Extraordinary!
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ヒトモシくんと手を繋ぎながら私はスイクンさんに促されるまま広間に入り、そのまま座布団の敷いてある場所に適当に3人で座った。スイクンさんはそれを確認すると、少しだけ間を置いて私達に向かって口を開く。
「さてと、まあアイツら2人のお陰でこの屋敷にまた1人家族が増えた訳やけど…俺からナマエとヒトモシに提案があるねん」
「て、提案…ですか?」
「俺たち3人でなあ、旅に出えへん?」
スイクンさんの突然の提案に面食らって思わず「えっ!?」と裏返った大層間抜けな声が口から漏れてしまったが、スイクンさんはそんな私の様子に苦笑いしながら話を続ける。ヒトモシくんも驚いてしまっているのか、口をずっと開きっぱなしにしたままだ。流石にこのままでは顎が外れてしまいそうなのでそっと閉じてあげた。
「勿論今すぐにとは言わんで?まだヒトモシも此処に来たばっかりやし、少なくとも後1ヶ月は必要やな…」
「ス、スイクンさんちょっと待ってください」
ヒトモシくんがスイクンさんの話を遮って口を開く。その表情には戸惑いと不安がありありと醸し出されていた。
「エ、エンテイさんは、旅の途中に僕を守れる保証が無いから、僕をここに連れてきたって、言ってました。そんな僕が旅に出るなんて、エンテイさんが頷いてくれるとは思えません…」
ポツポツと不安げにそう話してくれたヒトモシくんだが、そんな彼の言葉を聞いても尚、スイクンさんは飄々とした食えない表情で笑みを浮かべている。
「せや、エンテイは確かにそう言っとったな。ちゃんと聞いとって偉いやんヒトモシ。でもな、その分この1ヶ月の間にヒトモシが自分で自分の身ぃ守れるくらい強くなって、エンテイの事納得させれば無問題やない?」
スイクンさん流石にそれは無茶すぎますよとすかさずツッこんでみたが、スイクンさんは変わらない笑顔で私達を見つめている。そんなスイクンさんにヒトモシくんは勿論、私も戸惑いを隠せずにいた。だって、この世界の子供達の殆どは10歳になってからポケモンと一緒に旅に出る事は知っていたけれど、私がこの世界ではだいぶイレギュラーな存在である事は自分でも自覚はある。その為私が旅に出る事なんてまあ有り得ない話だと思っていたのに。急にそんな事提案された訳だから、戸惑ってしまうのも無理はない。
「大体、どうして3人で旅に出るなんて急に言い出すんですか!?スイクンさんだって、この屋敷を離れる訳にはいかないですよね…?」
「理由なあ…そんなん決まっとるやろ?俺はエンテイとライコウが旅に出てからずっと1人でここにおったさかい、長い間退屈な日々を過ごしとった…けど今はちゃう。ポケモン2匹に人間の子供一人…そんなんもう、旅に出ろって言われとるようなものやん!大丈夫やこの屋敷はミラーコートで隠れとるから、泥棒も侵入者も絶対入ってこん。暫く放置しとっても何ら問題ないで!」
いやいや無茶苦茶なこじつけにも程があるよ…とヒトモシくんがポツリと呟いた。それに関しては私も全く同意見だ。スイクンさんには大恩があるし、優しくてちょっとお茶目な所のある保護者的存在のスイクンさんの事を私はずっと尊敬していた。でも、例え私を救ってくれた人だろうと、こんな急すぎる提案に対してすぐ首を縦に振るなんて無理すぎる話だ。
それに、旅に出るとなれば必然的にポケモンバトルをする事になる。私は元の世界でポケモンというゲームに触れた事は全くと言って良い程無い。精々友達がやっていたのを横目に見ていただけだ。それに2週間勉強していたとはいえタイプ相性とか技の種類とかに関してもこの世界の人に比べれば全然詳しくないし、この日まで学んだ内容が全て頭に入っているかと聞かれればそうでも無い。…私自身にバトルのセンスや才能があればその辺も多少は補えるのだろうが、私にそれがあるとは到底思えない。でも旅する事に興味が無いかと聞かれれば…
「ス、スイクンさん!」
「どしたんやナマエ、そんな切羽詰まった顔で」
「1ヶ月とは言わず、2ヶ月待ってください……!その間に私、頭に詰め込めること全て詰め込みますから!」
「ぼ、僕も…旅に出る覚悟とか強さとか、足りない事の方が多い、けど、2人なら前のトレーナーさんみたいに、絶対に僕の事捨てたりはしないと信じてるから…だから僕も、ナマエさんとスイクンさんの為に、そしてエンテイさんに旅に出るのを認めて貰えるくらい、強くなって旅に出ます…!」
なので最低2ヶ月…いや2ヶ月半は待ってくださいお願いします。と2人でスイクンさんに頭を下げる。スイクンさんはそんな私たちの勢いに笑いを堪えながらも、「ええで。いくらでも待ったる」と快諾してくれた。旅に出る事に対して不安や恐れはあれど、それと同じくらい楽しみが勝っているのもまた事実。とりあえず2ヶ月半で詰め込めるだけ知識を頭に詰めておかないと。
「そういえば、ここまでの流れ的に私のパートナーはスイクンさんとヒトモシくんって事になるのでしょうか…?でも流石にスイクンさんを往来の場で目立たせる訳には…」
「…まあ俺の種族的に、どうしてもバトルは無理やろうな。自分から旅に出たいって言い出しといて不甲斐ない事この上ないけど…でもその分、旅する上での路銀と2人の安全は俺が全部確保する気でおる。せやから、その点は安心しい」
いや流石に路銀全てスイクンさんに負担させる訳には…と私は必死にスイクンさんに食い下がったが、スイクンさんはバトル以外の事は全部自分に任せて欲しいの一点張り。このままでは埒が明かないので、どうしてもお金に困っている時以外はなるべくバトルで得れるファイトマネーを使うという約束でカタが付いた。流石に恩人であるスイクンさんにお金を全部負担させるなんて私の良心が耐えられない。それにお金の切れ目は縁の切れ目という言葉もある。スイクンさんの事を財布として見ている訳では決して無いが、今まで散々この人にはお世話になっているのだ。旅のお金全額負担なんてそんな事させた暁には私が罪悪感で死んでしまう。
これから2ヶ月ちょっとで、ヒトモシくんのレベル上げと、自分の勉強と、旅の目標決めと、トレーナーになるにあたっての諸々の手続き…考えるだけで胃のあたりがキリキリと傷んだような気がしたが、そんな数多くの悩みでさえ、旅に出る楽しみには勝らないのであった。…流石に面倒臭い手続きとかはスイクンさんにも手伝ってもらおう。他責思考を持つのはあまりいい事ではないが、まあ一応スイクンさんが言い出しっぺなのだから、ちょっとは手伝って貰えるだろう。
「が、がんばろうね…ヒトモシくん」
「う、うん!スイクンさんとナマエさんのために僕、がんばるね!」
そう言って思いっきり私の腰に抱きついて来てくれたヒトモシくんを受け止めながら、私は旅の計画を頭の中で練りつつ、これまでに学んだ諸々の知識を必死に脳内で反芻させていたのであった。
旅に出るまで、あと二ヶ月半。
「さてと、まあアイツら2人のお陰でこの屋敷にまた1人家族が増えた訳やけど…俺からナマエとヒトモシに提案があるねん」
「て、提案…ですか?」
「俺たち3人でなあ、旅に出えへん?」
スイクンさんの突然の提案に面食らって思わず「えっ!?」と裏返った大層間抜けな声が口から漏れてしまったが、スイクンさんはそんな私の様子に苦笑いしながら話を続ける。ヒトモシくんも驚いてしまっているのか、口をずっと開きっぱなしにしたままだ。流石にこのままでは顎が外れてしまいそうなのでそっと閉じてあげた。
「勿論今すぐにとは言わんで?まだヒトモシも此処に来たばっかりやし、少なくとも後1ヶ月は必要やな…」
「ス、スイクンさんちょっと待ってください」
ヒトモシくんがスイクンさんの話を遮って口を開く。その表情には戸惑いと不安がありありと醸し出されていた。
「エ、エンテイさんは、旅の途中に僕を守れる保証が無いから、僕をここに連れてきたって、言ってました。そんな僕が旅に出るなんて、エンテイさんが頷いてくれるとは思えません…」
ポツポツと不安げにそう話してくれたヒトモシくんだが、そんな彼の言葉を聞いても尚、スイクンさんは飄々とした食えない表情で笑みを浮かべている。
「せや、エンテイは確かにそう言っとったな。ちゃんと聞いとって偉いやんヒトモシ。でもな、その分この1ヶ月の間にヒトモシが自分で自分の身ぃ守れるくらい強くなって、エンテイの事納得させれば無問題やない?」
スイクンさん流石にそれは無茶すぎますよとすかさずツッこんでみたが、スイクンさんは変わらない笑顔で私達を見つめている。そんなスイクンさんにヒトモシくんは勿論、私も戸惑いを隠せずにいた。だって、この世界の子供達の殆どは10歳になってからポケモンと一緒に旅に出る事は知っていたけれど、私がこの世界ではだいぶイレギュラーな存在である事は自分でも自覚はある。その為私が旅に出る事なんてまあ有り得ない話だと思っていたのに。急にそんな事提案された訳だから、戸惑ってしまうのも無理はない。
「大体、どうして3人で旅に出るなんて急に言い出すんですか!?スイクンさんだって、この屋敷を離れる訳にはいかないですよね…?」
「理由なあ…そんなん決まっとるやろ?俺はエンテイとライコウが旅に出てからずっと1人でここにおったさかい、長い間退屈な日々を過ごしとった…けど今はちゃう。ポケモン2匹に人間の子供一人…そんなんもう、旅に出ろって言われとるようなものやん!大丈夫やこの屋敷はミラーコートで隠れとるから、泥棒も侵入者も絶対入ってこん。暫く放置しとっても何ら問題ないで!」
いやいや無茶苦茶なこじつけにも程があるよ…とヒトモシくんがポツリと呟いた。それに関しては私も全く同意見だ。スイクンさんには大恩があるし、優しくてちょっとお茶目な所のある保護者的存在のスイクンさんの事を私はずっと尊敬していた。でも、例え私を救ってくれた人だろうと、こんな急すぎる提案に対してすぐ首を縦に振るなんて無理すぎる話だ。
それに、旅に出るとなれば必然的にポケモンバトルをする事になる。私は元の世界でポケモンというゲームに触れた事は全くと言って良い程無い。精々友達がやっていたのを横目に見ていただけだ。それに2週間勉強していたとはいえタイプ相性とか技の種類とかに関してもこの世界の人に比べれば全然詳しくないし、この日まで学んだ内容が全て頭に入っているかと聞かれればそうでも無い。…私自身にバトルのセンスや才能があればその辺も多少は補えるのだろうが、私にそれがあるとは到底思えない。でも旅する事に興味が無いかと聞かれれば…
「ス、スイクンさん!」
「どしたんやナマエ、そんな切羽詰まった顔で」
「1ヶ月とは言わず、2ヶ月待ってください……!その間に私、頭に詰め込めること全て詰め込みますから!」
「ぼ、僕も…旅に出る覚悟とか強さとか、足りない事の方が多い、けど、2人なら前のトレーナーさんみたいに、絶対に僕の事捨てたりはしないと信じてるから…だから僕も、ナマエさんとスイクンさんの為に、そしてエンテイさんに旅に出るのを認めて貰えるくらい、強くなって旅に出ます…!」
なので最低2ヶ月…いや2ヶ月半は待ってくださいお願いします。と2人でスイクンさんに頭を下げる。スイクンさんはそんな私たちの勢いに笑いを堪えながらも、「ええで。いくらでも待ったる」と快諾してくれた。旅に出る事に対して不安や恐れはあれど、それと同じくらい楽しみが勝っているのもまた事実。とりあえず2ヶ月半で詰め込めるだけ知識を頭に詰めておかないと。
「そういえば、ここまでの流れ的に私のパートナーはスイクンさんとヒトモシくんって事になるのでしょうか…?でも流石にスイクンさんを往来の場で目立たせる訳には…」
「…まあ俺の種族的に、どうしてもバトルは無理やろうな。自分から旅に出たいって言い出しといて不甲斐ない事この上ないけど…でもその分、旅する上での路銀と2人の安全は俺が全部確保する気でおる。せやから、その点は安心しい」
いや流石に路銀全てスイクンさんに負担させる訳には…と私は必死にスイクンさんに食い下がったが、スイクンさんはバトル以外の事は全部自分に任せて欲しいの一点張り。このままでは埒が明かないので、どうしてもお金に困っている時以外はなるべくバトルで得れるファイトマネーを使うという約束でカタが付いた。流石に恩人であるスイクンさんにお金を全部負担させるなんて私の良心が耐えられない。それにお金の切れ目は縁の切れ目という言葉もある。スイクンさんの事を財布として見ている訳では決して無いが、今まで散々この人にはお世話になっているのだ。旅のお金全額負担なんてそんな事させた暁には私が罪悪感で死んでしまう。
これから2ヶ月ちょっとで、ヒトモシくんのレベル上げと、自分の勉強と、旅の目標決めと、トレーナーになるにあたっての諸々の手続き…考えるだけで胃のあたりがキリキリと傷んだような気がしたが、そんな数多くの悩みでさえ、旅に出る楽しみには勝らないのであった。…流石に面倒臭い手続きとかはスイクンさんにも手伝ってもらおう。他責思考を持つのはあまりいい事ではないが、まあ一応スイクンさんが言い出しっぺなのだから、ちょっとは手伝って貰えるだろう。
「が、がんばろうね…ヒトモシくん」
「う、うん!スイクンさんとナマエさんのために僕、がんばるね!」
そう言って思いっきり私の腰に抱きついて来てくれたヒトモシくんを受け止めながら、私は旅の計画を頭の中で練りつつ、これまでに学んだ諸々の知識を必死に脳内で反芻させていたのであった。
旅に出るまで、あと二ヶ月半。