「ナマエ、ナマエ、ナマエ。どこだ、どこにいるんだ」

「落ち着いて。ここにいるよ、レシラム」

過呼吸を起こしながら半狂乱になって私を探すレシラムの背中をそっと抱き締めて、私は優しく耳元でそう囁いた。落ち着かせる為にソファーに座らせて綺麗な白い髪を撫で付けてやると、レシラムは漸く私が隣にいる事に気が付いたのか、目に涙を溜めながらもゆっくりと私に擦り寄ってきた。

「ごめんね、ちょっと部屋で昼寝してたんだ」

「頼む、私から離れないでくれ。ボールに閉じ込めないでくれ…お前の姿が見えないだけで、私は」

そう言ってまた過呼吸を起こしそうになるレシラムに水を1杯飲ませると、私は彼の手を引いてリビングから連れ出していつも2人で眠っているベッドルームの中へ入らせる。急な事に少々混乱しているのか、レシラムは綺麗な青色の瞳から涙を流しながらキョロキョロとベッドルームを見渡していた。

そんな彼の頭を先程と同じ様に一撫でして、私は彼を優しくベッドの上へ押し倒す。先程まで私が此処で眠っていたせいか、まだ布団には人肌特有の温もりが残っていた。

レシラムがここまで愛に固執する理由を私は全く知らない。ただ単に度の過ぎた寂しがり屋なのか、それとも伝説の生き物として長い時を生きてきた彼が愛を他人から受け取った事が無いからか。

どちらにせよ今の彼ははっきり言って異常だ。自分を守ってくれる存在に依存して、1人になった途端迷子の子供のように涙を流す。これが本当の子供ならまだしも、彼は立派な大の大人だ。しかも明らかにその辺の人間より長い年月を生きた存在の癖に、精神年齢と実年齢が全く比例していない。

「そんなに不安なら、沢山泣いて沢山眠りなさい。私も一緒にここに居てあげるから」

「本当にここに居てくれるのか。私が起きるまで、ずっと」

「勿論。いつまでも待つよ」

寝てる時だけは、唯一貴方が泣いたり不安になったりしない時だから。少しづつ不安な気持ちを消していこうね。私がいつまでも一緒にいてあげるから。