Extraordinary!
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「…さん……ナマエさん!」
「ん…?だれ?」
私を起こしたのは、聞き慣れた目覚まし時計の音でも、スイクンさんの穏やかな声でもなく、聞き慣れない小さな声だった。…しかも子供の。その声に急かされてむくりと布団から起き上がってみると、そこには可愛らしい白髪の美少年が1人。
「おはよう…!ナマエさん…」
「ひ、ヒトモシ君?もしかして起こしに来てくれたの…?」
「う、うん。迷惑だった…?」
「ううん、全然!私朝弱いから、むしろすっごい嬉しいよ」
そう言った途端私を見上げてぱあっと瞳を輝かせたヒトモシくん。その姿があまりに可愛くて思わず抱きしめると、ヒトモシ君は恥ずかしそうにしながらも抱き締め返してくれた。
「あ、あの…、ナマエさん、そろそろ」
「…あ、あぁごめんね!苦しかったよね!」
…確か昨日、ヒトモシ君は新しく私たちの家族になった。その時は殆どエンテイさんが私達に事の経緯を説明してトントン拍子で話を進めていったけど、そこにヒトモシ君の意思はあったのだろうか。いきなり知らない大人に拾われて、あれよあれよとこんな所にいきなり住まわされる事になるなんて、ヒトモシくんからすれば他に選択肢が無いとはいえ振り回すのも大概にしろと思うだろう。
だが、その事についてヒトモシくんに聞いてみた所、この屋敷に向かっている道中にエンテイさんは全てヒトモシ君に了承を得ていたらしかった。成程、昨日ヒトモシ君と暮らす事が決まった時、すぐに擬人化して自己紹介し始めた為、やけに物分りの良い子だなと思ったけれど、あれはもう既に全部知っていたからだったんだ。それなら合点がいく。
「…改めて僕、ヒトモシです。…捨てられた事、まだ受け止めきれてない…けど、僕ね、ナマエさんとスイクンさんとエンテイさん達に会えて良かったって、思ってる…!これから、よろしくお願いします!」
本当になんて礼儀正しくていい子なんだろうかこの子は。昨日スイクンさんも言っていたけれど、本当にこんないい子が捨てられるなんて意味がわからない。元のトレーナーは一体何考えてるんだ。
「…じゃあ、私も自己紹介。私、ナマエって言うの。訳あってスイクンさんに保護されて、一緒に暮らしてます。よろしくね、ヒトモシくん」
「保護…?もしかしてナマエさんも、捨てられた…?」
「ううん、そうじゃないんだと…思う。話したら長くなるんだけどね、私…」
そう言おうとした途端、広間の方から「朝ご飯出来たで〜!」と、スイクンさんの声がこちらまで届いてきたので、私とヒトモシくんは顔を見合せて笑いあって、2人でスイクンさんとエンテイさんのいる広間まで向かう事にした。話しそびれてしまった私の事については、食事が終わった後にまた話そう。
「行こうか、ヒトモシくん」
「は、はい!行こう。ナマエさん」
2人で手を繋ぎ合いながら、私の部屋から広間へと繋がっている長い長い廊下を歩く。壁に掛かっている時計をちらりと見てみたら、まだ早朝の5時45分だった。どうりでまだ肌寒い訳だ。この屋敷に来てからはスイクンさんの優しさに甘えて6時半すぎに起きる事が多かった為、正直この時間帯はこんなに寒いだなんて知りもしなかった。…どうしよう、1度部屋に戻って昨日買ってもらった上着を羽織ってくるべきか。でもヒトモシくんもいるし…
そんなふうに悩みながら歩いていると、ヒトモシくんが私の顔を心配そうに覗き込んできた。
「ナマエさん、寒いの…?」
「う、うん。少しだけ…」
「そっか…じゃあ、こうしたらいいよ」
そう言ってヒトモシ君は原型の姿に戻ると、頭に灯している青い炎を揺らして、私の腕の中に収まった。恐る恐る腕の中のヒトモシくんに触れてみると、ほんのり暖かい。頭に火が灯っている為服が燃えてしまうんじゃないかとヒヤヒヤしたが、どうやら頭の上のそれは本物の火では無いみたいだ。詳しくはあまり分からないけれど。
「わあ…すっごいあったかいよ!ヒトモシくんありがとう!」
そう言いながら腕の中で嬉しそうにゆらゆら揺れているヒトモシくんをぎゅっと抱き締めて、私はスイクンさんの美味しい朝ごはんを思い浮かべながら広間へと急ぐ。そうしてやっと着いた広間の重い扉をゆっくり開けると、そこには既にエンテイさんとスイクンさん…そして、少し前にスイクンさんに見せてもらった写真にいた、金色の髪をした彼が居た。
「ナマエおはようさん。今日はやけに早いなあ。さ、ここ座りや」
「は、はい…失礼します。えっとスイクンさん、あちらの方はもしかして…」
目線だけを金髪の彼に移しながらスイクンさんに聞いてみると、スイクンさんが答えてくれるより先に金髪の彼が此方に近付いてきた。思ったよりも高い身長と写真通りの整った顔に驚いて動けずにいると、ふわりと私の鼻をくどい香水の匂いが掠める。そのむせ返るような匂いにくらくらしながら何とか自分の状況を省みてみると、どうやら先程近付いてきた金髪のお兄さんに手を取られているらしかった。
「え、えぇ!?ちょっと、離してくださ…」
「ちょっとスイクン何この可愛い女の子!こんな可愛い子が居るなら言ってよー!俺すぐにでも帰ってきたのに!」
「…阿呆。あんたに言ったらすぐナマエの事襲いに来そうやもん。言わんで正解やったわ」
「えっと…」
エンテイさんとヒトモシくんに目線だけで助けを求めるも、エンテイさんは我関せずといった様子で此方には目もくれていないし、ヒトモシくんに至っては私の腕の中でいつの間にかすやすやと眠っていた。…起きてヒトモシくん!こっち見てくださいエンテイさん!助けて誰か!
「ねえねえ君、俺ライコウって言うんだ。スイクンとエンテイの仲間!」
「は、はい、存じております…」
「へえ、もしかしてスイクンに教わったのかい?なら話が早いや。それで君の名前は?」
「ナマエです…訳あってスイクンさんに拾われて、一緒に暮らさせて頂いてます」
「うっわスイクン羨ましい…女の子とひとつ屋根の下一緒とか…!俺は今日からまた暫くエンテイとかいうむさ苦しい野郎と2人旅なのに!ねえナマエちゃん、君さえもし良ければ一緒に旅しないかい?俺ナマエちゃんなら大歓迎…」
ライコウさんの止まらないマシンガントークに撃たれながらも何とか耐えていると、後ろからバン!!と何かが思いっきり叩かれた音が広間に響いた。びっくりして後ろを勢いよく振り向くと、そこには鬼の様な形相をしたスイクンさんがライコウさんを睨み付けているところだった。先程の大きな音は、多分スイクンさんがテーブルを叩いた音だろう。その音に驚いたのか、腕の中で眠っていたヒトモシくんがパチリと目を開ける。
「ちょっとちょっとスイクン、どしたのさそんな怒って…」
「うちの…子を…」
「へ?」
「うちの子を何口説いとんじゃこのクソボケライコウ!!朝飯も食わさんと今すぐここから追い出したろかこの誑し野郎!」
スイクンさんの怒声が屋敷中に響き渡り、ライコウさんの頭に勢い良く鉄槌が下された。言わずもがなその鉄槌はスイクンさんの拳である。ゴン!と拳骨をした時のお手本の様な音が聞こえてきたと同時に、ライコウさんが「あー!スイクン酷い!痛い!たんこぶ出来たらどうすんのさ!ダサくなっちゃうじゃん!」と騒ぎ始めた。片手でスイクンさんに拳骨された頭を必死に抑えながらももう片方の手は未だ私の腕を掴んで話さない所を見るに、本当に女性が大好きなんだろうなあこの人。ちゃっかりしている。
「朝とは思えない騒がしさだね……」とヒトモシくんが欠伸をしながら呟いた。それに同意を示す様に首を何度も縦に振ると、エンテイさんが「あの二人は犬猿の仲だからな」とお茶を啜りながら教えてくれた。このままだと2人共原型の姿に戻ってドンパチ始めそうな感じだったので私はハラハラしていたが、この2人と昔からの付き合いであるエンテイさんが止めないのだから、まあ2人の喧嘩は日常茶飯事みたいなものなんだろう。
「…それよりも人間よ」
「はい?どうしたんですかエンテイさん」
「昨日は襲おうとして悪かったな。視界の悪い道を単独で進んでいたものだから、此方も警戒しすぎていた様だ。いざ落ち着いて考えてみると、お前のような小娘に我らを飼い慣らす度胸なんぞ毛程も無いだろうに」
突然の謝罪に面食らってしまったが、所々此方を見下しているかのような言い方で少しだけムッとする。だが無防備に暗闇の中1人迷子になった私の方にも非があるので、まあ目を瞑っておくことにした。それに彼は捨てられていたヒトモシくんを救い、居場所まで与えてくれた優しい人なのだ。少し警戒心が強すぎるだけで、懐に入れた者には惜しみなく優しさを注ぐその姿は、この世界に来たばかりの頃の私を初めて受け入れてくれたスイクンさんと似たようなものを感じる。この人もまた、素直じゃないだけの優しい人なのだろう。
「…それから、」
「それから…?何ですか?」
「其奴を…ヒトモシを、よろしく頼むぞ」
我が子を見るような目でヒトモシ君を見つめながら、エンテイさんは声を落としてそう言った。私はその言葉に「はい!」と後ろの2人の喧嘩に負けないくらいの元気な声で返事をしてヒトモシくんを思いっきり抱きしめる。力を込めすぎたのか、「うーん…」と腕の中でヒトモシくんが唸ったので少しだけ力を緩めると、ヒトモシくんもまた私の腕に身体を擦り寄せてくれた。
「ほらスイクン、ライコウ。朝飯が冷めるぞ」
「お腹すいたね、ナマエさん」
「そうだねえヒトモシくん」
家族が増えてより一層賑やかになった屋敷を嬉しく思いながら、私は目玉焼きの黄身を箸で割り、朝ご飯を味わうのだった。
「ん…?だれ?」
私を起こしたのは、聞き慣れた目覚まし時計の音でも、スイクンさんの穏やかな声でもなく、聞き慣れない小さな声だった。…しかも子供の。その声に急かされてむくりと布団から起き上がってみると、そこには可愛らしい白髪の美少年が1人。
「おはよう…!ナマエさん…」
「ひ、ヒトモシ君?もしかして起こしに来てくれたの…?」
「う、うん。迷惑だった…?」
「ううん、全然!私朝弱いから、むしろすっごい嬉しいよ」
そう言った途端私を見上げてぱあっと瞳を輝かせたヒトモシくん。その姿があまりに可愛くて思わず抱きしめると、ヒトモシ君は恥ずかしそうにしながらも抱き締め返してくれた。
「あ、あの…、ナマエさん、そろそろ」
「…あ、あぁごめんね!苦しかったよね!」
…確か昨日、ヒトモシ君は新しく私たちの家族になった。その時は殆どエンテイさんが私達に事の経緯を説明してトントン拍子で話を進めていったけど、そこにヒトモシ君の意思はあったのだろうか。いきなり知らない大人に拾われて、あれよあれよとこんな所にいきなり住まわされる事になるなんて、ヒトモシくんからすれば他に選択肢が無いとはいえ振り回すのも大概にしろと思うだろう。
だが、その事についてヒトモシくんに聞いてみた所、この屋敷に向かっている道中にエンテイさんは全てヒトモシ君に了承を得ていたらしかった。成程、昨日ヒトモシ君と暮らす事が決まった時、すぐに擬人化して自己紹介し始めた為、やけに物分りの良い子だなと思ったけれど、あれはもう既に全部知っていたからだったんだ。それなら合点がいく。
「…改めて僕、ヒトモシです。…捨てられた事、まだ受け止めきれてない…けど、僕ね、ナマエさんとスイクンさんとエンテイさん達に会えて良かったって、思ってる…!これから、よろしくお願いします!」
本当になんて礼儀正しくていい子なんだろうかこの子は。昨日スイクンさんも言っていたけれど、本当にこんないい子が捨てられるなんて意味がわからない。元のトレーナーは一体何考えてるんだ。
「…じゃあ、私も自己紹介。私、ナマエって言うの。訳あってスイクンさんに保護されて、一緒に暮らしてます。よろしくね、ヒトモシくん」
「保護…?もしかしてナマエさんも、捨てられた…?」
「ううん、そうじゃないんだと…思う。話したら長くなるんだけどね、私…」
そう言おうとした途端、広間の方から「朝ご飯出来たで〜!」と、スイクンさんの声がこちらまで届いてきたので、私とヒトモシくんは顔を見合せて笑いあって、2人でスイクンさんとエンテイさんのいる広間まで向かう事にした。話しそびれてしまった私の事については、食事が終わった後にまた話そう。
「行こうか、ヒトモシくん」
「は、はい!行こう。ナマエさん」
2人で手を繋ぎ合いながら、私の部屋から広間へと繋がっている長い長い廊下を歩く。壁に掛かっている時計をちらりと見てみたら、まだ早朝の5時45分だった。どうりでまだ肌寒い訳だ。この屋敷に来てからはスイクンさんの優しさに甘えて6時半すぎに起きる事が多かった為、正直この時間帯はこんなに寒いだなんて知りもしなかった。…どうしよう、1度部屋に戻って昨日買ってもらった上着を羽織ってくるべきか。でもヒトモシくんもいるし…
そんなふうに悩みながら歩いていると、ヒトモシくんが私の顔を心配そうに覗き込んできた。
「ナマエさん、寒いの…?」
「う、うん。少しだけ…」
「そっか…じゃあ、こうしたらいいよ」
そう言ってヒトモシ君は原型の姿に戻ると、頭に灯している青い炎を揺らして、私の腕の中に収まった。恐る恐る腕の中のヒトモシくんに触れてみると、ほんのり暖かい。頭に火が灯っている為服が燃えてしまうんじゃないかとヒヤヒヤしたが、どうやら頭の上のそれは本物の火では無いみたいだ。詳しくはあまり分からないけれど。
「わあ…すっごいあったかいよ!ヒトモシくんありがとう!」
そう言いながら腕の中で嬉しそうにゆらゆら揺れているヒトモシくんをぎゅっと抱き締めて、私はスイクンさんの美味しい朝ごはんを思い浮かべながら広間へと急ぐ。そうしてやっと着いた広間の重い扉をゆっくり開けると、そこには既にエンテイさんとスイクンさん…そして、少し前にスイクンさんに見せてもらった写真にいた、金色の髪をした彼が居た。
「ナマエおはようさん。今日はやけに早いなあ。さ、ここ座りや」
「は、はい…失礼します。えっとスイクンさん、あちらの方はもしかして…」
目線だけを金髪の彼に移しながらスイクンさんに聞いてみると、スイクンさんが答えてくれるより先に金髪の彼が此方に近付いてきた。思ったよりも高い身長と写真通りの整った顔に驚いて動けずにいると、ふわりと私の鼻をくどい香水の匂いが掠める。そのむせ返るような匂いにくらくらしながら何とか自分の状況を省みてみると、どうやら先程近付いてきた金髪のお兄さんに手を取られているらしかった。
「え、えぇ!?ちょっと、離してくださ…」
「ちょっとスイクン何この可愛い女の子!こんな可愛い子が居るなら言ってよー!俺すぐにでも帰ってきたのに!」
「…阿呆。あんたに言ったらすぐナマエの事襲いに来そうやもん。言わんで正解やったわ」
「えっと…」
エンテイさんとヒトモシくんに目線だけで助けを求めるも、エンテイさんは我関せずといった様子で此方には目もくれていないし、ヒトモシくんに至っては私の腕の中でいつの間にかすやすやと眠っていた。…起きてヒトモシくん!こっち見てくださいエンテイさん!助けて誰か!
「ねえねえ君、俺ライコウって言うんだ。スイクンとエンテイの仲間!」
「は、はい、存じております…」
「へえ、もしかしてスイクンに教わったのかい?なら話が早いや。それで君の名前は?」
「ナマエです…訳あってスイクンさんに拾われて、一緒に暮らさせて頂いてます」
「うっわスイクン羨ましい…女の子とひとつ屋根の下一緒とか…!俺は今日からまた暫くエンテイとかいうむさ苦しい野郎と2人旅なのに!ねえナマエちゃん、君さえもし良ければ一緒に旅しないかい?俺ナマエちゃんなら大歓迎…」
ライコウさんの止まらないマシンガントークに撃たれながらも何とか耐えていると、後ろからバン!!と何かが思いっきり叩かれた音が広間に響いた。びっくりして後ろを勢いよく振り向くと、そこには鬼の様な形相をしたスイクンさんがライコウさんを睨み付けているところだった。先程の大きな音は、多分スイクンさんがテーブルを叩いた音だろう。その音に驚いたのか、腕の中で眠っていたヒトモシくんがパチリと目を開ける。
「ちょっとちょっとスイクン、どしたのさそんな怒って…」
「うちの…子を…」
「へ?」
「うちの子を何口説いとんじゃこのクソボケライコウ!!朝飯も食わさんと今すぐここから追い出したろかこの誑し野郎!」
スイクンさんの怒声が屋敷中に響き渡り、ライコウさんの頭に勢い良く鉄槌が下された。言わずもがなその鉄槌はスイクンさんの拳である。ゴン!と拳骨をした時のお手本の様な音が聞こえてきたと同時に、ライコウさんが「あー!スイクン酷い!痛い!たんこぶ出来たらどうすんのさ!ダサくなっちゃうじゃん!」と騒ぎ始めた。片手でスイクンさんに拳骨された頭を必死に抑えながらももう片方の手は未だ私の腕を掴んで話さない所を見るに、本当に女性が大好きなんだろうなあこの人。ちゃっかりしている。
「朝とは思えない騒がしさだね……」とヒトモシくんが欠伸をしながら呟いた。それに同意を示す様に首を何度も縦に振ると、エンテイさんが「あの二人は犬猿の仲だからな」とお茶を啜りながら教えてくれた。このままだと2人共原型の姿に戻ってドンパチ始めそうな感じだったので私はハラハラしていたが、この2人と昔からの付き合いであるエンテイさんが止めないのだから、まあ2人の喧嘩は日常茶飯事みたいなものなんだろう。
「…それよりも人間よ」
「はい?どうしたんですかエンテイさん」
「昨日は襲おうとして悪かったな。視界の悪い道を単独で進んでいたものだから、此方も警戒しすぎていた様だ。いざ落ち着いて考えてみると、お前のような小娘に我らを飼い慣らす度胸なんぞ毛程も無いだろうに」
突然の謝罪に面食らってしまったが、所々此方を見下しているかのような言い方で少しだけムッとする。だが無防備に暗闇の中1人迷子になった私の方にも非があるので、まあ目を瞑っておくことにした。それに彼は捨てられていたヒトモシくんを救い、居場所まで与えてくれた優しい人なのだ。少し警戒心が強すぎるだけで、懐に入れた者には惜しみなく優しさを注ぐその姿は、この世界に来たばかりの頃の私を初めて受け入れてくれたスイクンさんと似たようなものを感じる。この人もまた、素直じゃないだけの優しい人なのだろう。
「…それから、」
「それから…?何ですか?」
「其奴を…ヒトモシを、よろしく頼むぞ」
我が子を見るような目でヒトモシ君を見つめながら、エンテイさんは声を落としてそう言った。私はその言葉に「はい!」と後ろの2人の喧嘩に負けないくらいの元気な声で返事をしてヒトモシくんを思いっきり抱きしめる。力を込めすぎたのか、「うーん…」と腕の中でヒトモシくんが唸ったので少しだけ力を緩めると、ヒトモシくんもまた私の腕に身体を擦り寄せてくれた。
「ほらスイクン、ライコウ。朝飯が冷めるぞ」
「お腹すいたね、ナマエさん」
「そうだねえヒトモシくん」
家族が増えてより一層賑やかになった屋敷を嬉しく思いながら、私は目玉焼きの黄身を箸で割り、朝ご飯を味わうのだった。