Extraordinary!
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ヒトモシくんと私がこの屋敷に来て、丁度1ヶ月が経った。その間ずっとヒトモシくんと一緒に起きて(たまに起こしてもらって)、3人でご飯を作って食べて、庭に出て遊んだり3人で買い物に行ったりコンテストやバトルを見に行ったりなど、充実した日々を過ごしていた。でも流石に学校に行かなくて良くなったからと言ってこの歳で全く勉強しないのはいけないと自分でも思ったので、最近はこの世界の常識やルールについて少しづつ勉強してみたりしている。たまにスイクンさんが勉強のご褒美に美味しいお茶やお菓子を用意してくれるので、苦手な勉強でも音を上げずにやりきる事ができたし、この世界に関する知識もだいぶ増えた。私は1歩ずつこの世界に馴染む事が出来ている。臆病な私にとって、これは大きな進歩では無いだろうか。
「ヒトモシくん、ゴーストタイプのポケモンってやっぱり、私みたいな人間には見えないお化けとか怪異とか見えちゃったりするの?」
「うーん…擬人化してる時は流石に身体が人間に寄っているから見えないけれど、ポケモンの姿の時はたまにそれっぽいのが見えたりするよ。ほら、ナマエさんの後ろに髪の長い女の人が…」
「ひ、ひぃい…っ!ちょっとヒトモシくんやめてよそんな冗談!私怖いの無理なのに!」
「あははっ、ごめんごめん、冗談だよ。…でも、たまに見えちゃうのは本当。そういうのは無視してればその内消えるから、ナマエさんが怖がる必要は無いよ」
笑いながらそう言って、私の腰にぎゅっと抱き着いて安心させてくれるヒトモシくん。その姿は本当に可愛らしいのだけれど、先程の冗談は流石に頂けないぞ。もしかしてこの子は天然サドなのか。悪意のないドS程厄介なものはないが…まあ可愛いからいいかと無理やり自分を納得させた。
あくタイプについて詳しく書かれていたページを1枚ペラっとめくると、そこにはタイプ相性の関係が全て書いてあるまとめ表が載っていた。もしかしてこれをメモに書いて丸暗記すれば良いのでは無いかと一瞬思ったが、私の頭の容量はそんなに大きくはない。テスト前日に夜更かししながら必死に文法や公式を覚えたあの苦いテスト勉強の日々を思い出す。ああいう付け焼刃の勉強法は絶対に記憶に残るものでは無いと、私は元の世界で身をもって知っている。勉強に近道なんてものはない。だからこそ今こうして時間のある時に地道に覚えなければならないのだ。
「ヒトモシくんはほのおタイプとゴーストタイプだから…強く出られるのは草タイプと虫タイプと、あと鋼タイプに…あれ、あとなんだっけ…」
「氷とゴーストとエスパーだよ。さっきは全部言えてた筈だけど…少し休憩する?昼ご飯食べてからナマエさんずっと勉強してるから、僕心配だよ」
「…うん。そろそろスイクンさんと夜ご飯作る時間だし、少し休憩しようかな。お勉強付き合ってくれてありがとう、ヒトモシくん」
ヒトモシくんをぎゅっと抱きしめて、私はそのままヒトモシくんと一緒に布団の中へと身を沈めた。擬人化している状態でもほのおタイプ特有の体温の高さはそのままなのか、それとも子供体温のせいなのか定かではないが、ヒトモシくんの体温はやけに温かい。そのせいか徐々に自分の瞼が下がってゆくのを感じるが、今ここで眠ってしまう訳にはいかない。もう少しで庭で花の世話をしているスイクンさんが屋敷に戻ってくるのだから、今日一日中勉強してて会えなかった分、いっぱいお話したいのに…と頭の片隅で考えつつも、長時間の勉強で疲れて果てている脳味噌が眠気を更に促進させてくる。嫌だ、寝たくない。スイクンさんとヒトモシくんと夜ご飯作りながら、いっぱいお話したい…寝ちゃだめだ寝ちゃだめだ…
そうして必死に眠気に抗い続ける事5分。腕の中のヒトモシくんに「スイクンさんが来たら起こすから、ナマエさんいい加減寝たら…?」と訝しげにそう言われてしまったが、流石にヒトモシくんにそんな事させる訳には…と私は頑固にも目を開けたり閉じたりを何度も繰り返していた。すると、部屋の扉が2、3回ノックされ、「2人共勉強お疲れ様やな〜!今庭から帰ったで。一緒に夕飯作らへん?」とスイクンさんの声が聞こえてきた為、私はガバッと布団から起き上がって部屋の扉を開けた。
「スイクンさん!」
「おかえりなさい!」
「ん、2人共ただいま!勉強頑張った2人にご褒美やで!デパートでケーキ買って来てん!」
その嬉しすぎるご褒美のおかげで、私に襲いかかって来ていた強烈な眠気はどこかに吹き飛んで行ってしまった。ヒトモシくんもトパーズの様な黄色い瞳をキラキラと輝かせながら嬉しそうな表情をしている。そんな私たちの様子を見てスイクンさんは微笑みを浮かべながら、「ほな早く夕飯作ろうか。今日はヒトモシの好きなグラタンやで」と言って、私達の手を引いて台所へと足を進めていった。
*
「今日は何を学んだん?」
「今日は…えっと、ポケモンの持つタイプの相性をひたすら暗記していました。でも種類が多くて中々…」
グラタン用のホワイトソースをヒトモシくんと一緒にかき混ぜながら、私はスイクンさんに今日勉強した事を話していた。スイクンさんの持つみずタイプや、ヒトモシくんの持つほのおタイプ。そして、森などに生息するポケモンに多く見られるくさタイプ…といった、基礎的なタイプの相性なら覚えるのにそんなに時間は掛からなかった。水をかければ火は消えてしまうから、水の方が強い。逆に炎は草を燃やせるから、炎の方が強い。こういう簡単かつ現実に基づいている相性ならまだ覚えやすい…のだが、それだけならどんなに良かった事か。元の世界で見た事すらない、エスパーやらゴーストやら、非現実的で扱うのが難しそうなタイプまで、教科書にはズラリと書かれているのだ。急にそんなものを頭に入れようとも無理がある。
「エスパーとかゴーストとか、そういうオカルト的な言葉には疎くて…イマイチ覚えられないんですよね」
「…ナマエさんのいた世界では、僕たちゴーストはオカルトだったの?」
「…うん。幽霊とか、怪談を模した番組とかならたまにテレビでやっていたけど、殆どが偽物だったし…元いた世界では、ヒトモシくんみたいな本物のゴーストと触れ合えるなんて絶対有り得ない事だったんだよ」
ホワイトソースがグツグツと煮えたぎって来たので、お喋りもそこそこに私はコンロの火を止めてホワイトソースを3つのグラタン皿に移した。これだけでも充分美味しそうだが、まだ最後の仕上げが残っている。皿に敷いたパイシートでホワイトソースと具材を包み、オーブンの中にお皿を3つとも入れて待つ事数十分。オーブンから取り出して漸く出来た夜ご飯に、長時間の勉強によって疲れ切っていた身体が歓喜の声を上げる様に腹の虫を鳴らした。
「いただきます!」
「い…いただき、ます!」
大きめに切られた熱々のじゃがいもが濃厚なホワイトソースと絡んでスプーンを持つ手が止まらない。包んでいるパイシートのサクサクな食感が、ドロっとしたソースと絶妙にマッチしていて凄く美味しい。スイクンさんに所々手伝ってもらった部分もあるが、自分で調理に携わったという部分も、美味しさをプラスしている要因となっているのだろう。元いた世界では学校で疲れているからという理由でお母さんのお手伝いなんてほとんどしてこなかったけれど、たまにでもいいからしておけば良かったなと若干後悔した。
「ご馳走様でした!」
「ご、ご馳走様、でした…!」
「ん、お粗末様。そんじゃ今ケーキ持ってくるけど、2人共何のケーキがええ?チョコ、チーズ、抹茶の3種類買ってきたんやけど…」
スイクンさんはそう言うと、ケーキの箱をテーブルの上に置いて中身が私達に見えるように箱を広げてくれた。そこに入っている3つのケーキはどれも凄く美味しそうで、グラタンを詰め込んだばかりのお腹がまた鳴りそうになるのを私は必死に抑えた。
「んー、私はどれも好きですけど…ヒトモシくんは何味がいい?先に決めていいよ」
「あ、えっと…じゃあ僕、チョコのケーキがいいな…」
「じゃあ私はチーズケーキにしようかな!」
そうして各々食べたいケーキを選んで、それぞれのケーキをお皿に移す。柔らかいスポンジケーキや上に乗った果物が崩れないようにそーっとフィルムを持ち上げて1つづつケーキをお皿に乗せ終われば、あっという間に至福の時間の始まりだ。
「わ…美味しいですねスイクンさん!私チーズケーキ大好きなので幸せです…!」
濃厚な味のチーズケーキをじっくり味わいながら満面の笑みを浮かべてそう言うと、隣でチョコケーキを小さな口で頬張っていたヒトモシくんも首を縦に振って笑顔で同調してくれた。3人でこういう風に家族みたいなやりとりするの、実は初めてかもしれない。この1ヶ月で距離はだいぶ縮まったとは思うけれど、まだ私達の間には見えない壁が薄く貼られていた。でも、こういうやり取りを毎日繰り返していけば、いつか見えない壁も消えてくれる事だろう。私たちにはまだ時間が必要なのだ。
「2人が喜んでくれて俺嬉しいわあ…こんなんでそないに幸せそうな顔してくれはるなら、毎日ケーキ買って来よかなあ」
それは流石に太るのでやめてくださいスイクンさん!と笑いながら言えば、ヒトモシくんも口の周りにチョコを付けながらあははと眩しい笑顔で笑ってくれた。別の世界から来た女子高生と、ジョウト地方に伝わる伝説のポケモンと、トレーナーに捨てられた遠い地方のポケモン。言葉にしてみれば歪で変な関係に見えるかもしれないけれど、私達の間には、その肩書きをものともしない家族としての確かな絆があるのだ。
不思議な世界で出来た、私の新しい家族。種族も性別も何もかも違うけれど、全て大切なものに変わりは無いのだ。
「ヒトモシくん、ゴーストタイプのポケモンってやっぱり、私みたいな人間には見えないお化けとか怪異とか見えちゃったりするの?」
「うーん…擬人化してる時は流石に身体が人間に寄っているから見えないけれど、ポケモンの姿の時はたまにそれっぽいのが見えたりするよ。ほら、ナマエさんの後ろに髪の長い女の人が…」
「ひ、ひぃい…っ!ちょっとヒトモシくんやめてよそんな冗談!私怖いの無理なのに!」
「あははっ、ごめんごめん、冗談だよ。…でも、たまに見えちゃうのは本当。そういうのは無視してればその内消えるから、ナマエさんが怖がる必要は無いよ」
笑いながらそう言って、私の腰にぎゅっと抱き着いて安心させてくれるヒトモシくん。その姿は本当に可愛らしいのだけれど、先程の冗談は流石に頂けないぞ。もしかしてこの子は天然サドなのか。悪意のないドS程厄介なものはないが…まあ可愛いからいいかと無理やり自分を納得させた。
あくタイプについて詳しく書かれていたページを1枚ペラっとめくると、そこにはタイプ相性の関係が全て書いてあるまとめ表が載っていた。もしかしてこれをメモに書いて丸暗記すれば良いのでは無いかと一瞬思ったが、私の頭の容量はそんなに大きくはない。テスト前日に夜更かししながら必死に文法や公式を覚えたあの苦いテスト勉強の日々を思い出す。ああいう付け焼刃の勉強法は絶対に記憶に残るものでは無いと、私は元の世界で身をもって知っている。勉強に近道なんてものはない。だからこそ今こうして時間のある時に地道に覚えなければならないのだ。
「ヒトモシくんはほのおタイプとゴーストタイプだから…強く出られるのは草タイプと虫タイプと、あと鋼タイプに…あれ、あとなんだっけ…」
「氷とゴーストとエスパーだよ。さっきは全部言えてた筈だけど…少し休憩する?昼ご飯食べてからナマエさんずっと勉強してるから、僕心配だよ」
「…うん。そろそろスイクンさんと夜ご飯作る時間だし、少し休憩しようかな。お勉強付き合ってくれてありがとう、ヒトモシくん」
ヒトモシくんをぎゅっと抱きしめて、私はそのままヒトモシくんと一緒に布団の中へと身を沈めた。擬人化している状態でもほのおタイプ特有の体温の高さはそのままなのか、それとも子供体温のせいなのか定かではないが、ヒトモシくんの体温はやけに温かい。そのせいか徐々に自分の瞼が下がってゆくのを感じるが、今ここで眠ってしまう訳にはいかない。もう少しで庭で花の世話をしているスイクンさんが屋敷に戻ってくるのだから、今日一日中勉強してて会えなかった分、いっぱいお話したいのに…と頭の片隅で考えつつも、長時間の勉強で疲れて果てている脳味噌が眠気を更に促進させてくる。嫌だ、寝たくない。スイクンさんとヒトモシくんと夜ご飯作りながら、いっぱいお話したい…寝ちゃだめだ寝ちゃだめだ…
そうして必死に眠気に抗い続ける事5分。腕の中のヒトモシくんに「スイクンさんが来たら起こすから、ナマエさんいい加減寝たら…?」と訝しげにそう言われてしまったが、流石にヒトモシくんにそんな事させる訳には…と私は頑固にも目を開けたり閉じたりを何度も繰り返していた。すると、部屋の扉が2、3回ノックされ、「2人共勉強お疲れ様やな〜!今庭から帰ったで。一緒に夕飯作らへん?」とスイクンさんの声が聞こえてきた為、私はガバッと布団から起き上がって部屋の扉を開けた。
「スイクンさん!」
「おかえりなさい!」
「ん、2人共ただいま!勉強頑張った2人にご褒美やで!デパートでケーキ買って来てん!」
その嬉しすぎるご褒美のおかげで、私に襲いかかって来ていた強烈な眠気はどこかに吹き飛んで行ってしまった。ヒトモシくんもトパーズの様な黄色い瞳をキラキラと輝かせながら嬉しそうな表情をしている。そんな私たちの様子を見てスイクンさんは微笑みを浮かべながら、「ほな早く夕飯作ろうか。今日はヒトモシの好きなグラタンやで」と言って、私達の手を引いて台所へと足を進めていった。
*
「今日は何を学んだん?」
「今日は…えっと、ポケモンの持つタイプの相性をひたすら暗記していました。でも種類が多くて中々…」
グラタン用のホワイトソースをヒトモシくんと一緒にかき混ぜながら、私はスイクンさんに今日勉強した事を話していた。スイクンさんの持つみずタイプや、ヒトモシくんの持つほのおタイプ。そして、森などに生息するポケモンに多く見られるくさタイプ…といった、基礎的なタイプの相性なら覚えるのにそんなに時間は掛からなかった。水をかければ火は消えてしまうから、水の方が強い。逆に炎は草を燃やせるから、炎の方が強い。こういう簡単かつ現実に基づいている相性ならまだ覚えやすい…のだが、それだけならどんなに良かった事か。元の世界で見た事すらない、エスパーやらゴーストやら、非現実的で扱うのが難しそうなタイプまで、教科書にはズラリと書かれているのだ。急にそんなものを頭に入れようとも無理がある。
「エスパーとかゴーストとか、そういうオカルト的な言葉には疎くて…イマイチ覚えられないんですよね」
「…ナマエさんのいた世界では、僕たちゴーストはオカルトだったの?」
「…うん。幽霊とか、怪談を模した番組とかならたまにテレビでやっていたけど、殆どが偽物だったし…元いた世界では、ヒトモシくんみたいな本物のゴーストと触れ合えるなんて絶対有り得ない事だったんだよ」
ホワイトソースがグツグツと煮えたぎって来たので、お喋りもそこそこに私はコンロの火を止めてホワイトソースを3つのグラタン皿に移した。これだけでも充分美味しそうだが、まだ最後の仕上げが残っている。皿に敷いたパイシートでホワイトソースと具材を包み、オーブンの中にお皿を3つとも入れて待つ事数十分。オーブンから取り出して漸く出来た夜ご飯に、長時間の勉強によって疲れ切っていた身体が歓喜の声を上げる様に腹の虫を鳴らした。
「いただきます!」
「い…いただき、ます!」
大きめに切られた熱々のじゃがいもが濃厚なホワイトソースと絡んでスプーンを持つ手が止まらない。包んでいるパイシートのサクサクな食感が、ドロっとしたソースと絶妙にマッチしていて凄く美味しい。スイクンさんに所々手伝ってもらった部分もあるが、自分で調理に携わったという部分も、美味しさをプラスしている要因となっているのだろう。元いた世界では学校で疲れているからという理由でお母さんのお手伝いなんてほとんどしてこなかったけれど、たまにでもいいからしておけば良かったなと若干後悔した。
「ご馳走様でした!」
「ご、ご馳走様、でした…!」
「ん、お粗末様。そんじゃ今ケーキ持ってくるけど、2人共何のケーキがええ?チョコ、チーズ、抹茶の3種類買ってきたんやけど…」
スイクンさんはそう言うと、ケーキの箱をテーブルの上に置いて中身が私達に見えるように箱を広げてくれた。そこに入っている3つのケーキはどれも凄く美味しそうで、グラタンを詰め込んだばかりのお腹がまた鳴りそうになるのを私は必死に抑えた。
「んー、私はどれも好きですけど…ヒトモシくんは何味がいい?先に決めていいよ」
「あ、えっと…じゃあ僕、チョコのケーキがいいな…」
「じゃあ私はチーズケーキにしようかな!」
そうして各々食べたいケーキを選んで、それぞれのケーキをお皿に移す。柔らかいスポンジケーキや上に乗った果物が崩れないようにそーっとフィルムを持ち上げて1つづつケーキをお皿に乗せ終われば、あっという間に至福の時間の始まりだ。
「わ…美味しいですねスイクンさん!私チーズケーキ大好きなので幸せです…!」
濃厚な味のチーズケーキをじっくり味わいながら満面の笑みを浮かべてそう言うと、隣でチョコケーキを小さな口で頬張っていたヒトモシくんも首を縦に振って笑顔で同調してくれた。3人でこういう風に家族みたいなやりとりするの、実は初めてかもしれない。この1ヶ月で距離はだいぶ縮まったとは思うけれど、まだ私達の間には見えない壁が薄く貼られていた。でも、こういうやり取りを毎日繰り返していけば、いつか見えない壁も消えてくれる事だろう。私たちにはまだ時間が必要なのだ。
「2人が喜んでくれて俺嬉しいわあ…こんなんでそないに幸せそうな顔してくれはるなら、毎日ケーキ買って来よかなあ」
それは流石に太るのでやめてくださいスイクンさん!と笑いながら言えば、ヒトモシくんも口の周りにチョコを付けながらあははと眩しい笑顔で笑ってくれた。別の世界から来た女子高生と、ジョウト地方に伝わる伝説のポケモンと、トレーナーに捨てられた遠い地方のポケモン。言葉にしてみれば歪で変な関係に見えるかもしれないけれど、私達の間には、その肩書きをものともしない家族としての確かな絆があるのだ。
不思議な世界で出来た、私の新しい家族。種族も性別も何もかも違うけれど、全て大切なものに変わりは無いのだ。