!とホウオウさんの服の裾をきゅっと控えめに握れば、しょーがねえなあと私の頭上を大きな節くれだった温かい手が掠めた。その優しさに心の中で感謝しながら、私はヒトモシくんの行きそうな場所を必死に脳内で考える。
「庭にも屋敷の中にも居なかったとすれば、敷地内の外に出てしまったと考えるのが妥当ですよね…」
「加えて最近は特訓の為に屋敷の外に出る事も多かったからな…もしかしたらこのエンジュシティを出て、他の街に行ってしまってやがる可能性も…」
ホウオウさんと2人でそう話し合っていると、スイクンさんの顔がまたもや青ざめてきた為、私たちはスイクンさんの不安を煽らない為にも一旦目を見合わせた後話し合いを止めた。
それにこの屋敷はスイクンさんのミラーコートに覆われている為、1度屋敷の外に出てしまうと、スイクンさんがミラーコートを解除しない限り外から屋敷を探し当てるのは不可能に近い。エンテイさん達やホウオウさんといった、スイクンさんと互角またはそれ以上の力を持った存在ならば見破れる事も出来るが、ヒトモシくんはそんな膨大な力をもっていない為、もし屋敷の外に出てしまっているならばもう一度この屋敷に戻るのは不可能だろう。
「スイクンさん!今から私とホウオウさんで屋敷の外を探しに行ってきます!ホウオウさんと一緒なら私も屋敷に戻って来れますし!」
「で、でもナマエ、俺だけのうのうとここで待っとる訳には…」
「お前はここでヒトモシが居そうな所をもう一度探して来い。屋敷の外に出ていないならそれに越したことはないからな」
ホウオウさんはそう言うや否や、私の腕を掴んで玄関へと勢い良く走り出した。その速さにほぼ身体を引き摺られながらも何とか靴を履き、私はホウオウさんと一緒にヒトモシくんの小さい身体を急いで探し始めるのだった。
「す、すみません…!今度こそちゃんと覚えます!」
スイクンさんに旅に出ようと誘われて、2ヶ月半で知識を詰め込めるだけ詰め込んでみせますと啖呵を切ってからおよそ3週間が経過していた。その間自分なりに寝る間も惜しんで教科書と睨めっこする勉強漬けの日々をこれまで通り続けていたのだが、3日目にしてとうとう目の下に酷く濃い隈を作ってしまい、スイクンさんには泣く程心配されて強制的に睡眠を取らされ、ヒトモシくんにはしっかり休まないと駄目だよと優しいお叱りを受けてしまった。でも私は効率の良い勉強方とか知らないですし…とスイクンさんに相談してみた所、家庭教師としてスイクンさんの知り合いを紹介してもらう事になったのだ。そしていざその家庭教師の方と対面してみるとまあびっくり。いつぞやの写真で見た事のある色鮮やかな赤い髪に、ライコウさん以上に高い身長。びっくりしすぎて思わずその人を初対面にも関わらずジロジロと凝視してしまうという大変失礼な行為をしてしまい、傍にいたスイクンさんに大笑いされたのは今思い出すだけでも大変恥ずかしい。
その赤髪の男性…ホウオウさんこそが、スイクンさんが私に紹介してくれた家庭教師だと知った時は、驚いて思わず大声で「嘘でしょう!?」と叫んでしまい、ホウオウさんに「お前意外と失礼なガキだな!」と言われてしまった。その事については大変ホウオウさんには申し訳無いと思っている。だってジョウトに伝わる伝説のポケモンの中でも、ルギアと並んでとりわけ出会うのが難しいと言われるホウオウに出会えるなんて思いもしなかったのだから。この世界の住人ですらないひよっ子の私がこんな形で会ってしまっても良いのだろうかと思ったが、ホウオウさんと少し話してみてびっくり。神に等しい力を持つポケモンだと言われているのを知っていた為最初は畏怖の念が拭いきれなかったが、意外と話してみれば飄々とした話しやすい陽気なお兄さんだった。少し前にスイクンさんからモラルも常識も無いジョウトの異端児と呼ばれていたのを覚えていた為警戒していたが、まああれは誇張表現の様なものだったのだろう。
そんなこんなで、今こうして家庭教師のホウオウさんに毎日勉強を教えてもらいながら、空いた時間にヒトモシくんとレベル上げがてら特訓をする日々を繰り返している。まあまだまだヒトモシくんのレベルは高いとは言えないので、低いレベルのポケモン達が生息するワカバタウンとヨシノシティの間の29番道路までホウオウさんに送ってもらわないといけないという中々に時間のかかる方法を取っているのだが…まあこればっかりは致し方ない。これから強くなっていけばいい話だ。
「タイプ相性はこの3週間で頭に無理矢理叩き込んだからまあ心配は無いだろうが…他にも沢山覚えて貰うから覚悟しとけよ?」
「は、はい…」
ホウオウさんは勉強と関係ない時は明るくて頼もしいお兄さん的存在の人だったが、流石に古い付き合いであるスイクンさん直々に家庭教師を頼まれているからか、私に勉強を教えている時は物凄いスパルタ教師へと変貌してしまうのだ。まあ此方としてはこの2ヶ月半で沢山の知識を頭に入れなければならない為、下手に優しく教えて貰うよりも100倍有難いのだが、流石に耳元で大声出しながら教えてくるのだけは控えて欲しい。このままでは2ヶ月半経つ頃には私の耳が使い物にならなくなってしまう。
そんな事を頭の中でぼやいていると、ホウオウさんに「勉強中に何考え事してやがる小娘」と頬を抓られてしまった。ホウオウさんにとってはこれが軽い力なのかもしれないが、脆弱な人間である私にとっては痛い事この上ない。このままでは私の顔がホウオウさんによってちぎられてしまいそうだったので、「痛い痛い!やめてくださいホウオウさん!」とホウオウさんの普段の大声に負けず劣らずの声量で痛みを訴えると、頭上から此方をフンッと鼻で笑うような声が聞こえてきたと同時に、私の頬がホウオウさんの手からやっとこさ解放された。
「ちょっと痛いじゃないですかホウオウさん!」
「お前が勉強中に意識どっかに飛ばしてるのが悪ぃんだろ阿呆娘」
そんないがみ合いのキャッチボールを数回繰り返しながら改めてペンを握って参考書に向き直そうとすると、部屋のドアが勢いよく開いたと同時に、スイクンさんが珍しく切羽詰まった様子で私達の方に駆け寄ってきた。
「ナマエ!ホウオウ!」
「ど、どうしたんですかスイクンさん」
「どうしたスイクン。悪いけどまだナマエの勉強は終わってねぇぞ」
「そんな事くらい分かっとるわ唐変木!それよりもなぁ、2人共ヒトモシ見ぃひんかった!?」
「いえ、見てませんけど…」
私がそう言った途端、ホウオウさんが溜息をつきながらスイクンさんの肩を掴んで脇にあった椅子に座らせる。その一連の無駄のない流れに関心していると、スイクンさんが事の経緯を先程よりも落ち着いた様子で説明してくれた。
曰く、先程までヒトモシくんはスイクンさん一緒に庭で花の水やりをしていたらしいのだが、スイクンさんが如雨露の水を汲み直しに行っていた間に、先程まで庭に居たはずのヒトモシ君が居なくなってしまっていたらしい。スイクンさんも急な事に驚いて庭と屋敷の中を隈なく探し回っていたそうなのだが、どこにもヒトモシくんの姿は見当たら無かったそうだ。それでも流石に私の勉強を邪魔する訳にもいかないとこの部屋だけは避けて探して下さっていたそうなのだが、それでもやはりどこにもヒトモシくんは見当たらなかった為、藁にも縋る思いで私とホウオウさんを頼ってきたらしい。
「ほんまに勉強中に堪忍なあ…でもヒトモシは勝手にどっか行くような子やないし、こんな事初めてやから心配で心配で…」
「い、いえ…私も2人の家族ですから、勿論探すの手伝いますよ!」
ね、ホウオウさん!とホウオウさんの服の裾をきゅっと控えめに握れば、しょーがねえなあと私の頭上を大きな節くれだった温かい手が掠めた。その優しさに心の中で感謝しながら、私はヒトモシくんの行きそうな場所を必死に脳内で考える。
「庭にも屋敷の中にも居なかったとすれば、敷地内の外に出てしまったと考えるのが妥当ですよね…」
「加えて最近は特訓の為に屋敷の外に出る事も多かったからな…もしかしたらこのエンジュシティを出て、他の街に行ってしまってやがる可能性も…」
ホウオウさんと2人でそう話し合っていると、スイクンさんの顔がまたもや青ざめてきた為、私たちはスイクンさんの不安を煽らない為にも一旦目を見合わせた後話し合いを止めた。
それにこの屋敷はスイクンさんのミラーコートに覆われている為、1度屋敷の外に出てしまうと、スイクンさんがミラーコートを解除しない限り外から屋敷を探し当てるのは不可能に近い。エンテイさん達やホウオウさんといった、スイクンさんと互角またはそれ以上の力を持った存在ならば見破れる事も出来るが、ヒトモシくんはそんな膨大な力をもっていない為、もし屋敷の外に出てしまっているならばもう一度この屋敷に戻るのは不可能だろう。
「スイクンさん!今から私とホウオウさんで屋敷の外を探しに行ってきます!ホウオウさんと一緒なら私も屋敷に戻って来れますし!」
「で、でもナマエ、俺だけのうのうとここで待っとる訳には…」
「お前はここでヒトモシが居そうな所をもう一度探して来い。屋敷の外に出ていないならそれに越したことはないからな」
ホウオウさんはそう言うや否や、私の腕を掴んで玄関へと勢い良く走り出した。その速さにほぼ身体を引き摺られながらも何とか靴を履き、私はホウオウさんと一緒にヒトモシくんの小さい身体を急いで探し始めるのだった。