Extraordinary!
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
全員が朝食を食べ終えた後、エンテイさんとライコウさんはすぐに旅支度をし始めた。ライコウさん曰く、先程のようにまたスイクンさんに何かと突っかかられると面倒くさいからだそうだ。屋敷を出るまでライコウさんは未だに「ナマエちゃんも一緒においでよー」とごねていたが、そのせいでスイクンさんに2度目の拳骨を食らってしまい、しょぼくれながらも私とヒトモシくんに「今度会えた時はゆっくり話せるといいねー」と言って手を振ってくれた。エンテイさんもまだ私に対して警戒を解いてはいない様子だが、纏っている雰囲気は少しばかり柔らかくなってくれた様な気がする。エンテイさんともいつか仲良くなれるだろうか。
「エンテイ、ライコウの事ちゃんと見張っとくんやで」
「分かっている。此方も女遊びは程々にしろと口煩く言っている筈なのだがな…」
「別に良いじゃん溜まるものは溜まるんだし!それとも何?2人が俺の相手してくれる?」
「そんなんもっかい死んでも嫌やわ。うちの子らの前で気色の悪い事言わんでくれへん?ほらさっさと行きや女誑しが」
そう言いながらスイクンさんは片手でシッシとライコウさんを追い払うような仕草をすると、腕を組んでぷいっとそっぽを向いてしまった。スイクンさんらしくない子供っぽいその仕草にいつものスイクンさんとのギャップを感じて新鮮な気持ちになったが、言葉にするのはやめておいた。言ったらもうやってくれなさそうだから。
「エンテイさん、ライコウさん、僕をここに連れてきてくれて、ありがとう…!」
ヒトモシ君が遠ざかってゆく2人の背に向かって思いっきりそう叫んだ。2人はそのヒトモシくんの言葉に対してヒラリと軽く手を挙げて反応しただけだったが、ヒトモシくんの伝えたい感謝の気持ちは全て、あの二人に伝わってくれている事だろう。だって、隣に立っている私にも、痛いくらいヒトモシくんの気持ちが伝わってきているのだから。何せ長い時を過ごしている人達だ。他者の伝えたい事や気持ちを読み取る力は、恐らく私よりも長けている筈だから。
「やっとあの二人行ったか…ほな屋敷入ろうか。いつまでも外おったら2人共風邪引くで」
私とヒトモシくんの背中をぽんぽんと優しく叩きながら、スイクンさんは私達を屋敷に入るように促してくれた。ヒトモシくんと手を繋ぎながら私はスイクンさんに促されるまま屋敷に入り、靴を脱いでスイクンさんの後を追う。ヒトモシくんは私について歩きながら、スイクンさんと私の顔を交互に見ると、安心する様ににぱっと笑ってくれた。その笑みに釣られて、思わずこちらの頬も緩む。
数日前までの私はまだこの世界に来たばかりで、一刻も早く元の世界に帰りたいと思っていたけれど、今はどうだろう。ヒトモシくんという家族も増えて、スイクンさんも良くしてくれて…しかも勉強や人間関係に追われていた元の世界より、何も気にせずのびのびと過ごせるこちらの方が断然居心地が良いと来た。段々自分がどちらの世界を選ぶべきなのか、私には分からなくなってきている。
人が1番に忘れてしまうのは容姿ではなく声だと、何処かで聞いたことがある。まだ両親の声を思い出せなくなっている訳では無いが、このままこの世界に居続ければ確実に忘れてしまい、いずれは元の世界への未練も徐々に薄れていくのだろう。それが何を意味するのかくらい、頭の回転が遅い私でも分かる。両親の知らぬ土地で、両親の知らない人とずっと暮らすのだ。元の世界を捨てる事は、即ちこの歳になるまで大切に育ててくれた両親を裏切る事に等しい。そんなの、絶対に嫌だ。
「部屋はまだ沢山余っとるけど…こないな小さい子を1人で過ごさせるのもなあ…せや、ナマエとヒトモシ同じ部屋にならん?そっちの方がお互い仲良う出来るやろうし」
「は、はい…!僕も、ナマエさんと一緒の方が何かと安心だし……あれ、ナマエさん…?」
ぼーっとしていた私を心配してくれたのか、ヒトモシくんがぽんぽんと私の肩を叩いて私の意識をこちら側に戻してくれた。心配そうな顔をしながら私を見つめてくれているヒトモシくんの頭を少し撫でて、「ごめんごめん、何の話だっけ」と誤魔化すように笑い、2人に向き直る。
「なんやナマエが話聞いとらんの珍しいなあ。ヒトモシとナマエを同じ部屋にしようかって話やで。ナマエはどう思う?」
「あ、あぁ成程!すみませんぼーっとしてて…私もヒトモシくんと同じ部屋で大丈夫です!ヒトモシくんともっと仲良くなりたいですし…」
ぎこちない笑みを浮かべてスイクンさんの話に同意するも、私の頭の中は元の世界とこちらの世界どちらを選べばいいのか分からなくなってしまっていた。
私はどうして、この世界に来てしまったのだろう。
「エンテイ、ライコウの事ちゃんと見張っとくんやで」
「分かっている。此方も女遊びは程々にしろと口煩く言っている筈なのだがな…」
「別に良いじゃん溜まるものは溜まるんだし!それとも何?2人が俺の相手してくれる?」
「そんなんもっかい死んでも嫌やわ。うちの子らの前で気色の悪い事言わんでくれへん?ほらさっさと行きや女誑しが」
そう言いながらスイクンさんは片手でシッシとライコウさんを追い払うような仕草をすると、腕を組んでぷいっとそっぽを向いてしまった。スイクンさんらしくない子供っぽいその仕草にいつものスイクンさんとのギャップを感じて新鮮な気持ちになったが、言葉にするのはやめておいた。言ったらもうやってくれなさそうだから。
「エンテイさん、ライコウさん、僕をここに連れてきてくれて、ありがとう…!」
ヒトモシ君が遠ざかってゆく2人の背に向かって思いっきりそう叫んだ。2人はそのヒトモシくんの言葉に対してヒラリと軽く手を挙げて反応しただけだったが、ヒトモシくんの伝えたい感謝の気持ちは全て、あの二人に伝わってくれている事だろう。だって、隣に立っている私にも、痛いくらいヒトモシくんの気持ちが伝わってきているのだから。何せ長い時を過ごしている人達だ。他者の伝えたい事や気持ちを読み取る力は、恐らく私よりも長けている筈だから。
「やっとあの二人行ったか…ほな屋敷入ろうか。いつまでも外おったら2人共風邪引くで」
私とヒトモシくんの背中をぽんぽんと優しく叩きながら、スイクンさんは私達を屋敷に入るように促してくれた。ヒトモシくんと手を繋ぎながら私はスイクンさんに促されるまま屋敷に入り、靴を脱いでスイクンさんの後を追う。ヒトモシくんは私について歩きながら、スイクンさんと私の顔を交互に見ると、安心する様ににぱっと笑ってくれた。その笑みに釣られて、思わずこちらの頬も緩む。
数日前までの私はまだこの世界に来たばかりで、一刻も早く元の世界に帰りたいと思っていたけれど、今はどうだろう。ヒトモシくんという家族も増えて、スイクンさんも良くしてくれて…しかも勉強や人間関係に追われていた元の世界より、何も気にせずのびのびと過ごせるこちらの方が断然居心地が良いと来た。段々自分がどちらの世界を選ぶべきなのか、私には分からなくなってきている。
人が1番に忘れてしまうのは容姿ではなく声だと、何処かで聞いたことがある。まだ両親の声を思い出せなくなっている訳では無いが、このままこの世界に居続ければ確実に忘れてしまい、いずれは元の世界への未練も徐々に薄れていくのだろう。それが何を意味するのかくらい、頭の回転が遅い私でも分かる。両親の知らぬ土地で、両親の知らない人とずっと暮らすのだ。元の世界を捨てる事は、即ちこの歳になるまで大切に育ててくれた両親を裏切る事に等しい。そんなの、絶対に嫌だ。
「部屋はまだ沢山余っとるけど…こないな小さい子を1人で過ごさせるのもなあ…せや、ナマエとヒトモシ同じ部屋にならん?そっちの方がお互い仲良う出来るやろうし」
「は、はい…!僕も、ナマエさんと一緒の方が何かと安心だし……あれ、ナマエさん…?」
ぼーっとしていた私を心配してくれたのか、ヒトモシくんがぽんぽんと私の肩を叩いて私の意識をこちら側に戻してくれた。心配そうな顔をしながら私を見つめてくれているヒトモシくんの頭を少し撫でて、「ごめんごめん、何の話だっけ」と誤魔化すように笑い、2人に向き直る。
「なんやナマエが話聞いとらんの珍しいなあ。ヒトモシとナマエを同じ部屋にしようかって話やで。ナマエはどう思う?」
「あ、あぁ成程!すみませんぼーっとしてて…私もヒトモシくんと同じ部屋で大丈夫です!ヒトモシくんともっと仲良くなりたいですし…」
ぎこちない笑みを浮かべてスイクンさんの話に同意するも、私の頭の中は元の世界とこちらの世界どちらを選べばいいのか分からなくなってしまっていた。
私はどうして、この世界に来てしまったのだろう。