ラティオス
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『あなたのこと、いまいち信用出来ない』
歴代の友人から、幾度となく吐かれ続けてきたその言葉。最初はこの言葉の意味が微塵も分からなかったけれど、今になって徐々に分かってきた気がする。彼らが私を避け始めたのは、全部私の性格のせいであったと。
猫を被って生きていくのは、言わば処世術の様なものだった。
他人によって態度を変えて、毎度違う仮面を被って生きる。本来の自分をコンクリートで固めて、嘘で塗り替える。たったそれだけ。それだけの事を十数年繰り返していただけで、このザマ。友達は皆私から離れていった。
それは全て、人に己の良い印象を植え付けたかった無駄な自己顕示欲のせいだ。ただの見栄っ張りで、ただの自己満足。いわば自慰。
それでも尚、私は数年経っても、トレーナーになっても、この癖だけは直せなかった。
*
「メリークリスマス。ラティオス」
清し、この夜。食卓に彼の喜びそうなケーキやチキンやらを並べ、私はにっこりといつもの如く笑顔を貼り付けて彼に笑いかける。仮面の裏を暴かれない様に、あくまでも自然な雰囲気を装って。
この性格を直したくない訳では決して無い。逆に何度直したいと思った事だろうか。しかし、簡単に直せれば苦労はしない。花がしおれたからとりあえず水と肥料をやって、はいこれで完璧に花の状態が戻りました。とはならないだろう。それと一緒だ。
猫を被る、という行為はもう既に私に染み付いてしまっている。白いシャツにコーヒーを零した時の染みの様に。私という繊維にこびりついたこの染みは、私が死ぬまで取れる事は決して無いのだ。ラティオスの様に気心知れた仲の相手でも、決して取れない強固な染みとなって。
「聖なる夜だね」
「ええ、そうね」
なんて2人して取り留めのない会話をしながら、切り分けたクリスマスケーキを貪る。白いホイップクリームを満遍なく塗られて上にフルーツをぎっしりと乗せられたそのケーキは、まるで自分を嘘で塗り固めて笑顔の仮面で顔を覆った私の様に見えた。
こんな日くらいは彼に素を見せても良いのでは、と思ってはみたが、いざラティオスを目の前にしてみても、やはり長年の癖という物は中々抜けないもので。
仮面が顔から離れなくなった、不器用で無様な女。猫を被り続けた人間の成れの果てとなって戻れなくなった私は、なんと滑稽なのだろうか。
「ラティオス」
「どうしたの、ナマエ」
「チキンが冷めちゃうよ、早く食べなよ」と言って、彼は屈託のない純粋な笑顔を此方に向けた。私が一度も他人に向けたことの無いその笑顔は、私の様な人間には酷く眩しく見えてしまった。
私もいつか君に、そんな笑顔を向ける事が出来るだろうか。
歴代の友人から、幾度となく吐かれ続けてきたその言葉。最初はこの言葉の意味が微塵も分からなかったけれど、今になって徐々に分かってきた気がする。彼らが私を避け始めたのは、全部私の性格のせいであったと。
猫を被って生きていくのは、言わば処世術の様なものだった。
他人によって態度を変えて、毎度違う仮面を被って生きる。本来の自分をコンクリートで固めて、嘘で塗り替える。たったそれだけ。それだけの事を十数年繰り返していただけで、このザマ。友達は皆私から離れていった。
それは全て、人に己の良い印象を植え付けたかった無駄な自己顕示欲のせいだ。ただの見栄っ張りで、ただの自己満足。いわば自慰。
それでも尚、私は数年経っても、トレーナーになっても、この癖だけは直せなかった。
*
「メリークリスマス。ラティオス」
清し、この夜。食卓に彼の喜びそうなケーキやチキンやらを並べ、私はにっこりといつもの如く笑顔を貼り付けて彼に笑いかける。仮面の裏を暴かれない様に、あくまでも自然な雰囲気を装って。
この性格を直したくない訳では決して無い。逆に何度直したいと思った事だろうか。しかし、簡単に直せれば苦労はしない。花がしおれたからとりあえず水と肥料をやって、はいこれで完璧に花の状態が戻りました。とはならないだろう。それと一緒だ。
猫を被る、という行為はもう既に私に染み付いてしまっている。白いシャツにコーヒーを零した時の染みの様に。私という繊維にこびりついたこの染みは、私が死ぬまで取れる事は決して無いのだ。ラティオスの様に気心知れた仲の相手でも、決して取れない強固な染みとなって。
「聖なる夜だね」
「ええ、そうね」
なんて2人して取り留めのない会話をしながら、切り分けたクリスマスケーキを貪る。白いホイップクリームを満遍なく塗られて上にフルーツをぎっしりと乗せられたそのケーキは、まるで自分を嘘で塗り固めて笑顔の仮面で顔を覆った私の様に見えた。
こんな日くらいは彼に素を見せても良いのでは、と思ってはみたが、いざラティオスを目の前にしてみても、やはり長年の癖という物は中々抜けないもので。
仮面が顔から離れなくなった、不器用で無様な女。猫を被り続けた人間の成れの果てとなって戻れなくなった私は、なんと滑稽なのだろうか。
「ラティオス」
「どうしたの、ナマエ」
「チキンが冷めちゃうよ、早く食べなよ」と言って、彼は屈託のない純粋な笑顔を此方に向けた。私が一度も他人に向けたことの無いその笑顔は、私の様な人間には酷く眩しく見えてしまった。
私もいつか君に、そんな笑顔を向ける事が出来るだろうか。
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