Extraordinary!
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朝ご飯を食べ終えてスイクンさんと一緒にお皿洗いを終えた後、私はスイクンさんの用意してくれた自室の窓辺に腰掛けて、本棚に置いてあった本を適当に読んでいた。ちなみにこの部屋は元々エンテイさんの書斎だったらしいのだが、今はもう彼はこの屋敷に住んでいない為ちょうど良いからとスイクンさんは快くこの部屋を貸してくれた。なるほど、元々書斎だったからこんなに本が多いのか…エンテイさん、すっごく勤勉な方なんだろうな、きっと。
正直言って、本棚に置かれていた本はどれも凄く分厚くて、どの本に書かれている内容も今の私にはちっとも理解出来ないものばかりだった。今読んでいる本も読み始めて早1時間ほど経つのだが、ページは全くと言って良い程進んでいない。まあ流石に私のような年齢の子供が政治学の本なんて読むものではないか…それに私この世界の政治の仕組みとか全く知らないし、1ミリも理解出来ないのは仕方の無い話だ。ていうか何で数ある本の中でも一等難しそうなの選んでるんだろ私。元の世界では参考書や教科書すら学校以外では滅多に開かない様な子供だったのに。
細かくて難しい字とずっと睨めっこしていたせいか段々目が疲れてきたので、私は本を閉じて元あった場所に戻すと窓の外の庭に目をやった。広い屋敷とは対照的に庭はそれほど広くは無いが、スイクンさんが手塩にかけて育てている綺麗な花々が咲き誇っていて、何とも幻想的で桃源郷の様に美しい場所だ。きっと、美しい場所とは何かを問われた場合、私はこの庭を答えるだろう。
…だが、この庭には1つ不自然な事があった。私の祖父母も庭で植物を育てる様な人達だったのだが、その庭には花の蜜を狙う虫や、木の上に巣を作りに来る鳥などが季節問わずやって来ていた筈なのだ。…だが、この庭には鳥や虫(を模したポケモン)が1匹も居ない。こんなに美しい花が何本も咲いているのだから、蜂とか蝶々みたいなものが居ても何らおかしくない筈なのだが、この庭には虫どころかその気配すらない。スイクンさんがポケモンを撃退出来るスプレーの様な物でも庭に撒いているのだろうか。
「という訳で教えて下さいスイクンさん」
「ん〜…庭に野生のポケモンが入って来れへんというか、俺が入れんようにしとるというか…」
そんな風に妙に歯切れの悪い返答を私に返しながら、スイクンさんは言葉を続ける。
「…あのな、ナマエ。俺の種族である''スイクン''というポケモンはな、ミラーコートっていう技を覚えるねん」
「ミラーコート?」
「せや。まあ技の効果は一旦置いといて…まあ自分で言うのもアレやけど、俺って世間一般で言う''珍しいポケモン''やろ?せやからずっと人に狙われながらジョウト地方を駆け回っとったんやけど、そんなつまらん人生なんて御免やったから、適当に拠点決めて、その周りにミラーコートという名の結界もどきを貼っとるねん。だから、外からはこの屋敷自体が見えへんようになっとるんや」
「成程…!そういう事だったんですね」
ポケモンの技については全くと言って良い程知識のない私だが、スイクンさんのミラーコートという技の使い方が本来とは全く別の使い方だということは何となく理解出来た。だがまあポケモンが普通に擬人化出来てしまう世界だ。本来の用途以外で技を使う事もまあ普通なのだろう。と自分を無理矢理納得させながら、私は曖昧な笑みを浮かべてスイクンさんの言葉に頷いてみせた。日本という国の都会とも田舎とも言えない様な場所で気楽に生きていた私が何故か2次元にトリップしてしまっているのだから、この際もう何が起きても驚けないような気がする。スイクンさんの下で初めて目覚めた時から、私の中の恐怖心はバグってしまったのだろう。
「…あぁ、そういえばナマエ、あんたにずっと確かめたい事があったんやけど」
「はい、何ですか?」
そう聞いてみるとスイクンさんは不思議そうに首を傾げながら、「ナマエが屋敷の前に倒れとった時、この白い玉も傍に落ちとったんやけど、もしかしてナマエの持ち物ちゃうかな〜って」と言いながら、隣の部屋から例の玉を持ってきてくれた。その眩い光を放っている野球ボール程度のサイズをした白い玉を見た途端、私はハッとして思わず目を見開いてしまった。
「ナマエ、この玉について何か知らん?持ってるだけで妙に悪寒が走るから、あんま俺の趣味じゃないんやけど…」
「そ、それ、私がこの世界に来る直前に見つけて持っていた物です…!」
この世界に急にトリップした事の衝撃が大きすぎたせいで存在すら忘れていたが、間違いない。あの玉は私が閉じ込められていた時に倉庫の隅で見つけた不思議な玉だ。まさかあの玉も一緒にこの世界にやって来ていたなんて思いもしなかったが、まさか物まで次元を超えられるとは。もはや何でもありだなこの世界。
「さよか…じゃあ実質この玉、ナマエの唯一の持ち物って事になるんか?」
「そうなりますね…」
知らない世界に1人で迷い込んだのだから、唯一の持ち物ならせめて携帯か財布か身分証などが良かったのだが。何だ唯一の持ち物が不思議な白い玉って。冷静に考えてみて意味不明過ぎないか。多分これで喜ぶのは水晶玉を使った占いを生業にしている占い師だけだろう。一般人がこんな玉1つ持って見知らぬ土地で生きていくなんて不可能だ。私がどうやってトリップして来たのかは知らないが、もしトリップさせた犯人がいるのならば、そいつはかなり鬼畜な奴に違いない。多分人間一人の命なんてどうでもいいと思っている様な奴なのだろう。せめて財布か身分証くらいは持たせておいてほしかった。
「それにしてもこの玉、なーんか見てるだけで嫌な感じするなあ…まあええか。人の持ち物にケチ付けたらアカンよな」
「わ、私の持ち物というか、拾っただけと言いますか…」
もごもごとそう弁明してみたはいいが、それでもこの玉について知っている人が今ここに私以外居ないのだから、私がこの玉を管理する他ない。まあ私が暗い倉庫の中でこの光に助けられたのは事実なので、取り敢えず数日ぶりの再会を喜んでおいた。
正直言って、本棚に置かれていた本はどれも凄く分厚くて、どの本に書かれている内容も今の私にはちっとも理解出来ないものばかりだった。今読んでいる本も読み始めて早1時間ほど経つのだが、ページは全くと言って良い程進んでいない。まあ流石に私のような年齢の子供が政治学の本なんて読むものではないか…それに私この世界の政治の仕組みとか全く知らないし、1ミリも理解出来ないのは仕方の無い話だ。ていうか何で数ある本の中でも一等難しそうなの選んでるんだろ私。元の世界では参考書や教科書すら学校以外では滅多に開かない様な子供だったのに。
細かくて難しい字とずっと睨めっこしていたせいか段々目が疲れてきたので、私は本を閉じて元あった場所に戻すと窓の外の庭に目をやった。広い屋敷とは対照的に庭はそれほど広くは無いが、スイクンさんが手塩にかけて育てている綺麗な花々が咲き誇っていて、何とも幻想的で桃源郷の様に美しい場所だ。きっと、美しい場所とは何かを問われた場合、私はこの庭を答えるだろう。
…だが、この庭には1つ不自然な事があった。私の祖父母も庭で植物を育てる様な人達だったのだが、その庭には花の蜜を狙う虫や、木の上に巣を作りに来る鳥などが季節問わずやって来ていた筈なのだ。…だが、この庭には鳥や虫(を模したポケモン)が1匹も居ない。こんなに美しい花が何本も咲いているのだから、蜂とか蝶々みたいなものが居ても何らおかしくない筈なのだが、この庭には虫どころかその気配すらない。スイクンさんがポケモンを撃退出来るスプレーの様な物でも庭に撒いているのだろうか。
「という訳で教えて下さいスイクンさん」
「ん〜…庭に野生のポケモンが入って来れへんというか、俺が入れんようにしとるというか…」
そんな風に妙に歯切れの悪い返答を私に返しながら、スイクンさんは言葉を続ける。
「…あのな、ナマエ。俺の種族である''スイクン''というポケモンはな、ミラーコートっていう技を覚えるねん」
「ミラーコート?」
「せや。まあ技の効果は一旦置いといて…まあ自分で言うのもアレやけど、俺って世間一般で言う''珍しいポケモン''やろ?せやからずっと人に狙われながらジョウト地方を駆け回っとったんやけど、そんなつまらん人生なんて御免やったから、適当に拠点決めて、その周りにミラーコートという名の結界もどきを貼っとるねん。だから、外からはこの屋敷自体が見えへんようになっとるんや」
「成程…!そういう事だったんですね」
ポケモンの技については全くと言って良い程知識のない私だが、スイクンさんのミラーコートという技の使い方が本来とは全く別の使い方だということは何となく理解出来た。だがまあポケモンが普通に擬人化出来てしまう世界だ。本来の用途以外で技を使う事もまあ普通なのだろう。と自分を無理矢理納得させながら、私は曖昧な笑みを浮かべてスイクンさんの言葉に頷いてみせた。日本という国の都会とも田舎とも言えない様な場所で気楽に生きていた私が何故か2次元にトリップしてしまっているのだから、この際もう何が起きても驚けないような気がする。スイクンさんの下で初めて目覚めた時から、私の中の恐怖心はバグってしまったのだろう。
「…あぁ、そういえばナマエ、あんたにずっと確かめたい事があったんやけど」
「はい、何ですか?」
そう聞いてみるとスイクンさんは不思議そうに首を傾げながら、「ナマエが屋敷の前に倒れとった時、この白い玉も傍に落ちとったんやけど、もしかしてナマエの持ち物ちゃうかな〜って」と言いながら、隣の部屋から例の玉を持ってきてくれた。その眩い光を放っている野球ボール程度のサイズをした白い玉を見た途端、私はハッとして思わず目を見開いてしまった。
「ナマエ、この玉について何か知らん?持ってるだけで妙に悪寒が走るから、あんま俺の趣味じゃないんやけど…」
「そ、それ、私がこの世界に来る直前に見つけて持っていた物です…!」
この世界に急にトリップした事の衝撃が大きすぎたせいで存在すら忘れていたが、間違いない。あの玉は私が閉じ込められていた時に倉庫の隅で見つけた不思議な玉だ。まさかあの玉も一緒にこの世界にやって来ていたなんて思いもしなかったが、まさか物まで次元を超えられるとは。もはや何でもありだなこの世界。
「さよか…じゃあ実質この玉、ナマエの唯一の持ち物って事になるんか?」
「そうなりますね…」
知らない世界に1人で迷い込んだのだから、唯一の持ち物ならせめて携帯か財布か身分証などが良かったのだが。何だ唯一の持ち物が不思議な白い玉って。冷静に考えてみて意味不明過ぎないか。多分これで喜ぶのは水晶玉を使った占いを生業にしている占い師だけだろう。一般人がこんな玉1つ持って見知らぬ土地で生きていくなんて不可能だ。私がどうやってトリップして来たのかは知らないが、もしトリップさせた犯人がいるのならば、そいつはかなり鬼畜な奴に違いない。多分人間一人の命なんてどうでもいいと思っている様な奴なのだろう。せめて財布か身分証くらいは持たせておいてほしかった。
「それにしてもこの玉、なーんか見てるだけで嫌な感じするなあ…まあええか。人の持ち物にケチ付けたらアカンよな」
「わ、私の持ち物というか、拾っただけと言いますか…」
もごもごとそう弁明してみたはいいが、それでもこの玉について知っている人が今ここに私以外居ないのだから、私がこの玉を管理する他ない。まあ私が暗い倉庫の中でこの光に助けられたのは事実なので、取り敢えず数日ぶりの再会を喜んでおいた。